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2018年6月28日 (木)

空想映画地図

 欧米には面白いことを考える人がいます。「空想映画地図」という書籍が翻訳・販売されています。以前「映画の間取り」という本に感心したことがありますが、この本は、家屋ではなく映画の舞台となった場所を地図にして、ガイドしようという内容です。しかも、実際の名所にとどまらず、SF映画などの空想の場所まで網羅しているのですから、大変興味深いものです。
Photo  本書に選ばれた35作品は、ほとんど私の好みと一致しているのですから、好感が持てます(笑)。
 サイレントの「メトロポリス」から元祖「キングコング」をはじめ、「エイリアン」、「ターミネーター2」、「スターウォーズ」3作品、「ロード・オブ・ザ・リング3部作」などのSF/ファンタジー映画、またアクションものでは「インディ・ジョーンズ」3作品、さらに「ジョーズ」や西部劇「続夕陽のガンマン」、スリラー物では「羊たちの沈黙」、最近の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」まであります。
 内容は、一作品ごとに映画の舞台となった土地(場所)をルート順に描いたイラストの地図を示すとともに、映画の解説を付けています。
 しかも、このイラストの地図以上に、解説の文章がなかなかユニークで、映画と言う建築物をデザインや構造から分析した様な細かな視点が実に新鮮です。
 例えば、「ジョーズ」の肝は、コントラスト(対比)と喝破します。都会出の保安官、上流階級の海洋学者、労働階級の漁師の3者の対比から、冒頭カニを食べていた女性(気が付かなかった!!)がジョーズに食われて浜で蟹に食われているとか、なかなかユニークです。
 こんな調子で、それぞれの作品を分解、独自の虚構の”目的地(地図)”を造り上げています。結構、楽しめますゾ。
 ただ、どうにも腑に落ちなかかったのが、「プリンセス・ブライド・ストーリー」を前述の作品群と横並びで掲載していることです。
 この映画はそんなに傑作ですか?実は、以前、DVDまで購入して観たのですが、祖父(ピーター・フォーク)が孫に読み聞かせるお伽噺という体裁をとっており、現代と中世を行き来する展開やあまりにリアリティのないセットなどに馴染めず匙を投げたか経験がありました。
 今回、本書の解説を読んでも不可解でしたので、再度DVDで見直しましたが、やっぱりよくわかりません。どなたか、この作品の持つ価値を是非、お教えください。
 いずれにしても、なかなか面白かった本でした。未見の方は、是非、一度手に取ってください。 

2018年6月25日 (月)

2001年宇宙の旅(ブルーレイ版)

 予想したとおり、ブルーレイは、SF大作と相性がよろしいようです。本日、映画史でも不朽の名作といわれる1968年製作の「2001年宇宙の旅」のブルーレイを鑑賞しました。
 今回視聴したブルーレイは、スチールブック版でして、ケースデザインが、HALの赤いカメラ眼を描いたものです。このセンスだけで感動します。心なしかが、ディスクの映像までが陰影深いものに思われます(笑)。
_new  
 さて、映像的には、まず前半の人類の夜明け前の猿人たちの風景に圧倒されます。荒涼とした背景のスクリーンと猿人が棲む岩や石の精密なセットが完全に融合したジオラマの様な画像に見とれます。
 
 そして、宇宙に浮かぶ宇宙ステーション(建設途上の様な姿がいい)や表面が凹凸の宇宙船(当時の模型は、丸みのあるロケット型仕様でした)も画期的でした。
 ただし、当時は、それ以上に驚いたのは宇宙が黒いということです。なにしろ、東宝映画では、宇宙は青かったのです(笑)。
 ちなみに、こうした映像表現は、1977年」に公開された「スターウォーズ」で、コンピュータ制御でやっと一般化されたのですが、それまでは、撮影の原理は判っていても、あまりに手間と金がかかるので、
誰も真似できなかったという手法なのです。
 
それにしても、つくづく1968年公開の作品とはおもえませんね。もっとも、時代に早すぎたのか、
世界的に不入りでまっとうな評価がされるのは、随分後年のことだったと記憶しています。
 なにしろ、当時はストーリーへの理解が全く追いついていませんでしたから、無理もありません。

 そうした当時の思いや記憶を自宅の居間でじっくり再発見できることは楽しいことです。
それどころか、当時は理解ができなかった映像の意味も、ある程度わかるような気にもなりました。この際、ブルーレイなどの技術の進歩に感謝しましょう。贅沢な時間をありがとうございました。
 

