私のこどもの頃は、アメリカのSF映画などについては、大伴昌司氏が編集した少年誌の特集や映画雑誌の一コマの写真、数行の記事から想像し、憧れることがすべてでした。
当時はインターネットはもちろんビデオもない時代で、ハリウッドの有名な一般作品でも名画座での再上映など以外には、なかなか実際に観ることはできませんでした。
ましてや、SF・ファンタジー映画などは子供だましと一段低く見られていたのですから、ほとんどまっとうな評価の俎上にも上りません。つまり、見るどころか、まったく情報が入らず、作品自体を知らないことが普通でした。
そんなわずかな情報のなかで、いつか見たいと思っていた映画の一つにジョージ・パルが製作した「謎の大陸 アトランティス」という作品があります。
ジョージ・パルはハリウッドの映画製作者で、「地球最後の日」、「宇宙戦争(これは大傑作です。)」、「黒い絨毯」、「タイムマシン」、「ラオ博士の7つの顔」などを世に送り出し、当時はSF特撮映画の第一人者と言われていました。
もちろん、これらの作品についても前述の雑誌などで知識として知っていただけで、実際に観たのはVHSが登場した後なのです。
そのジョージ・パルが1961年に製作したのが、「謎の大陸 アトランティス」です。
この作品は、特撮シーンを集めたVHSではそのラストの大陸が沈む場面がよく取り上げられていたのですが、残念ながら、本編自体はわが国ではVHSやLDにならずじまいで、いまなおDVDも未発売の状態です。
パルの作品の中でも忘れ去られた作品だったのです。しかも、私自身もすっかりこの作品のことを忘れていました(笑)のですが、先日、偶然、映画パンフレットのオークションでこのタイトルを見つけ、懐かしさから何気なくアマゾンで検索して見ると、国内業者がなんとアメリカ版DVDを発売しているのではないですか。本当に便利な時代になったとつくづく思いますネ。有難いことです。
余談ですが、今現在は海外に注文しても、先日の台風災害のため国内の税関業務が遅延しており、商品到着のめどが立たない状況になっています。実は、やっと見つけてゲットしたあるモノがアメリカの物流センターで足止めになっており、非常にヤキモキしています。便利になったとはいえ、まだまだ自然の力の前では脆弱なものです。
もちろん、この商品は国内発送ですから早速手元に商品が届いたのですが、当然ながら字幕が無い海外版DVDのため、ストーリーの細部はよくわかりません。それでもそう気にならなかったのは、絵だけで大体内容はわかりますし、なにしろ注文後に海外DVDのバージョン違いを懸念していた経緯もあって、映像が写っていれば御の字です。我が家のデッキで無事、見事に再生できました、ホッ(笑)。
なお、内容について少々意外だったのが、アトランティスが存在していた時代のお話という設定です。なにしろ大陸(島のような感じですが・・)が沈没後、奴隷だった黒人はアフリカに、白人はヨーロッパに住むようになったという解説がつくのですから、一体いつの時代かよくわかりません。アトランティスがオリンポスという設定なのかな?
ストーリーも、大西洋をいかだで漂流していたアトランティスの王女が、助けられた亀じゃなくて漁師の若者を誘惑して故国に帰るのですが、王女を助けた若者は悪宰相の陰謀によって奴隷に落とされます。その後、若者のある行動により大陸が沈むことになってしまうのですが、滅亡する多くのアトランティス人の中で、事起こしの王女一人だけが脱出してハッピーエンドになるのはいかがなものか?などと悩んでしまいました。なにしろ、大作「クオ・バディス」のフィルムを流用しているので、群衆のモブシーンはやけに迫力があります。
しかし、この映画の見せ場は、なんといってもパルご自慢の特撮シーンなのです。今回初めて見ましたが、魚型のアトランティスの潜水艇のデザインは、レトロでなかなか味があります。唐突に登場するギリシャ神話の青塗りの海神、ドクターモローの様な人間を獣人化する科学力、大地を滅ぼす熱光線の最終兵器などは・・・・それなりです(笑)。
そして目玉であるラストの大陸の沈没シーンも、当時としては大掛かりな特撮セットだったのでしょうねえ。ただ、今の目で見ると、大粒の波や模型の破片がスローモーションの中で転覆して沈んでいきました。・・・ご愁傷さまでした。我が国でのDVD化は”SF傑作映画シリーズ”以外では無理でしょうねえ(笑)。・・・もともと未見で懐かしさというバイアスもそれほどかかっていなかった私としては、今回、”見た”ことで十分満足しました。
最後に、繰り返しになりますが、自宅に居ながらにして海外のDVDが日本語で注文できる、本当に便利な世の中になりました。
あとは、自動翻訳が進歩すればいいですねえ。期待して待っています(笑)。
余談ですが、パルの作品「ラオ博士と7つの顔」はVHSのみであり、まだDVD化されていません。これも一日も早い製品化を待っています。
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