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2014年3月23日 (日)

ウォルト・ディズニーの約束

Img  「ウォルト・ディズニーの約束」とは、あのサイコの撮影裏話を描いた「ヒッチコック」と同様に、ディズニー映画「メリーポピンズ」の撮影秘話を映画化したものと聞いて、一に二もなく、劇場に足を運びました。こういう映画現場の苦労話が大好きなのです。 

 さて、ストーリーの筋を平たく言うと、20年間にわたり映画化を拒否している童話「メリーポピンズ」の原作者パメラ・リンドン・トラヴァーズと、社長のウォルトを始めとするディズニーの制作陣の悪戦苦闘の物語です。
 映画は、トラヴァース女史の子供頃の回想を中心に、脚本製作現場が交互に描かれます。オールドミスの女史の契約を振りかざし、ディズニーの脚本家や有名な作曲家たちへの横暴振りは凄まじいものがあります。「アニメやミュージカルは一切ダメ」、「赤い色は禁止」など一方的な指示の修羅場に、ディズニーのスタッフは、じっと耐えます。こうした受け手の描き方は、この映画がディズニー作品だけに割引きますが、それでも宮仕えや下請け業者などの弱い立場の悲哀に共感し、応援したくなります。

 ところが、実はロンドンの霧の中に住む偏屈な原作者には、その生い立ちに大きな秘密があったのです。ハリウッドに似た気候のオーストリアで子供時代をすごし、大好きな父親との思い出が彼女の現在を作り上げています。誠に、一流の作家というものは、その創造の源に、一般人には思いもよらないような深い闇を抱えているものがあります。一流の芸術家に、一般常識など求めるな、ということを再認識させます。当たり前のことですが、・・・。
 ところで、娘というものは、あんな駄目な父親を好きになったままで居るのでしょうか、よくわかりません(笑)。
 主演のエマ・トンプソンは巧く演じていますが、やや美人過ぎます。最後に出てくる実在の原作者の写真は、なかなか圧倒的な存在感を示しています。当時、彼女と仕事をしたスタッフの恐怖と怒りが察せられます。

 一方、ディズニーランドの大成功、ハリウッドの帝王ウィルト・ディズニーについては、名優トム・ハンクスが演じ、仕草などはそっくりです。やっぱり、彼は何を演じてもうまい。ただ、制作がディズニー映画ですので、その創始者は立派な人として描いています。
 トラヴァース女史の場合とは雲泥の差です。映画のタイトルは、「メリー・ポピンズの秘密」という方が似合っていますが、これはどこまで事実なのでしょうネエ。本人にしては、プライベートの最たる処ではないでしょうか。誠に有名作家とは辛いものですねえ。映画自体は、総じて面白かったものの、そんな一部の割り切れなさが残りました。

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