2018年6月24日 (日)

ベン・ハー(ブルーレイ版)

 ブルーレイ・ディスクは、なにより細部まで細かく映し出される解像度が魅力です。そのため、フィルム原版の修復度合に影響されるモノクロの古典作品よりも、凝りに凝ったセットや美術が魅力となるSF映画や史劇などのスペクタクル大作に向いています。
 そこで、ハリウッド史劇の名作「ベン・ハー」のブルーレイ版を観てみました。しかも、格安の国内盤(国内で日本語の音声や字幕を付けて製作・販売される盤)ではなく、輸入(Impot)盤のスチールブック版を選びました。輸入盤とは、アメリカなどで販売されているものを輸入したものですが、北米と日本では、規格(リージョン)が同じなので、視聴ができるのです。かなり、リーズナブルな上に、日本語の音声や字幕も付いている商品もあります。
_new  左の写真が輸入盤「ベン・ハー」です。ご覧のように、スチールブックのデザインが秀逸な上、国内盤より、映像の色や明暗(コントラスト)にメリハリがあって、より精緻で深みのあるように見えます。・・・私の錯覚かもしれませんが(笑)。
 再見すると、何度も観ているはずなのに、冒頭のローマ軍の行進シーンで、兵隊の数に凄さに感嘆しました。最近のCG製の映像とは、まるで重みが違います。平坦な野山に鎧を身に付けたローマ兵たちの行列が連なっているだけですが、そのエキストラの人数の迫力と手の込んだ衣装の色彩に魅せられました。嗚呼、これが本物を映した映像の力なのでしょう。いまさらながらに黄金時代のハリウッドの隆盛を思い知らされました。
 もっとも、監督がウィリアム・ワイラーであることも大きいと思います。最近では、当時と比較して作家としての評価が下がっているようにも感じますが、私にとっては、「ローマの休日」や「コレクター」を撮ったプロフェッショナルな映画監督であり、その正攻法の堂々たる演出は映画のお手本と思います。
 とはいえ、海戦のシーンでは、ブルーレイの解像度がよすぎるせいか、プールにガレー船の模型を浮かべた特殊撮影の粗が際立ちます。CGのない当時の技術としては、最高峰のレベルですが、これはやむ得ないことでしょうねえ。両刃の剣ですねえ。もちろん、船底での奴隷たちがオールを漕ぐシーンの異様な迫力はいささかも変わりはありません。セットもリアルですし、チャールトン・ヘストンが適役です。
 そして、やはり、最大の見せ場は、馬4頭立ての戦車競走です。これは何度見ても凄いとしか言いようがありません。疾走する戦車同士の競り合いや転倒、とりわけ落馬し、戦車に轢かれるシーンは、スタントマンの技が光ります。
 この15分間のシーンのフィルムが某美術館に永久保存されているという話は素直に頷けます。
 それにしても、過去に何度も観た作品であり、VHS、LD、そしてDVDを2種類、コレクションしていますが、今回も初めての封切映画のように一気に観てしまいました。
 やっぱり、ブルーレイは、スペクタクル作品、特に超大作映画に向いているような気がします。
 ということで、今夜はどの作品を観ようかな?アクション物か、SF・ファンタジーか、あるいは・・・。実は、アマゾンを通じて、字幕版の輸入盤もふくめ、いくつか購入したのです。いやはや、「お楽しみはこれから」です(笑)。
 

荒野の決闘(ブルーレイ版)

