シナリオ別冊「座頭市の世界」
久しぶりに痛快な本に出合いました。日本シナリオ作家協会発行の雑誌「シナリオ」の別冊「娯楽映画傑作選『座頭市』の世界」です。
今頃なぜかわかりませんが、勝新太郎の「座頭市」の映画の特集号です。
実は、先般、NHKで勝新太郎の特集番組「ラストディズ 勝新太郎」が放送され、TV映画の座頭市の撮影における現場でのカツシン即興の演出などが取り上げられ、それが絶賛されていました。
思えば、そういう演出は、シナリオ否定につながるのかもしれません。シナリオ協会が頭に来るはずです。
なにしろ、この本は、冒頭から過激です。
巻頭企画には、若かりし市の映画を撮って、まだ現役の監督、池広一夫のインタビューを載せ、テレビの「座頭市」を一刀両断です。「部分的に面白いが、全体見るとなんだこれは。」とか、「この仕事は一人の才能ではできない。それを守らないとどんどんダメになっちゃう。」とか、「勝は、構成ができない。」など言いたい放題。しかし、全くその通りなのです。
実は、私もTVの座頭市はまったく評価していません。全巻DVDを持っていますが、あの市がまとう汚いマントも嫌いです。
なんといっても、話が面白くありませんし、カツシンの思い上がりのマスターベーション映画なのです。観客を見ていません。視聴率も悪く、勝プロを倒産に追いやりました。結局、スタッフの誰もワンマン勝社長に意見することができなかったようです。実際、トップには言えませんよねえ。・・そのことを指摘した本が出版され、誠に感謝でいっぱいです。スッキリです。
また、映画の座頭市の全作品について、チャンバラに詳しい評論家たちの座談会も楽しいものです。結構、当時の裏話をふんだんに取り上げており、もう至福の読書の時でした。
しかしながら、26本のシリーズの中での、傑作を選ぶ議論の中では、第1作などおおむね同意するものの、やはり納得できない部分があります。
というのも、「座頭市海を渡る」と「座頭市暴れ火祭り」の評価がやや低く、ベスト5に入らないのは非常に残念でした。
もっとも、海を渡った四国の金毘羅さんの長い石段が実は
合成だったとは、弘法大師さんでも気づきませんでしたでしょう。いや、驚きです。
一方、心ひそかに想っていた「座頭市あばれ凧」の評価が思いのほか高いうえに、私が説明できなかった良さや見どころを見事に料理してくれたのは、誠に重畳でした。ともかく、その作品は扱いも軽く、当時の出演者皆さんが安かった(出演料)そうです(笑)。
なお、番外ですが、綾瀬はるか主演の「ICHI」を一定評価しているのも好感が持てます(笑)。・・・・いやあ、久しぶりに楽しめた本でした。真にごちそうさまでした。
最後に、座頭市の原作について、キネマ旬報の日本映画作品全集の説明で、「子母澤寛の原作「ふところ手帖」にたった1~2行ふれられている」というのは全くの間違いで、原稿用紙25~6枚の作品があるとして、その全文を掲載しています。私は、そのキネマ旬報の出典をすっかり信じていました。鵜呑みにせず、元本に当たるべきことを反省します。勉強になりました。
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