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2013年12月31日 (火)

永遠の0

Img  映画「永遠の0」は、監督が山崎貴だけあって、ゼロ戦と艦船の戦闘シーンが誠にリアルで、かって無いほどの迫真性と臨場感は申し分ありません。ゼロ戦の飛行映像は想定内でしたが、日本の空母赤城の威容が圧巻です。喫水線からの甲板までの見上げるような映像は、これまで見たことも無かった姿であり、このシーンの映像だけで、この映画を見た価値があったとも思えます。
 聞けば、空母のCGモデルにフェリーのサンフラワーの航跡の実際の映像を組み合わせているとか。いやあ、この映画で、プールに模型を浮かべて撮影していた円谷特撮は、本当に過去の遺物になったと改めて実感せざるを得ません。
 しかも、こうした飛行機や戦艦のCGモデルの制作には、既に様々なデータを保有している人達(やっぱり好きな人が居るんだ!!)の協力を得たほか、空戦アニメーションの専門家(こんな人も居るんだ!!)を使って、より実際の空中戦に近い映像に作り上げたということですから、山崎監督の並々ならぬVFXへのこだわりを感じます。真珠湾攻撃もお見事でした。

 さて、お話の方は、現在の主人公が、自分の本当の祖父だった「海軍一の臆病者」と言われた凄腕の戦闘機乗りの本当の姿を求め、生き残りの戦友達を訪ね歩くものです。
 その中で、軍隊の異様さ、特攻隊の理不尽さ、作戦の無能さなどを炙り出していくのですが、この祖父の人物設定は、やっぱり利己主義と感じますし、「人間の條件」の主人公梶のように、当時の軍国主義時代の中では一日たりとも生けていけないような理想主義者でもあります。少し、CGに比べてリアリティがなく、違和感が拭えません。
 また、筋立てにも、意外なオチを用意してありますが、それ以上に、当時の軍の作戦本部の無能さ、非人間さを浮き彫りにします。この辺は実に共感するのですが、その一方で、何故か主人公に、特攻隊と自爆テロとのちがいを声高に言わせるシーンなど、すこし首を捻るシーンもあります。
 加えて、最後の祖母の戦後のエピソードの告白は本当に余計な付けたしです。あれこそ蛇足というべきものですなあ。

 全体とすれば、赤城の航行シーンを筆頭に、O戦の飛行や戦艦との戦闘シーンなどは一見の価値がありますし、「戦争に行った人間は、皆様々な体験を抱えている、しかし、それを胸に秘めて暮らしている。」というくだりには心を動かされます。かつての東宝戦記物より構成はうまいと思いますので、是非、ご覧ください。

 この映画が、平成25年の最後の劇場鑑賞になりました。来年が平和で明るい年であることをお祈りしましょう。  

2013年12月30日 (月)

ハンガーゲーム2

Img  4億ドルもの興行成績を上げた「ハンガーゲーム」の続編です。お話は、近未来の架空都市で、専制統治している12の地区から2人の男女を選び、殺し合いをさせるサバイバルゲームの顛末です。前作では、ジェニファー・ローレンス扮する主人公カットニスがクジで当たった妹のために志願して、このゲームに参加し、殺し合いの中で仲間をつくりながら生き残り、その健気な奮闘ぶりが、圧政に苦しむ国民の希望の星になっていくのです。
 その国民の暴動を危惧する大統領が主人公を抹殺すべく、過去の優勝者達を集めて記念大会の開催を目論むのです。集まった過去の優勝者たちも、暗殺者から技術者まで多士済々です。単なる殺し合いかと思えば、その裏に様々な仕掛けや思惑があるのですが、それよりは、ジェニファー・ローレンスの演技を見るのが正解です。
 どうも、あんまり好みのタイプではないのですが、なんかこの地味顔は癖になります(笑)。
 加えて、大統領役のドナルド・サザーランドがあいかわらず憎々しげな悪役ぶりです。

 それにしても、この映画の提示する支配階級のために、警察権力が国民を力で抑圧する恐怖社会は、昨今、どうも遠い国の絵空事の笑い話ではありませんナ。映画では、革命のシンボルである希望の鳥がその足枷をはずすところで、次に続くとなります。まあ、全3部作の2作目ですから、この中途半端さはしかたないのですが、驚くことに見終われば上映時間は2時間27分もありました。少なくても、鑑賞中はそれほど長い時間とは感じなかったので、その後の革命に向けた大展開を完結篇に期待します。

2013年12月28日 (土)

春の珍事

Img_0005  これまで、多分、VHSもLD化もなかったのではないかと思う、1949年製作の映画「春の珍事」がDVD化されました。私は、幸いにも、TV放送の録画版を持っておりますが、この映画のことを知ったのは、はるか昔、週刊少年マガジンに連載中の漫画「巨人の星」で、星飛雄馬が大リーグボール3号を編み出したとき、その球を空振りしたバッターが、その手ごたえの無さを説明するのに、この映画を引用したのです。そうです、この映画は大リーグボール3号の元ネタなのです。
 ストーリーは、木のバットを避ける液体を発明した大学教授が、贔屓のチームの不振を救うため、偽名で大リーグのピッチャーに一時転向し、その液体を使い、チームを優勝に導くという物語なのです。しかし、優勝目前で、相棒のキャッチャーがその液体をヘアトニックと間違って使い、結局無くなってしまうのですが、喜劇ですから、最後はハッピーエンドになります。

 しかし、今回、改めて見直すと、大リーグのピッチャーが帽子などに隠し塗った油などをつけて、球の回転を変えたりする裏技以上の、まさしく本当のインチキで勝っていくのですから、どうも気分が良くありません。
 ’49年当時は、こういう不正行為も容認されていたのでしょうかねえ。勝つためには手段を選ばない、勝負の世界、これは今も変わりは無いとは思いますが、最近、ドーピング問題も深刻であり、世間の見方も厳しくなっています。まあ、これが時代が変わると言うことなのでしょうか。
 わが国のプロ野球の中継を見ても、ビデオ映像での再生もあるので、審判を完全にごまかす演技をするような選手については、あんまり好きにはなりません。
 この映画は、結局、真実は隠されたままハッピーエンドになるだけに、やっぱり後味が悪いのです。