 ジョン・フォード監督の「駅馬車」に続き、同監督の「荒野の決闘」のブルーレイを観ました。
 この作品は、DVDでも特別編のリマスター版が発売されており、画質自体は上等によかったのですが、今回、ブルーレイ版を見て驚嘆しました。とんでもないほど美しいのです。DVDはもとより先の「駅馬車」と比較しても雲泥の差です。
81d2ntwbtsl_sx425_  冒頭、モノクロなのに、大空が抜けるように澄み切って見えます。そう画面が見事にクリアなのです。製作年が1946年とは思えない、封切り直後のように新鮮に見えます。
 まあ、「駅馬車」よりも10年弱ぐらいの後の製作になりますので、撮影機材やフィルムなどの質が向上したのでしょうかねえ、両者の画質を比較すると随分違います。
 また、フィルムの傷などが全くありませんから、原版の状態に加え、ブルーレイ化する際に、相当手間をかけた感じがします。
 久しぶりに再見してみると、主人公の年下の兄弟が2人も死ぬ、かなりハードな西部劇なのに、ヘンリー・フォンダ演じるワイアット・アープ保安官の素朴な行動が、可憐で凛としたクレメンタインとの交流を通じて、得も言われぬユーモアと人間味あふれる魅力を醸し出しています。こういう作品はなかなかできません。やっぱり、私はクレメンタインの名前が好きです(笑)。
 それにしても、今回は、本当にブルーレイの威力を思い知りました。
・・・これが4Kになれば、どうなるのでしょうねえ。考えれば恐ろしくも期待したくなります。ちなみに、恐ろしいと思うのは、4Kにハマった場合の投資の入れ込みようです(笑)。いやいや、笑いごとではありません。とにかく、しばらくは無視しましょう。
 

2018年6月22日 (金)

駅馬車

 ブルーレイで古典を見直そう、というマイ・ブームでも、1939年製作のジョン・フォード監督の「駅馬車」を取り上げようとは思ってもいませんでした。
 というのも、名匠ジョン・フォード監督の作品の中では、ヘンリー・フォンダ主演の「荒野の決闘」派でして、ジョン・ウェインの出世作の「駅馬車」はあまり評価していませんでした。
 なにしろ古い作品ですから、原版が失われたとかで、私が観たTV放映の映像も、低価格のDVDの画質も、やたら暗くて見ずらいもので、とてもまっとうな評価ができる状態ではありません。ただ、できればきちんと鑑賞して観たいと思っていたことは事実です。
 ちなみに、「荒野の決闘」の方は、修復された版がDVDで発売され、”いとしのクレメンタイン”を堪能した覚えがあります。不朽の名作です。
91govkj3ewl_sx425_  さて、今回入手したのは、故ジョン・ウエインが個人所有していたフィルムを基にしたリマスター版のブルーレイの商品で、しかも比較的お手頃価格でした。良い時代になりました。
 
 再見してみると、世間様の批評のとおり、まさに名作。平たくザックリ言えば、人間を描いた活劇でした。改めて”西部劇の神様”に脱帽です。この作品が1939年に作られたのですから、黒澤明監督が、ジョン・フォードを尊敬するわけです。
 物語は、いまさら説明する必要もないのですが、たまたま一台の駅馬車に乗り合わせたた7人の乗客らのドラマです。夫を探しに行く貴婦人、インテリの賭博師、街を追放される娼婦と飲んだくれの老医師、気弱な酒のセールスマン、訳アリの頭取、そしてこの作品でスターになったジョン・ウエイン演じる脱獄したお尋ね者。さらに、おしゃべりな御者と護衛の保安官が加わります。
 
 この乗客たちの人間模様がなかなかシビアなのです。上流階級や金持ちの傲慢さ、自らの正義を強行する町の婦人会、差別される流れ者たちの悲哀と優しさなど、なかなか骨太の演出ですし、時代を超越する慧眼です。全く古びていません。ここが名作の名作たる所以でしょう。改めてじっくり観ると、その凄さがよくわかります。
 ただ、正直なところ、このあたりの”毒”が若い頃の私の好みに合わなかったのかもしれません。
 
 そして、西部劇お決まりのインディアン(※ここはこの表現でご容赦を)の襲撃です。馬車の馬から車輪の下に転落する伝説のシーンは、長回しで、命がけの一発勝負の様なアクションです。なんでもないような馬の転倒シーンも良く見ると凄い迫力です。いやはや改めて驚きます。本当に真っ当な画面の効果は素晴らしい(笑)。
 やっぱり、映画は監督やスタッフが命を削って作り上げた作品ですから、最高の状態で観ることが肝心ですねえ。安かろう、悪かろうの商売は、映画ファンの敵です。

 しかし、こうなると、公平を期するためにも「荒野の決闘」、さらにその他の名作のブルーレイを見たくなりました。調べてみると、ジョン・フォード監督関連では、もう一つのお気に入りの「静かなる男」のブルーレイが未だに日本で販売されていません。実は、アメリカでは既に販売されており、同じリージョンなのですから個人輸入もできるのですが、残念ながら日本語字幕が付いていないので、宝の持ち腐れになります。とにかく一日も早く日本での商品化を実現してほしいものです。
 加えて、日本の場合は、アメリカと比較すると価格が高すぎます。もっと、安くしてほしい、日本のメーカーの皆様にはこの点も是非よろしくご検討お願いします(笑)。
 
