無料ブログはココログ

« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »

2013年3月31日 (日)

ジャックと天空の巨人

Img_0001 「ジャックと天空の巨人」は、ご存知、「ジャックと豆の木」を映画したものです。映画自体は、まさに予想とおりに御伽噺を最新のCG技術、3D手法を駆使したファンタジー映画です。「アリス」以降、御伽噺の映画化がブームです。白雪姫などは何作ものスノーホワイトが乱立する有様です。

 さて、この映画は、子供向けのストーリーを絵に描いたような作品です。平民のジャックが巨人を倒してめでたくお姫様と結ばれるという、ただそれだけの今時驚くような、毒のない、捻りのないお話なのです。映像も、CGは良く出来ている?のですが、全体に作り物感が強く、キレイ過ぎる映像もあってか、何の感動もありません。例えて言えば、かつての東映時代劇のように、街道を洗濯したばかりのような着物を身にまとって闊歩する右太衛門や錦之助のような感じなのです。巨人も単におできなどで肌を汚くすることがリアルさを生むものではありません。「ロード・オブ・ザ・リング」の格調ある映像との比較をすれば一目瞭然です。

 ただ、この馬鹿馬鹿しい映画に、大物俳優がたくさん出演しているのが驚きです。主演の若手二人はともかく、悪の側近に、「プラダを着た悪魔」や「ハンガー・ゲーム」のスタンリー・トゥッチ。太ったのか、特殊メイクなのか、わかりませんが、気がつくのに時間がかかりました。そして忠臣の騎士にユアン・マクレガー。王様にイアン・マクシェーン。この人、カリブの海賊役で名を売りました。最後に、双頭の巨人の王役に、私のお気に入りのビル・ナイ。カリブの海賊のタコの顔を持つ怪物役に引き続き、まったく素顔がわかりません。こんな役ばかりで、あんたも好きねえ、と言わざるを得ませんが、私も好きです(笑)。

 この作品関係では、上の写真のパンフレットが本編の映画より数段面白かった。原作の「ジャックと豆の木」は、本来、豆の木ではなく、「ジャックと豆のつる」と訳すべき、ということから、イギリスの一般的な呼び名であるジャックという庶民が、騙されて豆粒を買わされ、天まで届いた豆のつるを登っていって、巨人の家から、三度、お宝を盗み出します。その挙句、追いかけてきた巨人を、豆のつるを切って転落死させ、その後、その盗んだお宝で幸せに暮らすという、どうも道徳的にいかがなものか、というお話であることなどを、他の巨人伝説を含めて言及しているほか、それらがいかに映画化にあたっての改変や設定に活かされているか、などを数多く指摘しています。・・・こんな解説が面白い。大衆文学の歴史と映画製作の裏話が楽しめる力作のパンフレットです。映画は見なくても、一度、700円のパンフだけはご覧ください。・・これは香具師の口上に近い、ほめ殺しかもしれません(笑)。

2013年3月17日 (日)

フライト

Img  久しぶりの実写映画を撮ったロバート・ゼメキス監督の作品です。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「フォレスト・ガンプ」、「コンタクト」などお気に入りの監督さんです。
 最近は、実写とアニメとの融合などの道ならぬ道に入り込んでしまい、パフォーマンス・キャプチャー技術の結晶というべき「ベアウルフ」もありましたが、作品的にはあんまりその能力を発揮していなかったような気がします。

 その監督が久しぶりに実写映画の世界に帰ってきました。しかも、ハズレのないデンゼル・ワシントンと組むというから期待が膨らみました。

 さて、物語は、ワシントン扮するアル中の機長が、奇跡のような操縦技術を駆使して、機体の故障で急降下する航空機を墜落から防ぎ、多数の乗客の命を助けたものの、血中からアルコールが検出されたため、その罪を問われるという内容です。以下、ネタバレあります。要注意のこと。

