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2015年2月14日 (土)

雄呂血

 無声映画「雄呂血」については、主人公の不運とその殺陣の壮絶さ、そして、戦前の大スター阪東妻三郎の出世作として、我が国のサイレント映画史上の屈指の作品といわれています。また、剣戟映画の第一号とも位置付けられています。 

 これまで何度か、殺陣シーンの一部などを目にしてきたのですが、全編を通じて観たことはありませんでした。
 ラストの捕り物シーンの激しさは、いまでも、黒澤時代劇と比較しても凄い、本物の迫力だと褒めちぎっている批評家たちがいます。
 時代劇ファンを自認する私としては、是非一度はしっかり見る必要があると思い、今回、思い切って、マツダ活動大写真のDVDを購入しました。楽団の音楽、活動弁士の語り付きです。貴重なコレクションのせいか、値段も5千円弱となかなかお高い。 

Img_new さて、その結果というと、私はすっかり首をひねってしまいました。これが日本映画の傑作?。とても、信じられません。有名な某映画評論家たちが絶賛する価値が全くわかりません。
 バンツマ扮する主人公は、短気で自分勝手で、女に岡惚れしやすく、ささいなことで暴力をふるいます。世の中が悪いといいながら、全ては、自らの粗暴なふるまいの自業自得というべきものです。惚れた女には付きまとうというストーカーの元祖ですし、拉致監禁すらします。
 しかも、罪を得て入れられた牢を女に会いたくて脱獄した挙句、人妻となった女を見て、大の大人が身も世もなく嘆き、茫然自失を絵に描いた姿となります。
 いやあ、寅さん以上にストレートで気恥ずかしい人間像です。しかも、追っ手には「人殺しをしたくないから構うな」などとうそぶき、当然ながら、聞き入れられなければ激昂して斬りまわるという有様です。
 寅さんとは違って、主人公の心情に、共感し、感情移入できる代物ではありません。
 悪漢としても、少しもワルの魅力がありません。ただのだらしない女好きの粗忽者です。
 この主人公が当時の観客の共感を得たという状況がまったく理解できません。 

 そして、肝心な殺陣もガッカリです。新たなDVDの映像で観ても、サイレント特有のコマ落とし調は変わらず、三味線のお囃子に乗って、長回しのカットなしで延々と描いているだけです。 
 「同じ手を二度と使わない殺陣」という評論もあるのですが、私にはどれも同じに見えます。刀の重みも、人を斬る迫力も、コマ落としの流れの中で全く感じられません。
 しかも、見晴らしの良い場所で、取り手が地面に伏して取り囲む場面には絶句です。もう丸見えです。あれ?、本当は夜間という設定だったので理に適っているのかなあ。
 ともかく、殺陣の凄さというよりは、長丁場を演じたバンツマの体力が凄いという感想でした。

 思うに、この映画は、様式美の歌舞伎の殺陣をそのまま映像化していた活動写真が、史上初めて、本格的な立ち回りを演じたことが評判となっているのでしょう。いわば、様式美からリアルへ転化した歴史的な作品なのです。その意義こそあれ、今の目で、作品やら、殺陣やら論じてもしようがないのでしょう。この作品を絶賛する皆さんは、リアル体験した先輩などの驚愕をそのまま引き継がれているのでしょうね、きっと。
 現在のCG技術で、コマ落としのような18コマから通常のスピードへの変換したDVDであれば、もう少し鑑賞できるものかもしれません。 
 まあ、この映画は、いまさら、あえて見る必要もなく、知識として知っていることで十分でしょう。

 それにしても、題名の「雄呂血」とはどのような意味か、以前から気になっていたのですが、今回、改めてネットで調べてみると、意外な事実がわかりました。もともとの原題が「無頼漢」だったそうですが、検閲で禁止され、誰もが忌み嫌う奴ということから、蛇がイメージされ、大蛇イコール「おろち」を適当に当て字したとのことでした。いや、これには恐れ入り谷の鬼子母神です。思えば、まことに、映画草創期という、なんでもありの時代なのですねえ。ここは納得です(笑)。

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