 

2018年6月21日 (木)

映画を進化させる職人たち

  先日発売された映画秘宝の別冊「映画を進化させる職人たち」は、日本映画のアクション監督、昔で言うと殺陣師に当たるのでしょうか、彼らの最近の活躍をまとめたものです。
513eep1beal_sx326_bo1204203200__2  正直、最近の邦画のアクションは、ハリウッドに引けをとらない迫力があります。
 その始まりは、確かに本書で指摘するように、実は、私も以前のブログでも書いたのですが、SF映画「ガンツ」であり、特に続編の電車内での黒服星人との日本刀を使った戦いが忘れられません。なにしろ、あの日本刀を自在に振り回した女子高生の動きが強烈でした。やっと、ハリウッドの水準になったと思った記憶があります。
 本書によれば、その時の殺陣に使った日本刀が従来の竹光ではなく、ラバー製の模造刀だったそうです。ここにも技術の進歩があるようです。
 そして、その流れがスピード感あふれる驚愕の殺陣となった「るろうに剣心」の3部作につながったようです。
 大げさに言えば、黒澤明以来の時代劇の殺陣の革命でした。ワイヤー技術とラバー刀を駆使したものですが、やはり、それまでになかった殺陣を創造したアクション監督の力だったと改めて知らされました。
 また、こうした新たなアクション監督の出現が、時代劇だけでなく、SF映画「亜人」でも、銃をつかった格闘シーンにつながっているそうです。
 もちろん、若く運動能力の高い佐藤健をはじめ敵役の綾野剛(ガンツ2の黒服星人のボス役)達の努力と熱意もあるようですが、観客を驚愕させるアクションシーンを創り出せるアクション監督が何人も出現したことが、邦画界にとって大変意義のあったことだと思います。
 本書では、こうした邦画界のアクション界の動きを、それぞれのキーマンごとに詳しく紹介していますが、実は、これらのアクション監督は、みなさん、ハリウッドに渡って経験を積んできた人たちということでした。
  やっぱり、本場の技術が凄いのでしょう(例えばDVDの「ボーン」シリーズのメイキングなど見ると、撮影用の車の改造やアクション・プランの創意工夫には驚かされます。)が、それ以上に、そうした現場を体験し身に付けきた彼らの熱意と根性に敬意を称したいと思います。
 世界は確実に狭くなっていますので、この分野に限らず、VFX分野でもそうですが、最近は単身渡米し、本場で活躍する若者が増えてきています。うれしいことです。もはや国内だけの狭い料簡ではだめでしょうねえ。やっぱり世界を相手にした様々な分野で若い人に頑張ってほしいものです。
 本当は、政治の世界が一番そうなってほしいものですが、まあ、銀幕の夢にもならないでしょうねえ(笑)。
 

2018年6月20日 (水)

