胸に輝く星
かつて故淀川長治が、ヘンリー・フォンダは保安官役を演じたら右に出る者がいないと褒めており、曰く、名作「荒野の決闘」の素朴なワイアットアープ、「ワーロック」の町を牛耳る伊達な保安官、そして、三番目の作品として挙げたのが、「胸に輝く星」の老練な元保安官でした。
この「胸に輝く星」は、多分VHSはあるものの、まだ市販のDVDは無かったと思います。少なくても、私は録画ビデオしか持っていません(笑)。今回、TSUTAYAのオンデマンドにより発売されました商品を購入し、久しぶりに観ることが出来ました。
記憶では、正義感あふれるフォンダの保安官と思い込んでいましたが、実際に再見すると、監督がアンソニー・マンだけになかなか一筋縄ではいかない西部劇でした。
まず、主人公のフォンダは、元保安官の賞金稼ぎです。冒頭の登場シーンでは馬に積んで死体を運んで来ます。毛布の下から手首が出ており、それを街中の町民が胡散臭く眺めています。モノクロの画面だけに、何故か、黒澤明の「用心棒」を想起しました。
そして、「サイコ」出演前でまだ初々しい好青年アンソニー・パーキンスが臨時の保安官を勤めています。町の暴れ者に嬲られている新米保安官を見るに見かねて指導していくことになるのです。撃ち方、喧嘩沙汰の見極め方など教えていきます。この辺は、なかなか見せます。
しかし、それだけではありません。フォンダがホテルのオーナーに宿泊を断られ、子どもに案内され寄宿するのが美しい母が住む一軒家です。世間体もあるのに、少し変だなと思っていると、実は、その子どもは先住民との間に出来た子で、この母子の一家は町の白人住民から嫌がらせを受けていたのです。
母の台詞にある「いいインディアンは死体だけ。」と言うのは、この映画が初出かな?さらに、その母の「差別するのか。」との問いかけにフォンダは答えます。「そういうように育てられてきた。」と。しかし、そう言うフォンダはその子を全く差別せず、当たり前に接します。なんだかクッと感動します。
お話に硬派ぶりが出るのは、町一番の人徳者の医者がならず者の二人組みに殺されるという設定です。予想できて一番恐れた展開でした。その悪役の一人を演じるのが若きリー・バン・クリーフです。
そして、フォンダの手助けで二人を捕まえた保安官に、前述の暴れん坊に唆された町の住民達が暴徒化し、事務所に詰め掛けるのです。ついに、新米保安官の試練の場となります。その結果は、映画をご覧ください(笑)。
なお、この映画のラストは、流れ者の映画「シェーン」のような、一人去っていく定石をあっさり、ひっくり返し、主人公は、ちゃっかり、母子と一緒に去っていくのです。驚きのハッピーエンドでした。まあ、女好きのフォンダらしいといえば、らしいか(笑)。
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