傑作SF映画選
「傑作SF映画選」というシリーズ名で、かつての1950年代のB級SF映画が次々とDVD化されています。誠に喜ばしい限りです。これまでも、ユニークなデザインの金星ガニだけが有名な「金星人、地球を襲撃」などが発売され、その都度、ご紹介してきました。
今回、1957年の「極地からの怪物 大カマキリの脅威」という映画が初めてDVD化されました。この映画は、北極海に眠っていた大カマキリが、なぜか地球の反対側の南極の異常で復活し、人々を襲うという、典型的なB級SF映画です。実は、これまで、わが国では劇場公開も、ビデオ化も、LD化もされていなかった幻の作品なのです。発売会社のご英断を高く評するものです。
というのも、かつて、名編集者だった大伴昌司氏のキネマ旬報のSF映画の特集号などに、この映画の1シーンの写真がよく掲載されていたのです。高速道路のトンネル内で、衝突した多数の車の向こうに、大きなカマキリの頭部が横たわっているのです。つまり、退治された後のシーンなのです。モノクロのなかなかインパクトのある風景写真です。その時は、わが国の怪獣映画とは、一味違う凄い映画と思い込みました。しかし、それは、1枚の写真に騙された、とんでもない誤解でした。それを、今回、改めて痛切に感じました。アメリカB級映画お得意の、軍隊の実写映像を組み合わせ、不鮮明なシロクロ画面の中で、コマ送りのぎごちないカマキリが動く映画だったのです。いまさらながら、当時の円谷特撮は、世界最高水準だったと確信します。
さて、この「傑作SF映画選」シリーズのDVDの冒頭には、次のようなで文章で始まる意気込みが記載されています。「本作は、後世に残すべき文化財の普及を目的として製作致しました。・・・」と。その心意気やよし。これからもどんどん期待しましょう。事実、さまざまなB級、C級の作品が発売されていますので、私としても、今後、一層応援したいと思います。
ちなみに、今回は、ダンボール箱でできたようなロボットが登場する「ロボット大襲来」や、張りぼての宇宙人が登場する「惑星Xから来た男」や「クロノス」などが、バーゲンセールになっていたので、思い切って購入しました。いくら1作1500円とはいえ、鑑賞後の悲哀と悔恨、置き場所の確保などの観点からいうと、割安になったらB級映画の歴史を知る上で買ってもよい程度の作品が多くて、実は、様子見ながらの、作品の普及運動の応援なのです。あしからず(笑)。歴史の真実は、苦いものです。
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