悪魔のような女

 ブルーレイ(BD)の画像は本当に美しいと、改めて感心したのが、「続夕陽のガンマン」です。何度となく見ているはずの映画がまったく違うもののように思えるから不思議です。一世を風靡したマカロニ・ウエスタン風というか、顔や足のドアップから西部の風景にパンします。その悪漢風の面がまえがシミや毛穴まで写されたような精緻な映像なのです。そんないままで気にもしなかった部分まで情報として受け取るのですから、違う作品のように思えるのでしょう。
 というわけで、最近はもっぱら古典、名作をブルーレイで再見しています。”初ブルーレイ化”などという宣伝文句は、もはや殺し文句ですねえ。
919s3rgxull_sx425_  さて、今回は、サスペンスの古典中の古典とも言うべき、アンリ=ジョルジョ・クルーゾー監督の「悪魔のような女」です。映画ファンなら誰でも、その筋書きも当時驚嘆されたトリックも全部知っているような作品です。
 ただ、単純な私には生理的にあわないのか、昔からフランス映画を敬遠しているせいもあり、市販のDVDを持っているものの、あまりしっかり見ていませんでした。
 なにしろ1955年の製作作品ですので、古いフィルムの原板のせいか、DVDの映像の質が酷すぎるのです。VHSの時代なら赦されるのでしょうが、最近の作品で目の肥えた(慣れた?)人間には、とても我慢ができません。贅沢になりました(笑)。
 しかし、その作品が、昨年、初ブルーレイ化で発売されていたのです。しかも低価格でバーゲン中です。ただ、モノクロ映画作品の中にはDVD程度の画質のブルーレイもよくあるので、実際の映像を危惧していたのですが、全くの杞憂でした。公開当時の様な見事なシャシン(=昔の活動屋の言い方)に甦っていました。
 再見してみると、妻と愛人が共謀して夫を殺すという大筋を承知しているものの、細かなエピソードや光と影を使った演出の冴えには改めて感心しました。さすがです。
 夫を殺すまでの前半がいかにもフランス映画風で退屈なのですが、その死体が消え、変な探偵が登場してからが盛り上がります。サスペンス映画のお手本です。
 ただ、探偵の最後の行動は人道的に一寸解せませんが、まあ、自業自得なのでしょうかねえ。それにしても、まだコンタクトレンズなどない時代に、あの主演俳優の勇気は尊敬に値します。私は絶対嫌です(笑)。(その種明かしの場面は、是非ご覧ください。)
 余談ですが、この作品に味をしめ、フランス・サスペンス映画で、「太陽がいっぱい」の名匠ルネ・クレマンの「雨の訪問者」を観ました。これは初見ですが、安価ブルーレイの発売がないので、DVDで鑑賞です。
 こちらの作品は、なかなか骨のある女が主人公です。強面のチャールス・ブロンソンも翻弄されるわけです。フランス女は情がコワいですねえ、と改めて思いましたし、サスペンスとスリルはありますが、なんかスカッとしません。やっぱり、フランス映画の棘には心がささくれますねえ。

2018年6月18日 (月)

ギフテッド

 映画「ドリーム」もそうでしたが、天才の物語は面白い。しかも、可愛い子どもが主役の場合は無敵でしょう。新作DVDをレンタルする中で、そんな傑作を見つけました。
 そのタイトルも天才の意味の「ギフテッド」です。
71bgh8r16hl_sx425_  若くして亡くなった天才数学者の娘(7歳)を引き取っている弟フランクと天才少女メアリーの物語です。小学校に入学早々、その天才ぶりを発揮する少女。小学校の担任教師をはじめ、大学の教授たちの驚きなどが楽しめます。しかも、その天才ぶりとこまっしゃくれた言葉や態度のギャップが、なんともキュートです。これは、ひとえに演じたマッケンナ・グレイスの個性と天性の演技に負うところが多いでしょう。
 主役のクリス・エバンス(キャプテン・アメリカです(笑)。)もなかなか良い味を出しています。担任の女教師との一件は笑えます。
 加えて、隣家の黒人女性ロバータとの掛け合いでも少女の演技が光ります。助演のオクタビア・スペンサー(「ドリーム」でも見事な脇役)がうまいとしか言いようがない。
 しかも、ストーリーは”好事魔多し”の王道を進み、その天才ぶりに目をつけた祖母が登場、裁判までかけて親権を争います。”イギリス女性”の強固な信念には驚きますし、少女の母との確執も浮き彫りになります。シナリオもうまいし、何度でも見たくなる傑作です。
 ともかく、幼い天才少女の天真爛漫ぶりとそれを温かく見守ろうとするオトナ達の奮闘ぶりを泣いて笑ってお楽しみください。本当にハート・ウォーミングなハッピーなお話です。
 私、こういう作品が文句なしに好きなのです。
 おもわず、ブルーレイ(BD)を購入してしまいました。劇場で観ずにBDを買ったのは「ドリーム」以来かな?。いやあ、映画って本当に楽しいですねえ(ここは映画宣伝マン節?)。はい、サイナラ、サイナラ(最後は淀川節で)。

2018年6月17日 (日)