Img_0006  そういえば、同じような科学者の偶然の大発明によるディズニー喜劇「フラバー」にも、同じようなスポーツ試合の逆転劇がありました。大学対抗のバスケットボールで、運動靴の底に秘密の液体を塗りつけ、天井近くまで飛び跳ねるという抱腹絶倒の戦いを展開します。笑い過ぎて、実はこれがインチキだったことを忘れます。
 また、陸上の試合で幽霊が助太刀する「黒ひげ大旋風」でも同じシチュエーションがありますが、ディズニーの巧いところは、いずれも相手チームが強豪で、驕慢な態度が、観客の顰蹙をかっているので、インチキで負けても、あまり気になりません(笑)。まあ、判官びいきで大目に見ているのでしょう。逆に、そういう演出、環境づくりが一枚上手なのでしょう。

 この映画については、当時の製作陣のコンプライアンスの低さに基づく後味の悪さのせいで、DVD化が遅れていたわけでもないでしょうから、今回は、DVD化されたことを素直に評価しましょう。

2013年12月24日 (火)

リメイク版ロボコップ

 最近、あの傑作SF映画「ロボコップ」の話題が多くなっています。模型業界でも、ロボコップや名敵役ロボットED-209の新たなフィギュアの発売が予告されています。あれ、どうしたんだろうと思っていたら、どうやら、リメイク版の映画が製作されていたようです。下記のアドレスに予告編の映像が流れています。

   http://www.kotaku.jp/2013/09/new_robocop_trailer.html

 最新のCG技術を使って、あの「ロボコップ」をリメイクしたいという気持ちはわかりますが、あれだけの名作をどうしようというのでしょう。黒澤明の「椿三十郎」を単なるカラー化した駄作を作った二の舞になる気がします。映画界は日米どちらも同じですか?。もう、そっとしておいて欲しいものです。

 ちなみに、リメイク版のあらすじを垣間見ると、なんとサイボーグに改造された主人公に記憶が残っており、妻も子も、そのサイボーグ化を知っているという設定です。この話が本当なら、私が勝手に元ネタと確信している「8マン」から底流に流れるサイボーグの悲しみ、孤独さが失われてしまいます。一番の肝を外して、どうするのでしょうかネ。

 第一、デザイン的に見ても、ロボコップの色がブラックとはどうなんでしょう。どうも馴染めません。しかも、敵役の名機ED-209のデザインまで改悪しています。いずれも、CG技術だけに動きがよりスムーズですから、ますます映像の重みがありません。
 いずれも、私の杞憂であればよいのですが、本当に心配です。

H231030_00311  こんなことを考えているうちに、私の貴重なコレクションの、ホット・トイズ製の大型フィギュアであるED-209の頭部の黒いゴムが剥がれているのを発見しました。左の写真の赤い矢印の箇所です。
 以前からこのモデルには材質に問題があり、このような事態が頻発しているとの噂が流れていたのですが、ついに、私のお宝にまで及んでしまいました。
 やむなく、黒い接着剤を使い、剥がれた素材をピンセットで引っ張ったうえで、瞬間硬化剤で固めました。・・・うーん、どうも巧くいきません。

 しかたないので、この際、新たな新製品の購入を検討しましょうか。トホホ。しかし、ホットトイズ(香港のメーカー)は、今度は、材質を不具合の生じないものに変えているのでしょうかねえ。仏の顔も何度やら・・と言いますゾ。

2013年12月23日 (月)

民王

Img_0001  「民王」という小説を友人に勧められました。聞けば、今年大ブレイクしたTVドラマ「半沢直樹」の原作本「オレたちバブル入行組」などの著者の池井戸潤の作品といいます。
 この銀行員のTVドラマは、現代劇に水戸黄門のような勧善懲悪の時代劇の要素を取り入れた作品だそうで、悪人達が悪事を働くものの、最後は主人公が痛快な決め台詞を発して、完膚なきまでに懲らしめるという筋立てになっているそうです。
 不正な融資で私腹を肥やした社長達が集まって会食するシーンをたまたま見たのですが、水戸黄門なら、悪代官が「越後屋、お主も悪(ワル)よのう。」と菓子折りを持って笑っても、あまり気にはならないのですが、計画倒産で多額の金額を騙取った連中が、焼肉食いながら笑っているのは、見ているだけで、どうにも気分が悪くなります。
 あまりにも、現実と距離が近すぎて、フィクションになりません。全然笑えません。第一、ラストの決め台詞「倍返し」などの言葉を、現実社会で発したら、まず首ですよね、良くて左遷ですよ。主演の堺雅人は、その辺をきちんと良くわかった発言をしていたので、見直しました。同じ主演でも「リーガル・ハイ」の方が私は好きです。なんか、あの主演の二人の弁護士コンビのポスターはイヤラシ感があって、・・・良いです。http://www.fujitv.co.jp/legal-high/index.html

 さて、随分、前置きが長くなりましたが、友人の「シリアスな物語ではない。笑えます。」との言に従い、手に取りました。その結果は、まさしく、今のわが国の政治の現状を皮肉った、まことに滑稽かつ奇想天外なお話でした。面白すぎて、涙がでます。

 ストーリーは、総理大臣と出来の悪い息子のお話です。ある日突然、二人の人格が入れ替わるのです。嗚呼、最近食傷気味の、理由もわからない設定かと思うと、さにあらず、きちんとした科学根拠を示して、それなりに説明をつけているのですから、感心しました。
 しかも、出来の悪い子供らのせいで、漢字が読めない総理大臣、昼間から酒に飲まれている経済産業大臣が出現するのです。思わず、笑ってしまいました。現実の政治の醜態を絶妙に皮肉っています。もっとも、この小説の設定の方が日本のためには良いと思われることが辛いところです。
 一方で、政治家の愛人問題を追及する野党やマスコミに向けては、「愛人問題がどうした。政治はきちんとやっている。予算委員会では予算を議論せよ。」などなど、フランスの大統領のような発言をかまし、最近のマスコミなどのあり方に警鐘を鳴らしています。本当(笑)?。

