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2013年6月 1日 (土)

オブリビオン

Img  トム・クルーズ主演の「オブリビオン」は、一言で言うと、白いイメージで統一されたスタイリッシュで、賢いSF映画です。
 白いという印象は、クルーズの服装や兵器の色がグレー系に統一されているだけでなく、ほとんど全編が、地の果てまで見通せるような明るい昼間が舞台となっているからです。しかも、地球は、エイリアンの攻撃で、月が破壊され、人類が宇宙に脱出した後の話という設定なので、かつての摩天楼までもが土に埋まった荒野が果てしなく広がっており、その頭上には、半壊した白い月が浮かんでいます。破壊された地球の荒廃のさまを象徴する見事な映像です。

 人類は放射能で荒廃した地球を捨て、土星の衛星に移住する計画を進行中であり、そのため、貴重な淡水をくみ上げる巨大なプラントを建設し、地球に残ったエイリアンの敗残兵から護るため、地球を周回している宇宙基地「テット」の監視の元に、地上千メートルに設置された駐在基地スカイタワーにたった二人の男女の駐在員が居住し、無人の攻撃兵器「ドローン」などのメンテナンスを行っているという設定です。

 クルーズは、その男性の駐在員役であり、もっぱら、一人で「バブルシップ」という飛行マシンに乗って見回っているのですが、この「バブルシップ」のデザインが、なんとも斬新でスタイリッシュなのです。透明な球体の操縦席と2つの推進エンジンの球体をつなげた、トンボを想起させる、いや、ツノゼミの仲間にこんな頭があったような気がしますが、ともかく、その昆虫のような姿は、機能美の粋と言っても良いぐらい、なんとも素晴らしい。この機体とその華麗な動きを見るだけでも、この映画を一見する価値はあります。
 さらに、無人の攻撃機「ドローン」のデザインも秀逸です。同じく、球体ながら、その達磨のような表情は、いざとなれば、怒りの表情にも見えます。これは、かつての「ロボコップ」に登場した傑作ロボット「ED-206」にも匹敵する秀逸な攻撃マシーンです。モデルキットが発売されないかなあ、期待しています。(そういえば、この監督の作品である新「トロン」のデザインも良かった。)

 最後に、この映画が賢いという理由は、まず、そのストーリーです。予告編の思わせぶりの演出から、なにか、どんでん返しがあるだろうという気がしていましたが、それがもう既に、監督の術策に嵌っていたのかもしれません。ともかく、同僚の女隊員との日常生活ぶりから、スリルとサスペンスを感じ、どきどきハラハラするのです。
 そして、クルーズの夢の中の女が、現実に、墜落した宇宙船から、「スリープポッド」で眠ったまま救助されたときから、物語は大きく展開します。信じていた世界が大きく変貌するのです。かなり考え抜かれたお話です。
 しかし、頭が良いというのは、それだけではありません、結局、登場人物は、この3人がメインで、あとはわずかに、なんでも出演する名優モーガン・フリーマン以外はその他大勢の役者だからです。SFの大作といってもよいのに、誠に効率の良い映画の作り方です。・・・頭が良い、賢い映画の製作方法です(笑)。

 ともあれ、大変楽しめました。後味も悪くありません。弱点は、意外に地球外生命体の最後があっけなかったぐらいですか?未見の方は、是非ご覧ください。

 ところで、「オブリビオン」というのはどういう意味があるのでしょうか。忘却? どなたか、お教えください。最近は、本当に、題名にカタカナが多くて困ります。

 

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