犬ケ島

 ウェス・アンダーソンという映画監督をご存知でしょうか。「グランド・ブタペスト・ホテル」で日本でも有名になりましたが、欧米では映画監督というより知る人ぞ知る映画作家という存在のようです。
 その最新作が先日公開された人形アニメ作品の「犬ケ島」です。まず、声のアテレコが凄い。リーブ・シュレイバー、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、スカーレット・ヨハンソン、ティルダ・スウィントンなどのハリウッドの有名俳優たちが担当しています。オノ・ヨーコまでが登場したのも、この監督の才能を証明しています。
_new  しかし、正直驚いたのは、作品の舞台が日本だったことです。物語は、日本の架空の”メガ崎市”を牛耳る猫派の”小林”市長がペットの犬達をゴミ捨て場に追放する内容です。その陰謀に立ちあがるのが市長の養子の少年”アタリ”と6匹の捨て犬なのです。
 監督はかなりな日本びいきらしいのですが、とにかく欧米人から見た日本のイメージ、つまり外国人が大好きな浮世絵、太鼓、着物、歌舞伎などの日本の伝統の美術や文化を大胆にアレンジして、登場人物をはじめ、背景、小道具の一つ一つまで精密なミニチュアで作品世界を創造しています。
 そのビジュアルは、手作り感のあるクラフトで統一され、デザイン的にも誠に見事なのですが、どうも日本人にとっては、なんとも古臭いし、戦前の暗い、統制国家時の世界のような気がするのは、私だけでしょうか。
 ただ、監督が尊敬してやまないという黒澤明の作品へのオマージュ、リスペクトが全編に満ちあふれており、犬たちが行動を起こすときに、映画「七人の侍」のテーマ曲がそのまま使われているのは、正直うれしいもので、低い鼻が一寸高くなるような気さえします(笑)。
 余談ですが、820円もしたパンフレットによると、肩幅が広い短足男の悪役小林市長の造形は、三船敏郎をモデルにしたそうです。
 黒澤映画の三船敏郎のイメージと随分違うと思っていましたが、丁度、黒澤映画以外の三船主演作品を解説した映画評論本「三船敏郎、この10本」に誘われて、未見だった三船主演稲垣浩監督の「宮本武蔵」3部作のDVD(期間限定値下げ商品)を観ると、その内容にあきれたのは別にして、三船武蔵がのしのし歩く姿や特徴は、小林市長人形となるほどよく似ています。とても恰好の悪いムサシなのです。(宮本武蔵物語では、内田吐夢監督の5部作の偉大さがよくわかります。)
 やっぱり、何のかんの言っても、黒澤明作品での三船敏郎の凄さ、素晴らしさを改めて認識した次第です。ちなみに、この「犬ケ島」には、小津調ローアングルの構図も多用されています。ローアングルが短足胴長の日本人を美しく見せる撮影方法かもしれません。小津監督の慧眼を改めて思い知りました。
 
 それにしても、この物語を今はやりのCG技術ではなく、手作り感一杯の伝統的な人形アニメーションの手法で製作するとは驚きます。故意に作ったカクカク感やさし絵風の展開など、私は結構気入っていますが、現場の手間や労力は途方もないことと思います。(メイキング本が出版されるようです。)そういう資金が集められる、それこそがウェス・アンダーソンの力なのでしょうねえ、きっと。
 ただ、日本では、多分不入り間違いないでしょうから、結果、監督さんが日本嫌いにならないようにお祈りしています。
 

2018年6月 5日 (火)

スーパーマン

  私にとって、「スーパーマン」と言えば、1978年のクリストファー・リーブ主演の映画です。なにしろ、お子様向けのアメコミをB級ではなく、大人向けの超大作映画として製作した、歴史的な第1号なのです。
 まず、あの大スターのマーロン・ブランドがスーパーマンの父親役として出演するなど、当時としては信じられない出来事でした。加えて、敵役に当時売り出し中のジーン・ハックマンなど脇役もそうそうたる陣容です。
 そして、主役には新人クリストファー・リーブの抜擢です。あのド派手で漫画チックな赤と青のコスチュームがさほどおかしく見えないほどの適役でした。後年のスーパーマンの呪いが残念でなりません。
 監督は、リチャード・ドナーで、アメリカの田舎の農場風景などを悠々と描いた演出は、まさしくA級の風格がありました。 
 このエポックメイキングな作品があってこそ、今のマーベルを中心としたアメコミ映画の隆盛につながっていると断言できます。もっとも、現実には、このシリーズは、ほぼ4作で消滅(3作目はコメディ化し、4作目はC級の出来で、当然の結果)し、その後、バートン監督の「バットマン」によってその流れは確立したと言えますが・・。いずれも、DCコミック製です(笑)。
 
