007 スペクター
007ダニエル・クレイグの最新作「スペクター」は、これまでのシリーズの集大成という前評判のとおり、初代ショーン・コネリー以来のオールド・ファンにとっても、大変楽しめる作品に仕上がってました。
実際、様々な場面で、この映画自体の面白さに加え、そのシーンのオマージュとなった元ネタを思い出す楽しみが味わえるという仕掛けです。
まず、冒頭のメキシコの死者の日のドクロの仮装など、ロジャー・ムーアの中では好きな映画「死ぬのは奴らだ」にそっくりで、思わず笑いますが、そのオープニング・タイトル前のプロローグ・シーンの規模のでかさ、例えば、お祭りを再現したエキストラの数、狙撃したらビル一棟が倒壊するなどの派手さに驚嘆します。
しかも、ボンドが、狙撃のために高い屋根伝いに歩く何気ないシーンも、まったく平地を歩く足取りと同じというスタント技も光ります。もちろんヘリの曲芸も必見です。
と思っていたら、やっぱり、007映画は、オープニング・タイトルが凄い。特にクレイグ・ボンドの映画は、コンピュータ・グラフィックのおかげか、幻想的でエロチックで、しかも死の香りのする物語性を感じますが、今回のは、また影絵の程合いが白眉なのです。
スペクターの蛸を模したマークが、CGのリアルな蛸に変わり、グラマラスな美女に絡まるなど、葛飾北斎の浮世絵漫画を想像させる出来上がりです。もう、幕開きから、完全に虜になりました。
さらに、ここから、これまでの007映画へのオマージュの釣瓶撃ちです。「ボンド、ジェームス・ボンド」という決まり文句は手始めで、白いタキシードなどの服装から、「ゴールドフィンガー」の愛車アストン・マーティンの数々の装備、・・・もう懐かしさで涙が出ます。
アクション・シーンも、見たことのあるような場面の進化型のテンコ盛りです。
そして、タイトルに冠した敵のスペクターが目玉です。どでかい部屋で、ボスを中心に幹部が会議をするシーンは、「ロシアから愛をこめて」や「サンダー・ボール作戦」を再現します。文句なし。
私のお気に入りの「ゴールドフィンガー」の用心棒オッド・ジョブを彷彿させる大男の殺し屋も登場します。もちろん、定番の「ロシアより愛をこめて」の鉄道列車内の格闘も付いています(笑)。
しかし、やっぱり極め付けは、ボスのブロフェルドです。今回はクリストフ・ヴォルツが演じます。やっぱり、アカデミー俳優は上手い。見事です。白い猫や服装も製作陣のサービス精神が感じられ、ラストでは、容貌まで変えて見せてくれます。この小技の見事さには舌を巻きました。しかも、お約束の、馬鹿馬鹿しいような秘密基地の中で、ゴールド・フィンガーの工業用レーザーの代わりに、極細の医療用ドリルで拷問する芸の細かさです。ここに感動しなければ、往年のダブルオー・セブン・ファンとは言えません(笑)。
こうしてみると、この映画は、最近のアメコミの映画化と同じです。単純だったコミックの原作を、深刻かつリアルな形に再構成して映画化し、大ヒットを生んでいます。上手い方法です。この作品では、前3作との関係や、ボンドの生い立ちとブロフェルドとの関係を描き、カッコウをテーマにした因縁物話に仕立てています。まあ、上手くつなぎ合わせたストーリーとなっています。ご苦労様でした。
ん、ところで、ボンドが隠していた過去の秘密とは、何だったのだろう?まあ、いっか。
最後に、ひとつだけ、苦言を呈したい。今回はボンドガールが私の好みでなかったのが、残念無念でした。ダニエル・ビアンキ級の美女を出してほしい。付けくわえるなら、顔の大きいマニーペニーも気に入りません。・・・いやあ、勝手なこと言ってどうも、すみません。
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