 大筋はハリウッドお得意のアル中ものです。ワシントンもアカデミー主演男優賞にノミネートされましたが、残念ながら、賞は逃しました。 

 それにしても、アメリカの航空業界のでたらめさはどうでしょう。日頃から見るからにアル中というような雰囲気の機長に、よく航空会社が操縦させるものです。同僚や上司を含めて、安全・安心第一の航空業界の中なのに不思議です。しかも、会社側は、腕利き弁護士を使って、証拠隠滅までするのですから、さすがにアメリカの訴訟社会です。
 また、この機長は、いくらアル中と言っても、いくら家族から見放されての自堕落な生活ぶりとしても、機長という社会的地位にある者が一面識しかないヤク中の女性と知り合ってすぐ一緒に暮らすか?などと思ってしまうのは、少し脚本に無理を感じるところでもあります。弁護すれば、それほど自暴自棄になっていたのか、絶望していたのか、道徳心がなくなっていたのか、を描いたのでしょう。同じく、仲間に偽証を頼む見苦しい限りの姿の描写もそうかもしれません。それとも、運命の出会い、神の御業ということを印象付けるためなのでしょうか。
 空を飛ぶこと、墜落による死をまぬがれる奇跡、そうした背景もあるのか、台詞で、やたら神との関係が強調されます。墜落現場も教会のすぐ傍の草原でしたし、教会の塔を翼で破壊しましたゾ。何か、キリスト教的な暗示や啓示があるのでしょうか。
 もっとも、映画的には、神の啓示というよりも、運輸安全委員会の前日、夜中のホテルの半ドアになった扉の音、冷蔵庫のモーター音、魅力的な色に照らされたウイスキーの小ビンなどののショットは、悪魔の囁きをこれほど耽美的に描写したものはありません。しかも、それらの誘惑を退けたと思ったとたん、見事に裏切られる演出は華麗としかいえません。素晴らしい。
 そして、翌朝、委員会の運命の日になるのですが、ホテルの部屋の中ではワシントンが酒でぶっ倒れたまま、むちゃくちゃな有様ですガナ、と思わず関西弁で記述したくなるほどの惨状です。どうなるんだと頭を抱える場面を鮮やかに転回するのが、ローリング・ストーンズの曲に乗って登場する、ジョン・グッドマン扮するいかれた麻薬の売人です。あの巨体をゆすって、軽快に登場するサングラスと半ズボンの姿は傑作です。この俳優さん、このところ最高潮ではないでしょうか。「人生の特等席」、「アルゴ」に続いて、観客に強烈なインパクトを与えます。その登場場面では、完全に主役を喰っています。しかも、泥酔し、ほとんど死んだようになっているワシントンを薬を使って、張り替え、仕立て直す、という表現がぴったりの治療を行います。もう、抱腹絶倒の場面です。このエピソードだけでこの映画は見る価値があります。

 最後は、嘘を突き通して罪をまぬがれるか、良心に目覚めるか、おもわず、「神の名」を唱えることになります。その辺のドラマ的なスリルは、急降下を防ぐために、背面飛行したときよりも緊張します。もっとも、実際、最後に安全委員会で説明されるまで、背面飛行した理由がよくわからなかったせいもありますが・・(笑)。

 おまけに一つ、酒酔い運転(笑)と、嘘をつくのに最も寛容なアメリカ社会で、ワシントンの最後の最後での正直な告白に直面した、運輸安全委員会の委員長の戸惑ったような複雑な表情の演技に座布団を一枚。

この映画を「男前の映画」と褒めた友人は、「ハッピーエンド」と言いました。いまどき、珍しい良心を問う映画です。ある意味、ハリウッド映画の王道かもしれません。是非、ご覧ください。   

2013年3月10日 (日)

アルゴ

Img  米国アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞した「アルゴ」を、凱旋興行のおかげで、劇場でやっと観ることができました。

 動乱のイランから、6人の大使館員を、架空の映画製作をでっち上げ、そのロケハンのスタッフとして助け出すという、実話に基づく、突拍子もない救出作戦ですが、本当に、この作戦を上層部がよく許可したものと思います。その時は、よほど困っていた状況に陥っており、溺れる者は藁をも掴むということだったのでしょう。もっとも、作戦が開始された後になって、大統領首席補佐官が報告を受け、中止命令を出すのも、よく理解できます。常識的な判断でしょう。