 この第1作目と同時並行で製作されていた第2作が「スーパーマンⅡ/冒険編」ですが、増高した予算のせいでドナー監督が製作首脳と揉めて、監督が途中でリチャード・レスター監督に交代しています。
 このレスター監督は、「ジャガー・ノート」、「三銃士・四銃士」、「ロビンとマリアン」というコメディ・アクション映画というような小粋な作品を作った実にセンスのいい才人です。
 実は、この冒険編が、私の一番のお気に入りで、ゾッド将軍とその愛人の不貞腐れぶりが大好きなのです。1作目も雰囲気は良いのですが、地球の自転を逆転させて、時間を戻すという、驚天動地のラストがなんとも気にいらないのです。だって、どう考えてもおかしいでしょう(笑)。
 
_new  それはともかく、スーパーマン何十周年とかで、最近発見されたマーロン・ブランドのフィルムを使って、当初のドナー監督の構想を映像化したと称するブルーレイが発売されています。リチャード・ドナー・カット版と冠したものですが、いやはや、どうなっているのでしょうか。        
 DVDでは、劇場公開版、ディレクターカット版とか、ことなる編集版がいまや普通に発売されていますし、その手の常習犯のリドリー・スコット監督などは、「ブレードランナー」で発売のたびに、異なる編集版を出して、最終的には「ファイナル版」と銘打ってラストまで変えてしまいました。
 ジョージ・ルーカス監督も、「スター・ウォーズ」のブルーレイ版では、あとからCG映像を加えて、漫画映画のようになってしまいました。劇場公開版のブルーレイが無いのです。困ったものです(笑)。
 それでも、監督が異なる再編集とは前例がないことのように思えます。リチャード・レスター監督はお亡くなりになっていますし、編集権は製作会社が持っているのでしょうねえ、きっと。
 
 さて、今回、この前代未聞のドナー・カット版のブルーレイを観たのですが、スーパーマンの正体がわかるシーンは、なるほど劇場公開版よりはるかに説得力があります。この箇所は、素直に感心します。
 しかし、スーパーマンが人間に変換される前に、ベッドシーンをこなすのはおかしい。映画「ハンコック」を見よ。その答えがあります(笑)。
 そして、やっぱり、ラストは、第1作目と同じように、地球の自転を逆転させて、破壊された町をもとに戻しますが、この場合、死んだはずのゾット将軍も生き返るし、最後のオチの懲らしめも意味が無くなるのではないか?と心配になります。脚本が理屈に合わないぞ!!と思わず、天を仰ぎました。こういうことが許されるのか、地球の自転を逆転させてほしいものです。
まあ、半額値引きとはいえ、こんなブルーレイ・トリロジー(7作品入り)BOXを購入する自分もどうかと思いますねえ、反省、反省。 

2018年6月 4日 (月)

デッドプール2

 ご存知、不死身でおしゃべりなおふざけアメコミ・ヒーローのデッドプールの続編、「デッドプール2」が公開されました。
 今回も、主人公の切れ目のないジョークと、とんでもない行動を、観客への話かけやシーンの巻き戻し、過激な人体破壊の演出を駆使して一気に見せます。
 
_new  ネタバレになりますが、冒頭いきなり婚約者が殺され、能天気な主人公が自殺を図るほどの、ハードなストーリー展開になるとは意外でした。しかも、テーマは、マイノリティ(=ミュータント)への差別・虐待というのですから、恐れ入りました。
 
 登場人物は、前回のXmenメンバーとしては2番どころの(予算がなくて主要メンバーは未登場)の金物男や爆裂娘に加え、新たに、未来から来たサーボーグ男、運が良いという超能力を持つアフロ美女がお目見えです。
 アクションも満載ですが、この映画の勘所は、やはり、主人公のきわどいセリフです。ともかく、映画ネタが多い。第一、ストーリーや設定にもパロディ?が満載です。
 
 しかも、映画通でなければ一寸わからないような内容です。ただし、ほとんど下ネタにまとめますから困りますが・・。その映画を知っていれば笑えます。知らなければ、・・・素通りしてください(笑)。
 
 昔から歴史の浅いアメリカでは、映画が自国が生み出し誇れる伝統文化のようなものと言われていますから、こうした映画ネタがアメリカ人に結構受けるのでしょうねえ。
 さて、あなたは、いくつわかりましたか?
 
 エンディング後の、無理やりハッピーエンドや自虐ネタよりも、あのスペシャルゲストには驚きましたし、仲いいんだ、と安心しました(笑)。
 まだ、観ていない人は、是非、映画クイズに参加してください。まあ、お下劣な表現や残酷なショットもこっけいさとおふざけ演出でうまく緩和されますので、安心して気楽にご覧ください。  
 

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