 ともあれ、なかなか突拍子もない設定で、軽妙なユーモアにもって、現在の政治を皮肉った楽しい作品でした。シリアスではないので、未読の方は気楽にお読みください。

 最後に、民王は「たみおう」と読みます。

フェバリット

Img_00042  琵琶湖のほとりに、「フェバリット」というモデルメーカーがあります。モデルと言っても、飛行機、車などの機械物ではなく、恐竜や魚などの生物のフィギュアが中心です。

 左の図をご覧ください。これらは、このメーカーが発売した恐竜のデスクトップモデル(完成品)でして、サイズも長くても最大30cm弱までのお手ごろな模型です。硬く、一定の重さのある材質で出来ており、なかなか精緻な造りになっています。また、木製の台座が風格もあり、大変気に入ってます。
 特に、赤い横線の下のエリアにあるティラノザウルスから14種類の恐竜が旧モデルでして、その大部分が廃版商品となっています。実は、赤いチェックが入っていないモデルについて、購入をじっくり構えていたら、いつのまにか廃版になってしまったものです。誠に惜しいことをしました。残念です。
 赤い横線から上の商品が新しくリニューアルされた商品なのですが、どれも形や塗装がオモチャ、オモチャしている作りがどうにも気に入りません。
 また、最近は、ビニールモデル製が増えてきており、会社の方針として、どうやらこわれにくく、お子様が手にとって遊べる商品に力を入れているようです。もちろん、これは単なる推測ですが、こんな状況では廃版商品の復活はありそうもありません。何故、こんなことになったのでしょうね。売れなかったのかなあ? 残念なことです。.
 なお、恐竜シリーズには、このデスクトップのほか、スケルトンシリーズもあります。ティラノザウルスの骨格モデルは傑作です。
 さらに、古い復元画を基にしたオールド・シリーズがあります。これは、私たちが子供頃に馴染んだ恐竜をモデル化した見事な作品です。つまり、尻尾は地面を引きずり、垂直型に闊歩する、懐かしの恐竜の姿です。

 このほか、このメーカーには、ディスクトップのシンプルな魚類のフィギュアが発売されていたのですが、これもほとんどが廃版にされ、新製品は、ごてごてした海底の岩などの情景装飾を台座に付けた、不細工な商品に変わってしまいました。この点も残念です。

 できましたら、これまでの大人のための商品を再販して欲しいものです。

独身貴族

 TVドラマ「独身貴族」の放送が終了しました。平均視聴率約11%とのことで、さほど大ヒットしたというわけでもなく、最終回は、10%を割ってしまったとのことですから、贔屓にしていた私としては少々残念です。
 といっても、実はドラマ自体はあんまり見てなくて、オープニングとエンディングのタイトルが非常に気に入ったからです。物語は、キネマ・エトワールという映画制作会社を舞台に、独身主義者の変わり者の社長を草薙剛、その弟のプレイボーイの専務を伊藤英明、そして、脚本家志望の主人公春野ゆきを北川景子が演じます。典型的な男と女の三角関係であり、社長の許婚にスポンサーの大令嬢がからんで、笑いと映画界の裏話的なエピソードを描いています。

 草薙扮する金持ちの独身男の変わり者振りが笑わせます。例えば、コレクションしたブランド靴にほおずりしたり、映画のDVDを監督順に整頓したり、高級食材の男の料理など、こだわりと一流の備品などで自分の城を築きあげています。
 それが、婚約したとたん、令嬢の風水志向で、見るも無残なごった煮になってしまいます。ただ、独身男のお話では、やっぱり、阿部寛のTVドラマ「結婚できない男」のほうが、もっと現実感があります。今回の場合は、庶民とはちがう大金持ち系なので、いまいちピンときません。
 一方、弟は、妻と離婚訴訟中であるにもかわからず、毎晩女をとっかえひっかえしている有様で、劇中、お持ち帰りの外人女性が、アルバイトの家政婦だった主人公に言います、「ヤマタのオロ~チ」と。そのイントネーションが抱腹絶倒です。ここがハマりました(笑)。

 そのほか、テレビ局の幹部の高慢さや、現場スタッフの大変さなど、映画作りに向けたエピソードが面白い。なんか、実際のテレビの現場からの皮肉も感じられます。
 また、モチーフにしている映画「めぐり逢えたら」の二人の恋について、運命の人でなく捨てられる婚約者の心情を引用し、心ならずも真の恋を否定する逸話などは、興味深いものがあります。この引用された映画の中では、アメリカの恋人たちが過去の名作を議論するシーンもありましたが、日本人も教養として、過去の日本の名作映画(それを古典という。)を知ってもらいたいものです。実は、ドラマの中身より、こうした映画関連を題材にしているところが気に入ったのかもしれません。

 さて、前置きが長くなりましたが、お気に入りのタイトルのことですが、開幕の無声映画をイメージしたようなクラシックなタイトル文字、銀幕(スクリーンではない)に映るフィルムの縦傷、画面の中央と周囲の明暗差、無声映画の様々な男女の抱擁と接吻のシーンの挿入などなど、いいじゃないですか。そして、エンディングの方は、サントリーおじさんの絵柄で3人のドタバタが影絵風に演出されています。これも、ノスタルジックでお気に入りです。未見の方は、タイトルだけでもご覧ください。

 最後に、もちろん、意地を張った二人も優しい弟や婚約者(この役儲け物)のおかげで、結ばれるのですが、二人の抱擁接吻を目撃した主人公の母親が、大団円の画面の右隅で卒倒するオチは笑います。ここが一番の見せ場でした(笑)。

http://www.fujitv.co.jp/dokusinkizoku/index.html

Img  ついでに、いま旬の北川景子さんの時代劇「花のあと」を改めて見たくなりました。半年練習したという殺陣よりも、まずは、その初々しさをお楽しみましょう。あんまりしっくり来ない日本髪より試合用のポニーテールの髪型の方が可愛らしいですゾ。一度、物は試しでご覧ください。 