 この映画の一番の面白さは、脱出劇のスリルではありません。架空のアルゴというSF映画の製作をデッチあげるために、CIAが協力要請したハリウッドの大物プロデューサーと特殊メイクアーチストのあれやこれやの手練手管です。ああ、いかにも資金調達などでの海千山千の業界人の集まり、ハリウッドの興行界のありそうな話と思わせます。脚本家組合から二束三文の脚本を買い付けるエピソードやマスコミ発表のインチキくささなど、楽屋落ちのようなお話は本当に笑えます。業界人からのアカデミーの票を集めるはずです。
 私もこのシーンには、一票投じます。それにしても、太っちょのジョン・グッドマンは「人生の特等席」に続いて、いや製作年次が逆でしたか、良い味を出しています。プロデューサー役のアラン・アーキンとは、「暗くなるまで待って」の俳優ですよね、あいかわらず存在感があります。

 さて、肝心の脱出劇では、様々な関門が登場しますが、いずれも間一髪ですり抜けていきます。少し演出過剰で、都合が良すぎるような気もしますが、なかなか手に汗を握ります。最後、イラン上空を出たときは、本当にほっとします。

 それにしても、現実の世界は、なんと醜いのでしょうね。絶対神の間で、多くの人間が理性を失い、残酷になり、そして意味無く死んでいくのです。こんな世界情勢を映す映画を見ると、改めて思います。戦争はスクリーンの中だけで良いのに、本当に「アルゴ、くそ食らえ」です。

2013年3月 9日 (土)

30デイズ・ナイト

Img 本当に、欧米には吸血鬼を題材にした映画がたくさんあります。しかも、A級、B級という作品より、C級、D級が圧倒的に多く、場合によってはZ級というとんでもない映画もあります。もっとも、ゾンビ映画に比べれば大したことはないかもしれません。日本映画アカデミー賞の作品賞をとった「桐島、部活やめたってよ」の中でも、高校生の映画部がゾンビ映画を作っていますし、ハリウッドのスピルバーグ印の「スーパー8」でも、ゾンビ映画を撮っていました。ゾンビは、アマチュアでも作りやすいのでしょうし、これが三流映画やDVDとなると雨後のたけのこのように作られています。私の知人の話によると、知り合いのゾンビ映画マニアは、ともかく無数のろくでもないゾンビ映画を見ており、その中で、少しまともな作品に出会えると、その感動や評価はうなぎ上りに高くなると感じるそうです。・・・地獄で仏?的効果とも言うのでしょうか、わかる気がします。いや、この意見に大いに賛同します。

 この映画がまさにそうかもしれません。お話は、アメリカのアラスカ、人が住める北限の地の小さな町での出来事です。冬は、30日間、太陽が上りません。つまり30日間夜が続くのです。まさに、吸血鬼には理想の世界です。そのシーズンが始まる最後の日没の前に、幽霊船のような客船に乗って、吸血鬼たちが静かにやって来るのです。イヌが殺され、通信や電気が切られます。 薄気味の悪い浮浪者も現れます。あの「悪魔のいけにえ」へのオマージュでしょうか? 考えすぎでしょうが、なかなか導入部分は好感が持てます。

 こうした秀逸な設定に加え、襲ってくる吸血鬼の一団がユニークです。ボスは、太ったオジさん風ですが、貫禄がありますし、その妻や側近は、なんか東欧系の姿です。見方によっては、わし鼻のからす天狗にも感じられ、わけのわからない言葉(ルーマニア語?かトランシルバニア語?)や天に向いて咆哮する動作など、新たな吸血鬼というイメージを提示しています。用心棒的な巨漢の吸血鬼は、もう猛獣といってもよいほどの迫力があります。
 こうした吸血鬼の群れが、町の人々を次々と襲います。圧倒的なスピードと力技です。人との違いをこれほど映像化したものも少ないのではないでしょうか。あるようでなかったと思います。しかも、ボスは部下たちに宣言します、「喰ったら、首を刎ねよ。」と。つまり、吸血鬼の数はこれ以上増やさないというのです。その理由は「長い年月を掛けて、やっと『吸血鬼は幻だ』と人間に信じ込ませた。」とノタマワリます。・・いやあ、脚本が面白い。

