永遠の0
映画「永遠の0」は、監督が山崎貴だけあって、ゼロ戦と艦船の戦闘シーンが誠にリアルで、かって無いほどの迫真性と臨場感は申し分ありません。ゼロ戦の飛行映像は想定内でしたが、日本の空母赤城の威容が圧巻です。喫水線からの甲板までの見上げるような映像は、これまで見たことも無かった姿であり、このシーンの映像だけで、この映画を見た価値があったとも思えます。
聞けば、空母のCGモデルにフェリーのサンフラワーの航跡の実際の映像を組み合わせているとか。いやあ、この映画で、プールに模型を浮かべて撮影していた円谷特撮は、本当に過去の遺物になったと改めて実感せざるを得ません。
しかも、こうした飛行機や戦艦のCGモデルの制作には、既に様々なデータを保有している人達(やっぱり好きな人が居るんだ!!)の協力を得たほか、空戦アニメーションの専門家(こんな人も居るんだ!!)を使って、より実際の空中戦に近い映像に作り上げたということですから、山崎監督の並々ならぬVFXへのこだわりを感じます。真珠湾攻撃もお見事でした。
さて、お話の方は、現在の主人公が、自分の本当の祖父だった「海軍一の臆病者」と言われた凄腕の戦闘機乗りの本当の姿を求め、生き残りの戦友達を訪ね歩くものです。
その中で、軍隊の異様さ、特攻隊の理不尽さ、作戦の無能さなどを炙り出していくのですが、この祖父の人物設定は、やっぱり利己主義と感じますし、「人間の條件」の主人公梶のように、当時の軍国主義時代の中では一日たりとも生けていけないような理想主義者でもあります。少し、CGに比べてリアリティがなく、違和感が拭えません。
また、筋立てにも、意外なオチを用意してありますが、それ以上に、当時の軍の作戦本部の無能さ、非人間さを浮き彫りにします。この辺は実に共感するのですが、その一方で、何故か主人公に、特攻隊と自爆テロとのちがいを声高に言わせるシーンなど、すこし首を捻るシーンもあります。
加えて、最後の祖母の戦後のエピソードの告白は本当に余計な付けたしです。あれこそ蛇足というべきものですなあ。
全体とすれば、赤城の航行シーンを筆頭に、O戦の飛行や戦艦との戦闘シーンなどは一見の価値がありますし、「戦争に行った人間は、皆様々な体験を抱えている、しかし、それを胸に秘めて暮らしている。」というくだりには心を動かされます。かつての東宝戦記物より構成はうまいと思いますので、是非、ご覧ください。
この映画が、平成25年の最後の劇場鑑賞になりました。来年が平和で明るい年であることをお祈りしましょう。
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