 

2013年12月22日 (日)

ゼロ・グラビティ

Img_0001  「ゼロ・グラビティ」の映像は、予想以上に素晴らしいものでした。3Dのために、やたら客席に向けて飛んでくる破片がうっとおしいものの、地球の映像や漆黒の宇宙での船外作業のリアリティはとんでもないレベルです。無重力の中でハッチから宇宙船内に入るだけのシーンなのに、観客の私がどれほどに主人公にあわせて体と腕を浮かせたのか。久しぶりのことです。
 CG技術とは承知していますが、本当にどうやって撮影したのかと、驚きます。800円もするパンフレットによれば、あの成層圏を飛行する機内での無重力撮影は行われず、新たな撮影技術を開発したとのことです。ただし、その技術の中身は、まったく触れられていません(笑)。

 それにしても、宇宙で船体を掴むことの難しさ、ハッチの開く勢いの強さ、うねる命綱のもどかしさなどを映像は丁寧かつ美しく描いており、やはり、宇宙飛行士というものは、大変な仕事ということを再認識させられます。
 そのほか、「2001年宇宙の旅」の無重力の映像とは格段に進歩していますが、あのボールペンへのオマージュもあります。男性観客を意識した「エイリアン」への目配せもあり、映画ファンをしっかり喜ばせてくれます。

 ただ、ストーリー自体は、破壊された衛星の破片群に衝突され、宇宙に投げ出されたサンドラ・ブロックが、艱難辛苦を重ねて地球に帰還するまでのお話です。様々な試練が待ち構えていますが、ジョージ・クルーニーの奇想天外な登場以外は、割とストレートでした。
 どうやら、主題は、サンドラ・ブロック扮する主人公が、娘を事故で亡くして以来、生きる意味を見失い、人生を流されて暮らしていたのですが、この地球と隔絶されている過酷な宇宙空間での事故により、生死を彷徨った体験を通じて、再び生きる意義を見出し、自分の足でしっかりと立って歩き出すまでの、いわば一人の女性の再生のお話なのです。
 なにより、地球に生還し、自分の足で立ったたくましい姿がすべてを表しています。なにも、カメラアングルとブロックの白人女性特有の体格の良さのせいだけではありませんゾ。あの足の指で土を掴んだ力強さをご覧ください(笑)。
 ゆえに、映画のタイトルは、無重力という意味の「ゼロ・グラビティ」ではなく、やはり原題のとおりの「グラビティ(=重力)」が正しいのです。

 

2013年12月19日 (木)

マーシャン・ウォーマシン 宇宙戦争’53

1953年製作の映画「宇宙戦争」をご存じだろうか。SF小説の生みの親と言われているH.G.ウェルズの有名な小説「宇宙戦争」をジョージ・パルが当時の最新の特殊撮影技術を駆使して作り上げた傑作SF映画です。

2005年にスティーブン・スピルバーグが原作の設定に忠実な映画を製作したので、今やそちらの方が有名ですが、この53年版は、宇宙人(=火星人)の侵略物として、長年にわたり不動の評価を得ており、SF映画を語る上では欠かすことのできない古典でもあります。
 もちろん、今のCG映像に慣れた目には、ウォーマシンの上にピアノ線が見えたりする粗はありますが、そうした瑕疵は作品の価値にはなんのマイナスにもなりません。ストーリー、演出、映像、効果音など、どれをとっても素晴らしい。

H251218_0051 そして、なにより人気なのが、火星人のマーシャンウォーマシン(円盤型戦闘機械)の秀逸なデザインです。金色に輝くエイのような円盤型の本体と、その流線型の背中からコブラの鎌首のような触角が1本生えています。そして、赤く光る目で獲物を探すのです。 
 しかも、小説では、3本足で歩く戦闘マシン(トライポッド)だったのが、この作品では、3本の磁力線で空中を浮かぶように移動します。
 実のところは、3本足の歩行シーンが、当時の技術で困難だったため、光をだして浮遊する設定に変えたそうです。このおかげで、20世紀初頭の原作を科学知識が一段と普及した現代(
1953年当時)に設定変更したこととあわせ、観客によりモダンな印象を醸し出したような気がします。
 なお、スピルバーグ版は、原作の3本足のトライポッドに戻って、巨大怪獣的な迫力を醸し出しています。CGとはわかっているものの、その破壊力は誠にすさまじい迫力です。さすがは、スピルバーグ作品です。

H251218_0171 ともあれ、このマーシャンウォーマシンは、SF映画史上、十指に入るデザインというのは衆目の一致するところです。
 エイ型の流線型ボディのスタイルは、艶めかしくも、妖しく輝き、もうぞっこんです。頭上の触角もあの毒々しいほど赤い複眼は、電子音の効果と共に、悪夢に出てくる一つ目のサイクロプスの恐怖の象徴となります。

 このデザインをハリウッドで日系のデザイナーが描いたと知った時は、当時、子どもながら低い鼻を高くしたものです。そういや、当時の子ども科学絵本や雑誌などには、よく流用されていました。

ちなみに、このマーシャン・ウォーマシンは、これまでもアメリカのトイメーカーなどから模型やプラモデル・キットが数々販売されています。私も大小保有していますが、今回ご紹介するのは、模型としては決定版とでも言うような、大きさが全長45cm、両翼50cmもある大型モデルです。結構、重量もあるので、机の上に気軽に飾るということにはならず、いつものごとく押し入れの肥やしになりそうです。

ところで、SF映画史に残る架空機械のデザインといえば、どんなものがあるのでしょう。以前、ロボットを選出しましたので、今回は、ロボット以外の乗り物や作業用マシン等のベストテンを独断と偏見で思いつくまま選んでみましょう。
 以下、順不同です。

 1 宇宙戦争’53  マーシャン・ウォーマシン

 2 海底2万哩 ノーチラス号

 3 サンダーバード サンダーバード2号

 4 2001年宇宙の旅  精子型の宇宙船ディスカバリー

 5 エイリアン 遺棄船(ジャガーノート)

 6 エリジウム 小型シャトル・・・・一目ぼれ

 7 インディペンデンス・ディ 母船+小型船

 8 エイリアン2 パワーローダー

 9 宇宙戦争’05 トライポッド

  10 海底軍艦  海底軍艦轟天号

  番外1 サンダ対ガイラ メーサー殺獣光線車

  番外2 マトリックス タコ型の探索機(センチネンタル)

 

2013年12月15日 (日)

3大B級クラシック・モンスター映画?

