ヘラクレス
ザ・ロックこと、ドウ=イン・ジョンソン主演の「ヘラクレス」は、今、ハリウッドで流行っている、ギリシャ神話の映画化とばかり思い込んでいました。なんせ、「タイタンの逆襲」や「インモータルズ」、さらには、「パーシー・ジャクソンとオリンパスの神々」など、CGによるファンタジーものが相次いて公開されています。
しかも、予告編では、九つの首を持つヒドラや多数の牙を持つ巨大なイノシシ、そして不死身のライオンなどとの格闘シーンが大々的に宣伝されています。誰だって、ファンタジー映画と思いますぞ、普通は。
しかも、主演は、あの「ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」で、巨大な半人半蠍のスコーピオン・キングを演じた、あのザ・ロック様ですよ、期待しますよねえ。
ところが、映画は、冒頭こそ、予告編にあったイノシシやヒドラの戦いを描きますが、あっという間に終了し、オープニングタイトル後は、なんともリアルに薄汚れた未開のギリシャ時代となります。あれ、変だなあと眺めていると、どうやら、主人公のヘラクレスとは、凄腕の傭兵部隊のリーダーで、ゼウス神の子という、当時としては誠にうまい宣伝を通じて、戦いを有利にしているという設定です。
つまり、冒頭のモンスターとの戦いシーンは、宣伝のためのほら話であり、実際は、ヒドラは作り物の蛇の頭をかぶった男達で、ケンタウルスは、単なる馬に騎乗した男ということになります。
こうした設定や傭兵の仲間の人物像について、なかなか魅力があり、自分の占いどおり死ねない副官など、「いいぢゃないか」とも言いたくなりますが、やはり、騙されたような気になり、期待はずれの感はいなめません。
本格的なヘラクレス物語を見たかった・・・かな。
ところが、そうした現代的な設定に反して、ヘラクレスの怪力は、少し人間離れしています。しかも、作戦は無謀で、いつも窮地に陥ります(笑)。とても、凄腕の傭兵とは思えませんので、どうも違和感があります。
極めつけは、ラスト、「自分を信じるんだ」という副官の声に、牢獄の鎖は引きちぎるは、巨大なヘラの女神像を押し倒すは、結局、超人映画に堕ちるのです。
途中から、心を入れ替え、リアルな時代物として鑑賞してきた観客は、再び、見事に裏切られるのです。一気に脱力です。途中の見所や評価点もすべて帳消しです。
真にふざけた映画でした。
もともとヘラクレスについては、元の神話では子殺しの汚名もあり、ハリーハウゼンの「アルゴ探検隊の大冒険」に登場する粗暴なイメージの人物像もあんまり気に入りません。西洋のスサノオノミコトのような英雄です。神話というものは東西をとわず何処も同じかな。
ところが、何故か、昔からアメリカでは人気が高いようで、なにせ、英語読みの「ハーキュリー」という語感がよい(笑)。
そのためか、今回は、子殺しの真相について、ヘラの呪いにしろ、ヘラクレス自身が手を下したものではなく、嫉妬した王が仕組んで、死者の国の三つの頭を持つ番犬ケルベロスにも見える、三頭の巨大な犬に殺させたという冤罪だったとしてます。映画の内容ではなく、そのあたりのアメリカ人の心理を突いた、製作者の設定が興味深い、というのは、私の勝手な邪推です(笑)。
それにしても、無駄にリアルな死体やアクションでした。思えば、同じ神話を現代風に解体・再構成する映画化なら、「キング・アーサー」が数段うまかったような気がします。加えて、神話そのものの「エクスカリバー」も傑作です。話が脱線しました。
まあ、多分、二度目なら、DVDなら、もう少し気楽に、楽しく鑑賞できるでしょう。
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