マン・オブ・スティール
「マン・オブ・スティール」、その名のとおり、米国の誇る鋼鉄の男が、同等の力を持った敵とガチバトルを行うと、地球が壊れるぐらいの惨状になる。その戦いを最新のCGと凄まじい物量を持って徹底的に描いた映画でした。例えて言えば、漫画の世界だった悟空とフリーザの戦いを実写で描くとこうなるんだ、というような驚きがあります。次々と摩天楼が崩壊するシーンなど、まさに圧巻でした。
正直、「パシフィック・リム」では勝てません。もちろん「アベンジャー」などめでもありません。圧倒的な映像と目が眩むようなスピード感に打ちのめされます。
原作は、クリストファー・リーブ主演の映画「スーパーマン」と「スーパーマン2」を踏襲しています。ただ、リメイクと言うより、流行言葉で言うとリボーン、まさしく進化しているのです。
しかしスーパーマンとしては、今回の主演の俳優さんより、やはりクリストファー・リーブが適役です。なんとなく、今回の俳優さんは悪役顔(すみません)で、笑うとよけい腹に一物ありそうな雰囲気がありますので、私たちの世代の正義の人のイメージではありません。もっとも、今の悩めるアメリカの風潮が求める人物像かもしれませんが(笑)。
加えて、敵役のゾッド将軍も、旧作でテレンス・スタンプが演じたキャラクターが忘れられません。わずかな時間で世界を征服してしまってつまらないと言ったようなあの表情が秀逸です。新作では、顔の怖さと体のでかさだけ、と言ったら失礼かな。
ただ、今回のロイス・レインは良かった。ご贔屓のエイミー・アダムスが演じており、やっとヒーロー映画に美人が登場したと喜んだ次第です。
さらに言えば、旧作の「スーパーマン2」では、CGのない時代に、今回の戦いをけっこうリアルに描いており、その特撮技術の限界はあるものの、原型パターンはすべて揃っています。
というわけで、スーパーマン映画としては、旧作の価値はいささかも失われてはいません。特に、あのサラ・ダグラス扮する女悪役も好きです(笑)。ちなみに、今回の同じ役(ゾッド将軍の副官)については、よく似たイメージの女優さんが演じていますし、西部劇のような田舎町に三悪人が登場するシーンにもオマージュが感じられまして、今回の製作陣には好感は抱いております。
結論としていえば、これは、超人スーパーマンの映画と言うよりは、故郷の惑星から地球に逃げて隠れ住んだある宇宙人の成長物語と、地球を襲う宇宙人の侵略のお話なのです。スーパーマンのキャラクターを使ったばかりに、ややこしくなります。.かつて、ローランド・エメリッヒ監督が、レイ・ハリーハウゼンの「原子怪獣現る」をリメイクするに「ゴジラ」の名を使った(本人が公言したとの噂)ように、ファンに反発と混乱を招きます。
話が脇にそれましたが、今回も、冒頭のクリプトン星のイメージが私にはどうしても馴染めません。クリプトン星と言えば、旧作のマーロン・ブランドの居る光の惑星のイメージが刷り込まれているのですが、今回は、鎧を纏った騎士や元老院という、ローマ帝国、いや、中世のような文明世界として描き、メカニックは、もう「エイリアン」の世界です。しかも、人が乗る巨大昆虫のような爬虫類も登場しますし、ラッセル・クロウまで居るのです(笑)。
多分に、この設定は、スーパーマンのマント姿の理屈をつけようとしたためと推測しています。ローマ時代などでは鎧とマントは必需品であり、違和感はありません。しかも、あの服は鎧の下に着る下着だったのです。下着姿で活躍していたのです。また、Sマークは、当然、アルファベット文字のSに似た、紋章(家紋?)だったという設定です。無駄な理屈付けですよね・・。ただ、彩度を落とした色合いには納得です。
些少な瑕疵をあげつらいましたが、一方で、二人の戦いのほか、ゾッド将軍達が地球に侵略してくるシーンなども圧巻です。巨大な宇宙船はもちろん、小型戦闘艇ではじめて人類の前に登場するシーンなど、「マーズ・アタック」と比較するのも変ですが、私のツボをしっかり抑えられ、随喜の涙が出るほど感動しましたゾ。
では、スーパーマンの映画ではなく、悪者宇宙人の侵略に際して立ち向かった一人の宇宙人のお話としてご理解いただき、その圧倒的な戦闘シーンと破壊される町並みなどの映像をお楽しみください。何度も言いますが、圧巻です。
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