Img  B級映画の帝王と呼ばれたロジャー・コーマンの製作、監督作品「巨大カニ怪獣の襲撃」のDVDを購入しました。もう出来栄えは、見る前から予想はついて覚悟はしておりましたが、「50年代の『金星人地球を征服』の金星ガニ、『暗闇の悪魔』の大頭エイリアンとともに、3大B級クラシック・モンスター映画としてマニアックな人気の幻の作品」という宣伝文句に、まんまと騙されてしまいました。とにかく、予想をはるかに超える悲惨な出来の作品でした。

 というのも、宣伝文句にある金星ガニと大頭エイリアンは、確かに、そのユニークなデザインのため、日本のビリケン商会を始め、アメリカのメーカーなどからそのオモチャや模型が今でも販売されているほどの人気があります。どちらも、映画自体は、Z級のひどい物ですが、その秀逸なデザインだけは、B級映画に値するものでした。
 ところが、このカニ怪獣の映画については、映画評論でも、模型市場の中でも一度も聞いたことも見たこともなかったのです。普通なら見る気も起こらないはずなのですが、つい魔がさしたのか、宣伝文句に乗って、DVDを買ってしまったのです。どうも、昔から、三大○○というフレーズには弱かった(笑)。

 その結果は、映画の無残さはまだ許せますが、ともかく、その怪獣のデザインと造りの悪さはまさにZ級です。子供たちが学芸会で作るような代物です。大きな張りぼてはともかく、甲羅についた大きな瞳はもう絶句です。信じられないことに、これが表紙の絵のまんまなのですから驚きます。恐るべし、ロジャー・コーマン、その噂の真実を思い知りました。こんな映画をつくるために投資家から金を集めているのですから・・・。まったく、恐るべしコーマンです。

 ところで、こんな映画を「傑作SF映画選」のシリーズの名でDVDを発売するのは、販売会社としての良識を疑います。
 このシリーズは、これまで結構贔屓にして、埋もれた作品を発掘するとして感謝もしていたのでしたが、これからは是々非々ですな、全く。選定眼を疑います。
 購入代金1500円が本当に高く思えます。嗚呼、もったいない。私、怒っています。とても、このブログのタイトルに「傑作SF映画選」とは書けません。本来なら完全に無視すべき映画ですが、怒りのあまり、暇にまかせてブログを書いてしまいました(笑)。   

2013年12月14日 (土)

月夜の出来事

Img_0001  かねてから気にかかっていた映画「月夜の出来事」をTSUTAYAのオンデマンド商品で購入しました。このオンデマンド商品というのは、以前もご紹介しましたが、DVD未発売の作品を発掘し、客の注文に応じてDVDを製作するというTSUTAYA独自のシステムで、これまでも何回か利用しています。結構購入したい作品のラインアップがある優れモノなのですが、通常の作品より少し価格が割高(定価の割引が無いため)になるのが、玉に瑕です。

 さて、この作品は、私が最も贔屓にしている男優、ケイリー・グラントが母を亡くした3人の悪がきの父親に扮し、ソフィア・ローレンがイタリアから巡業中の有名指揮者の娘で、ひょんなことから身分を隠してお手伝いさんになるという、大スター二人が共演したロマンティック・コメディです。
 しかも、ハリウッド喜劇の伝統とでもいうような、とんでもなく馬鹿馬鹿しいハプニングから、この一家は川に浮かぶおんぼろハウスボートで生活することになるのです。誠にどっかで見たことのあるような舞台装置であり、徐々に子供たちに慕われていくストーリーは、「サウンドオブミュージック」、「潮風のいたずら」など、王道の物語です。(それにしても、なんか、前に見た記憶があるような・・・。)

 ケイリー・グラントは、いつもながらのいでたちで、さまざまなギャグをお洒落にこなします。しかし、このとき何歳なのでしょうか、目と目、鼻と鼻のラブシーンも見事です。いまどきのベッドシーンより随分心が癒されます。
 ソフィア・ローレンは、もともと好みではないせいか、今回は、やっぱり体格が立派だなあと気遅れしたものの、切れ上がった二重(?)の目がなんとも魅力的です。ただ、やけに、色の濃いお化粧は何故なのでしょう。イタリア人らしくメイクしているのでしょうか?

 とにかく、安心して楽しめる作品です。世知辛い世相を110分間だけ忘れて、小粋なギャグや長閑なユーモアを笑い、お約束のハッピーエンドを心ゆくまで噛みしめてください。そんな古き良き時代のハッピーな作品です。 

  

 

2013年12月12日 (木)

パシフィック・リム その後

Img  贔屓の「パシフィック・リム」は、どうやらアメリカと日本の興行成績はあまり良くなかったらしいが、中国で大ヒットを飛ばし、世界的には4億ドルという一定の成績を売り上げたようです。
 現在、デルトロ監督が、続編の執筆に取り掛かったようですが、まだ、正式な決定ではない模様です。あとは、多分、本日発売のDVDやらブルーレイの売り上げ次第なのでしょう。みんなで買って続編を見ましょう(笑)。

 さて、この映画、早速居間でDVDを見直してみると、劇場の大画面より、ロボットと怪獣の戦いシーンなどははっきり見えます。どうやら、TVサイズの小さい画面の方が良く似合います。
 そして、やっぱり、怪獣のデザインがダサい。ウルトラマン後期のお子さま用怪獣をメキシコ風にアレンジしたようです。日本で当たらないわけです。それに、夜間のシーンが多すぎて見難いぞ。次作は、その辺を改良してほしいものです。

