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2013年4月21日 (日)

舟を編む

 話題の映画「舟を編む」は、本屋大賞を獲った作品を映画化したものです。この作品の面白さは、やはり、原作の魅力によるものでしょう。映画化に際しては、小説をいかに観客にリアルに見せられるかという点につきます。お話自体は、新しい辞書を作るという出版社の社員の悪戦苦闘を描いたものです。なにせ、辞書作りは十数年にも及ぶ長期戦です。正直、よくぞ、こんな話を小説化したものと思う一方、この作品に、本が好きで本屋さんなどに勤めている人たちが大賞の選考に一票投じたのも頷けます。

 さて、映画としての見所は、やはり映像としての見せ方ですが、マジメ君の夢に出てくる言葉の海に沈むシーンなどは、原作の文章表現をそのまま、なんの工夫もせずに映像化したような誠に陳腐な出来でしたが、大衆居酒屋の歓迎会や辞書作りのアナログ手法などの描写をはじめ、マジメ君が住む古びた下宿屋のセット?はリアルで、その丁寧な作りこみは共感しました。あの下宿の膨大な蔵書のある部屋はうらやましく、もあります。
 しかしながら、なにより重要なことは風変わりな登場人物たちの人物造型です。原作の魅力のひとつであろう、松田龍平演じるもう変人と言ってよい、主人公の「マジメ」くんの描写です。出版業界に居て、無口で内気で営業などまるで出来ない、最初は見ているだけでいらいらするのですが、あおいチャンが演じる「かぐや」さんの登場あたりから、共感してきます。出世とか、金儲けとか、俗世間からまったく別の世界に住んでいる人たちを暖かく見守る、いや、類は友を呼ぶのでしょうか、辞書編集室の人たちを通じて、こうした生き様が素晴らしいと、さまざまなエピソードを交えて静かに語りかけます。

 映画は、主人公のマジメ君の生活と地道な辞書作りを描きながら静かに進みます。かぐやさんの登場シーンは、満月を背景に限りなく美しい。マジメ君が恋に落ちるのも当然です。しかも、恋の天才、寅さん(本物の猫ですが・・)もいるし、マドンナの叔母である大家さんの陰ながらの支援、同僚たちの優しいまなざしも心温まります。職場ぐるみであおいチャンを偵察に行く話や筆書きの封書式のラブレターのエピソードは最高です。思わず声を出して笑いました。会社のお局様も良い!!
 今はなき、美しい人間関係です。何事にも穏やかな加藤剛の元大学教授(多分)、その妻の八千草薫、一見ちゃらんぽらんな、「ダサイ」オダギリジョーも良い味を出しています。それにしても、八千草薫さんは、もう一昔前の「うちのホンカン」の時とあんまり変わらない凄さです。そして、あおいチャンも今までで一番良かったなあ。「天地明察」などいつも懐の深く、やさしい、男どもの理想の妻役を演じているような気がしますが、ラストシーンの「ミッチャンて、やっぱり面白い。」の台詞はなかなか効いています。

 最後に、辞書作りの大変さを世の中に知らしめた功績も大きいし、それに生涯をかけて従事する人達に感謝の意を捧げます。でも今では、コンピュータの活用で、もう少し作業は楽になっているのでしょうね、きっと。・・・原作の小説を読みたくなりました。 

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» 『舟を編む』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「舟を編む」 □監督 石井裕也□脚本 渡辺謙作□原作 三浦しをん□キャスト 松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、小林 薫、加藤 剛、       渡辺美佐子、黒木華、池脇千鶴、鶴見辰吾、伊佐山ひろ子、八千草 薫■鑑賞日 4月13日...... [続きを読む]

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