 主人公はこの町の若い保安官とその別居中の妻で、その周りの人たちを引き連れての脱出逃亡劇となります。ドラマ的には、うまい選択です。・・もう前半は傑作です。

 しかし、残念ながら30日間は長かった。小さな町に隠れ住むには、主人公たちの疲労感や消耗度合いがイマイチ表現できていません。お話としては、幾多の試練と仲間の死を乗り越えて、29日間をなんとか生き抜くのですが、その間の時間の途方もない長さや、生き延びるためのギリギリの労苦が描かれていません。単に、「何日経過・・」と言う字幕が出るだけなのです。観客が気になる、食事は?トイレは?睡眠は?というサバイバルな生活方法がまったく感じられないのです。29日経っても数時間の経過後のようなさっぱりした容姿なのです。・・・本当に惜しい。

 ただ、万事窮すとなったラストで、主人公が取った意外な解決方法は、本当に意表を付いた方法ですが、少し悲しい結末でしたナ。

 さて、この映画の評価については、単なる針小棒大?的効果の映画か、またまた本当にプチ傑作映画なのか、もう少し時間をおいて反芻することとしましょう。もっとも、世間の評価とは別に、私は、あの悪鬼のようなボスの妻の顔が猛禽類のようで本当に怖いところが気に入っています(笑)。・・・淀川長治氏は、「どんな映画でも1箇所は好きなところがあるから映画が好き」とのことだそうです。素晴らしい言葉です。

2013年3月 3日 (日)

世界のふしぎな虫おもしろい虫

Img_0003  またまた図鑑のお話です。インターネット通販の「アマゾン」を何気なく眺めていますと「世界のふしぎな虫おもしろい虫」という図鑑が売り出されています。表紙には、珍しい虫、異形の虫の写真が並んでいます。私の琴線に・・・。

 残念ながら、アマゾンでは「中身を見る」機能が付いていない商品なのですが、表紙の写真の様子から推測すると、細密画に匹敵するような精密なカラー写真の図鑑の様子です。
 読者のレビューでは、「生態写真ではなく、標本の写真」という批判的な意見が載せされていました。これは、図鑑マニアからすると、逆に相当に期待がもてます。
 もともと、わが国の図鑑は、水彩画のような大まかなタッチの絵が多く、欧米のような超精密画は余りありませんでした。最近になって、やっとコンピュータ・グラフィックを使った細密な絵も出てきたような気がします。
 一方、写真というのは、生態写真の場合、なかなかその生物の全体像がわかりません。自然の中で、生物が様々な体位を取りながら、周りに溶け込むのですから、当然です。やはり、図鑑としては、絵のほうが判りやすかったのです。ただ、ここにきて、技術の進歩のおかげなのでしょうか、今回の図鑑のように、白いページに生物の写真が載せられている図鑑も発売されてきています。以前に、世界のカエルの写真図鑑を見て、写真で写されたカエルの姿の精密さと明確さに感動した覚えがあります。どうやって写真撮影したのか、不思議です。

 さて、早速購入した現物を見たところ、1ページに1匹の精密で美しい虫です。その虫たちの奇想天外な姿、唖然とするほど美しい羽や甲冑。擬態の妙味、とんでもなくでかいモンスターのような迫力。知っているつもりでも、美しい精密な写真の効果で、さらに、その上を行きます。さらに、後半は、目別・体系的に、原寸大のサイズで240種もの多数の虫がその奇天烈で美しい姿を整然と並べられています。ここが図鑑の醍醐味です。是非ご覧ください。

 ところで、「インディ・ジョーンズ2」のホラ穴のなかでヒロインの肩や手に乗っていた虫は、なんと言う名前なのでしょうか?以前から気になっていました。どなたか、お教えください。

« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31