久しぶりに第二次世界大戦の戦争映画を満喫しました。ブラッド・ピット主演の「フューリー」です。いや、この映画の本当の主演は、イギリスのボービントン戦車博物館から引っ張り出された、M4シャーマン戦車と世界で唯一走行できるティーガーⅠ戦車でしょう。
もう、戦車ファンだけでなく、男なら、この本物の存在感は堪らないでしょう。
曇天のヨーロッパ戦線、泥濘の中を戦車のキャタピラが駆動しています。周囲には、絵のようにも思える無残な戦闘の跡が広がっています。
そして、5人の乗組員は、戦闘焼けと思えるうす汚れた姿です。このリアルで陰影があり、しかも美しすぎる映像は、一見の価値があります。まるで、黒澤明の「七人の侍」を最初に見て記録映画と思うような印象です。
逆に、幕開けのシーンなどは、神話のように幻想的で一気に第二次世界大戦の時代に引き込まれます。
ストーリーは、歴戦の勇士で、フューリー(=激しい怒り)と名付けられた戦車を指揮する車長(ブラッド・ピット)の元に、戦死した仲間の交代要員で、タイピストの新人兵士(ローガン・ラーマン)が送り込まれ、悲惨で厳しい体験をしつつ、成長する中で、300人のドイツ軍と孤立無援の戦いをせざるを得なくなるというのがクライマックスになります。
なにより、戦闘シーンが物凄い。戦車砲の砲撃や銃弾の閃光が、SF映画の光線銃の光線さながらに飛び交う映像は圧巻です。確かに、弾丸のサイズは、どでかいですから、本物は、あんな状況でしょうかねえ。
この監督は、ともかく「リアルに」をもっとうに、俳優のメイクや衣装は、当時の写真を参考にして、従来のハリウッド式メイクアップ法も変えながら、徹底して似せたといいます。その効果は一目瞭然です。いかにも本物ですねえ。第一、主演の戦車は本物を使ってるのですから、わき役の人間も負けられないのでしょう(笑)。
一方、人間ドラマとしても見せます。戦車乗りの5人の生い立ちからの葛藤、若いドイツ娘を巡っての諍いと予想外の結末。どのエピソードも目が離せませんでした。
もともと、私の洋画の事始めは、「バルジ大作戦」であり、「戦略大作戦」に夢中になった世代でありますので、もう今回の戦車映画には、感涙ものです。しかも、敵の「ナチス」に対しては、なんの遠慮も必要ないのでしょう。映画の中でも、SSの非道ぶりを強調して、大戦闘シーンを思いっきり繰り広げます。弾に当たった破壊力などもスプラッタ的にしっかり描いていますが、瞬間的な描写で処理しており、全く気になりません。・・・・本物でない、本当の戦争映画は、こうでなければなりません(笑)。
もっとも、戦闘の合間に、いつも聖書の教えを引き合いに出すのは、いかにもキリスト教的思想なのでしょうが、どうも、日本人には今一つわかりにくいものです。ただ、スピルバーグの秘蔵っ子のシャイア・ラブーフが、今回は、牧師の息子役という設定でなかなか良い演技をしていました。
最後に、この映画のチラシ(上記2枚裏表)が素晴らしく、ブラッドピットの髪形、5人の乗った戦車の絵画のような絵が気に入り、ブログに紹介しました。それにくらべて、820円もするパンフレットの味気のないこと、まったく困ったものです。ああ、今回もパンフレットに対する愚痴になりました(笑)。
ちなみに、先日、戦車模型のブログを書いたのは、この映画の宣伝、とりわり、チラシの絵が潜在意識にあったのではなかったか、と今更ながら思います。
そして、映画自体も、その期待にしっかり応えてくれました。満点の映画です。
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