 ところで、知人から紹介された、話題の予告篇をどうぞ。懐かしの東宝特撮映画風です。この製作者のセンスと熱意に心から敬意を表します。

http://www.youtube.com/watch?v=y3Qygyy4204

 そして、予告編といえば、新作のハリウッド・ゴジラの予告映像が開禁になっています。雲の間から多数のパラシュート部隊が降下している絵に絶句。まるで神話の世界のようなビジュアルです。そしてその落下地点には、霧の中でうごめく巨大な背びれの影が見えます。あの独特の咆哮も響いてきました。公開は、来年の7月とか。期待が膨らみます。

http://www.godzilla-movie.jp

それにしても、こんな情報がインターネットで直ぐに手に入る、便利な世の中になったものです。ありがたいことです。

2013年12月10日 (火)

上田秀人 奥右筆秘帳

Img  今一番のお気に入りの時代小説の作者が上田秀人です。
 「この文庫書下ろし時代小説が凄い!」の第一位に輝いた「奥祐筆秘帳」シリーズを知って以来、贔屓にしています。
 佐伯泰英の「居眠り磐音江戸草紙」などに比べると、徳川幕府の権力闘争がテーマであり、虚実織り交ぜながら、上様(上司)への応対、出世の有り様など現代に通じるなかなかシビアな人間関係を鋭く描いております。

 この物語は、主人公である奥右筆組頭の立花併右衛門が、幕府の特定秘密(笑)に触れたため、謎の御前から命を狙われる羽目になり、もう一人の主人公、隣家の厄介叔父(長男の当主に跡継ぎができた家の次男のこと)である柊衛吾を、婿養子先の斡旋を餌にして、護衛役に雇うところから始まります。
 シリーズの当初は、己のお家が一番大事という能吏の併右衛門の人物像に違和感や抵抗感がありました。なにしろ、この人物は、自分の家を守るためには、徹底的、合理的に、非情にもなって、何にも容赦しない鉄の意思を持つ人なのですから、あまり共感も出来ません。
 ところが、冥府防人というふざけた名前を持った凄腕の刺客が登場し、そのあまりの腕の差から死の恐怖におびえる衛吾を気丈に支える併右衛門の一人娘瑞紀との関係が、幼馴染から大人の恋に進展するにつれ、物語は俄然精彩を放ってきます。
 やはり、可愛くて芯が強く、ジブリの鈴木プロデューサーが言うところの宮崎駿が描く「都合のいい女」が必要です。多分、現実にはいない、男どもの共通する勝手な夢なのです。

 加えて、将軍父子の骨肉の争いを軸に、神君家康公が生み出した禁忌を巡って、老中たちの権力闘争、お庭番や伊賀者の暗躍、朝廷の意を受けた寛永寺の襲撃などの話が壮絶な殺陣の描写とともに展開します。
 その戦いの恐怖と混乱の中で、上役の言葉や行動の裏を見抜きながら、地位を守り、功を重ねていく併右衛門の生き様や台詞が、現代のサラリーマンの世界に通じる警句や行動規範となって胸を撃ちます。著者は、自営業の歯科医であり、宮仕えを経験されていないはずなのに、組織というものの本質を見事に捉えています。このあたりが、家族のために頑張っているサラリーマン諸氏の共感を生み、人気第一位となった理由でしょう。

 さらに、主人公二人が様々な暗闘を生き抜いていく内に、未熟だった衛吾が、剣術の腕も人間も大きく成長していきます。このあたりも好ましい所以でもあります。
 ちなみに、佐伯泰英の「居眠りさま」シリーズも、初期の頃は、こうした成長譚の魅力が沢山ありましたが、いまやすっかりスーパーマン化し、定型化してしまいました。シリーズも長すぎ、他の作品の主人公たちも・・・ファンだけに残念です。
Img_0001  ちなみに、この奥右筆秘帳は、わずか12巻で完結しました。逆に、著者が無理に早く終わらせたような気がします。読者とすれば、もう少し続けて欲しかったし、最後の決闘も違う形にしてほしかったナ。
 それにしても、子沢山のオットセイ将軍の家斉が名君だったとか、衛吾の剣の師匠のおおらかな優しさも忘れられません。

 まあ、新作の「百万石の留守居役」に期待しましょう。第1巻から魅力ある勝気な姫君が主人公の婚約者として登場しています。もう、定番中の定番のうれしい設定ですので、今後が楽しみです。

 旧作からも、「将軍家見聞役 元八郎」全6巻もご覧ください。登場人物、元お庭番の女房殿、剣の師匠の飄々とした老坊主、絶世の美女の黄泉の醜女などは忘れらません。是非、映画化もして欲しいものです。

 未読の方は、騙されたと思ってお読みください(笑)。 

2013年12月 8日 (日)

東京バンドワゴン

Img_2  ただいま、放映されているテレビドラマ「東京バンドワゴン」を偶然見て、あまりの設定の面白さに、原作の小説にハマってしまいました。
 ドラマ自体は、視聴率は二桁には足りてはいない状況のようですが、小説は、そのドラマ化記念の帯をみると、シリーズ化され、既に7巻までで100万部を売り上げているようです。

 内容は、東京の下町にある「東京バンドワゴン」という由緒ある古本屋のファミリーのお話です。書店の命名の由来は書いてありますが、残念ながら、その意味はまだ不明です(笑)。
 しかも、この古本屋は実は只の本屋ではなく、明治の開業の時代から波乱万丈の歴史を抱えており、そうした歴史がシリーズの中で徐々明らかにされていきます。
 とはいっても、今は現代、三代目の頑固爺と、その息子と、3人の孫家族の物語です。一見普通の家族ですが、実は、そのドラ息子は、伝説のロックンローラーといわれている往年の歌手であり、その3人の子供はそれぞれ、シングルマザーの長女とその娘、そして親から勘当された元キャビンアテンダントの妻を持つ長男、そして謎の愛人の子といわれる次男、そして押しかけ恋人の登場など、ワケありながら、次々とユーモアと人情に満ちた様々なお話が綴られます。
 しかも、狂言回しが死んだ婆ちゃんの幽霊という設定も笑いますし、各エピソードがなんとも言えず、奇抜ながら軽妙な味があります。さらに、登場人物も、伝説のロッカーどころか、日本を代表する女優、六本木ヒルズ族、元貴族などの大物がさらりと紛れ込んできます。
 小路幸也という作者の絶妙な筆さばきに舌を巻きます。是非、お読みください。 

 テレビドラマも、何故視聴率が悪いのか分からないほど面白いとおもいますし、ともかく「わん子チャン」以来、贔屓の多部未華子ちゃんも出演しているので、是非、機会があれば見てください。よろしく。Img_0001_2 Img_0002_2 Img_0003

2013年12月 7日 (土)

47RONIN 

Img_0001  映画「47RONIN」は、フォーティーセブン・ローニンと読みます。当たり前ですが、日本公開の映画の題名としては、せめて日本語で表記してほしいものです。

 まず、この作品を観るにあたっては、大事な心構えが必要です。忠臣蔵を題材にしているとか、いやそれどころか、日本を舞台にしているとか、江戸時代の出来事とか、そういう意識をすべて捨て去ることが肝要です。
 ここが何処か、いつかも分からない、全くのファンタジーの世界、日本時代劇のパラレルワールドの物語なのです。例え、浅野家や吉良家、大石とか綱吉などと、聞き覚えのある歴史的な由緒ある名前が出てきても、全くの空似なのです。ゆめゆめ惑わされることのないように、おおらかな気持ちを保ってください。
 幸い、私は、この映画の封切日が、一月間に及ぶTOHOシネマのフリーパス券の有効期間最後の日に当たり、無料で見ることが出来ました(9本目)ので、誠に平常心で鑑賞できました。

 さて、そういう前提で、つらつらこの映画を眺めるに、いかに欧米人が日本に対する誤解と空想を抱いているのかが良く分かります。
 もう、17~18世紀のジパングに対する意識とそんなに変わりません。いや、最近は世界に冠たるマンガのおかげで、さらにファンタスティックな妄想が増しているのかもしれません。それゆえに、この映画の製作者は、こういった、欧米人から見た東洋趣味のごった煮映画をつくるのでしょう。
 まあ、欧米から見た日本の姿を勉強するには、とてもよい資料になります。中国の切り立った山河、ごてごての宮殿、原色の衣装などなど、以前どこかでに見たことがありますが、諸外国の教科書に出てくる誤った日本そのものなのです。いや、これが、まさに、欧米人が求めてやまない日本なのかもしれません。目のつり上がった中華系の女優さんが日本人の役で出演し、アメリカのテレビドラマで人気が出るのと同じ理屈ですヨ。多分、向こうの人達のイメージどおりなのでしょう。

 しかし、この映画は、そうした外見?に惑わされず、純粋にファンタジー映画としてみた場合、なかなか面白い箇所もあります。
 伝説の麒麟の姿をデフォルメし、馬を猪に変えたような怪獣。その色合いは好感が持てます。そして、主人公に術を教えた天狗の造型には一番感心しました。多分、すべての格闘技の源流であるインドの坊さんの姿をしているのですが、鷹の目をもつ突然変異の人間として描いています。いいじゃないですか、混血も含めて、異形の者への差別と迫害を鋭く告発しています(笑)。出島に居る巨人の造型もイイ。いわば、白人を見た日本人が思う鬼の姿ですよね。
 さらに、菊地凛子が演じた女妖。最近様々な映画で描かれた魔女の中でも出色の出来です。左右色ちがいの眼を持っており、変身した白狐も、長い髪を触手のように動かす「怪物くん」の怪物姫、着物を蛇のようにくねらす姿などは、本当に素晴らしいモンスターぶりです。ラストの東洋の龍の姿のなんと迫力のあったことか。ディズニーの「眠れる森の美女」を髣髴させます。この女優さん、「パシフィック・リム」から見直しておりましたが、いよいよ贔屓にしたいと思いますゾ。
 加えて、吉良を演じた浅野忠信もなかなか悪役が似合います。やはりハリウッドに進出する俳優はどこか吹っ切れています。

Img_0002  そのほかの見所といえば、討ち入り後のアクションです。日本刀の殺陣は見ごたえがあります。あれで鎧のデザインがマトモならうれしかったのですが、ともかく、衣装にはすべて目をつぶってください(笑)。
 殺陣を指導したのは、われらの真田広之だそうですが、日本の「侍」を狭量で自分勝手な人間像に描くような演出には、日本人として毅然とした態度を示してほしいものです。どいつもこいつも侍の恥さらしのような46人(キアヌ・リーブスを除いた数)でした。そういえば、「ウルヴァリンSAMURAI」も、ほとんどヤクザと同じ扱いで残念でした。日本刀を持っただけで侍になれるわけがない。

 それにしても、トム・クルーズもそうでしたが、キアヌ・リーブスも同じです。結局、欧米人は、一度は侍になってみたいのでしょうね。しかも、今回は、なぜか切腹もしたかった、・・・というところが、このハリウッド映画の意義なのでしょう(笑)。それが欧米の観客のニーズでもあるのですから。
 もっとも、この映画は、どうやら、あちらでも、藏之助の討入りならず、お蔵入りしていたようですが、さもありなん。合掌。Img
 

  

2013年12月 4日 (水)

かぐや姫の物語

Img  「かぐや姫の物語」があまりに評判が良いので、観てきました。
 正直言って、水彩画のような絵柄が好みではなかったのですが、日本最古の物語「竹取物語」がどのようなストーリーに再構成されているのか、興味もありました。

 観終わってみれば、冒頭の自然の虫や花の描写から馴染めませんでしたし、かぐや姫の顔の描き方にやはり違和感があります。場面ごとに全然顔が違うようですし、第一、名前のような絶世の美女とは到底思えません。
 それに、顎の帝や白目の神仏の造型には、なにかしら不快感さえ感じました。それが良いのかな?

 なにより、罪と罰と謳った物語が、竹取物語と同じです。そのまんま・・・。うん??

 何故、こんなに評判が良いのか、全くわかりません。

 ・・・以上です。

 

2013年12月 1日 (日)

伊勢エビ

 あるお祝いの会で、獲れたてのイセエビをいただきました。それも、一般的にスーパーで売られているようなシロモノではなく、獲れたばかりの超大物です。写真をごらんください。普通は、持込などは絶対受付けない有名な割烹の料理人が、あまりの素材の良さに特別に料理してくださいました。
H251129_0011  そうです。この大きさ、色の濃さ、見事な包丁さばき。味ももちろん、絶品です。これまで食べたことのないような美味しさでした。本当のイセエビは、やっぱりエビの王様ですネ。
 H251129_0081 そして、もちろん、鍋も最高です。お汁の味付けも素晴らしい。加えて、イセエビのてんぷらです。映画「南極料理人」では、イセエビのエビフライの味が微妙という情景がありましたが、それは多分冷凍物だったせいでしょう。・・・もう言葉がありません。H251129_0201

 さらに、沿岸物のカツオもいただきました。大物です。こんな大きなカツオはあまり口に入りません。しかも、身を割って見ると、これはもう極上です。お~美味しい、としか言えません。土佐風の塩たたきも、料理人の腕前もあって、もう見事です。至福のときでした。H251129_0051

 あんまり美味しかったし、もうこんな僥倖はないとおもいます(笑)ので、記念のブログにしました。

レッド リターンズ

Img_0001  SPECの口直しに、期待の「RED リターンズ」を早速観てきました。前作がなかなか面白く、それも、劇場で初見したときよりも、居間でDVDを再見した方がより面白かったなあ。このことが良いのかどうかは、よくわかりませんが(笑)。

 さて、今回は、ゲストも増えて、主人公のフランクの元恋人でロシアの女スパイに、キャサリン・セダ=ジョーンズが扮します。再会の際に、恋人の前で交わされた濃厚なキッスに、フランクが照れ笑いをする、ブルース・ウイルスの演技が一番の見所です。しかし、彼女も随分ふけました。思えば、ショーン・コネリーとの共演のときが花でしたか。

 また、最近躍進中のイ・ビョンホンが世界一の殺し屋役で登場です。フランクの暗殺を請け負う敵役ですが、無駄に大暴れした挙句、最後は味方になる儲け役です。ハリウッド映画の中では今までで一番良い役ですねえ。しかも、お約束の肉体美を見せるシーンもきっちり用意されています。あれは世のご婦人方の眼の保養になるでしょうネ。CG製に見えるぐらい鍛えている。
 そして、もっとも見せ場が多いのが、ヘレン・ミレンの女スパイナーです。登場シーンから、豪華な衣装をまとっての死体の処理の場面です。それ以降も、どんぱち撃ちまくりの大活躍です。仲間のアクションが冴えない中で、一人頑張ります。お見事です。

 最後は、アンソニー・ホプキンスです。頭の狂った天才科学者の役であり、楽しげに演技していますが、もうひとつハンニバル・レクターにはなっていませんでした(笑)。

 映画全体を総括すれば、ジョン・マルjコビッチの前作のようなエキセントリックな活躍も乏しく、ブルース・ウイルスのここぞと言うときの凄みもなく、普通の出来でした。それに、最後のアレはないよ~。そんな細工の暇はなかったはずです。あまりのご都合主義にホプキンスもあきれますよねえ。
 DVDが発売されたら、もう一度しっかり見直しましょう(笑)。

スペック 結 爻ノ篇

Img  劇場版「スペック 結 爻ノ篇」を観ました。「結」という完結篇の後編であり、まさに、テレビドラマから映画に続いた、最後の締めの作品です。結構、期待も込めて初日に観たのですが、どうも何とも評価のしようがないなあ、と感じています。

 第一、タイトルの意味が分かりません。辞書で調べると、「」とは、易の卦の横の画の意味だそうですが、どういうことなのでしょう。なお、読み方は、お見込みのとおり「こう」と読みます。念のため。

 見せ場は、ほとんど警視庁の円形の屋上の上で行われます。この結の前編から突如、登場した、向井理扮する白い天使のセカイ、しゃっくりの女相棒、謎のドクターJ、そして翼を持つ黒い使徒、さらには、セカイの兄貴らしい能面をつけた卑弥呼。
 観終わった後でも、こいつらの正体が分かりません。地球全体がガイアという生命体であり、その生命体と意志を通じている先人類がセカイ達であり、しかも、既に肉体を失い、精霊となっているらしい。その先人類が、現人類を一旦滅ぼそうとしたのが今回の顛末のようです。ようですというのは、良く分からないから(笑)。
 しかも、その人類殲滅作戦は、神の怒りの鉄槌ではなく、人類同士を戦わせ、水爆で自滅を誘おうという、非常に人間臭いものであります(笑)。また、その間、2億年程度は、先人類=ヤタガラス又は八百万神たちも、主人公の当麻をよりしろにその体に一時避難するというのですから、ワケ分かりません。
 しかも、主人公(当麻)の口に無数のカラスが身体に入る映像が延々と続きます。そのイメージは、いかにも安価な日本製のCG技術とあいまって、途方もなく脱力します。
 そして、ラストは、冥界が登場するとともに、すべてをま~るく収めるパラレルワールドの出現です。めでたくリセットしました。浮遊体も登場し、わけのわからん極みの大団円です。言葉もありません。
 あえて言えば、なぜか記憶を失わなかった瀬文には厳しい現実になります。加えて、前編に登場する荒廃した首都を背景に、みやびちゃんが手紙を読んでいたシーンと時間的に矛盾するのではないかなあ。あんな昼間になる時間的な余裕はない筈。

 ともあれ、この映画は、テレビに登場した様々なスペックホルダー達が、仮面ライダーか、なんとか戦隊のように一堂に顔を見せます。露骨なファンサービスですネ。
 また、Jやら「湯田」の名前トリックは楽屋落ちのようで何の面白さもありません。それより卑弥呼の役者に驚きです。ほんとに最近は、吹き替えばかりが有名になりました。

 最後に、インスタントな大風呂敷は、心配したとおり、やっぱり畳めませんでしたネ。第一、前後篇にわける必要はありませんでした。お疲れ様でした。 

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