暁の出撃
もう随分前のことですが、故淀川長治さんが映画雑誌に紹介した記事を見てから気になっていた映画「暁の出撃」が、このたびTUTAYAからオンデマンドDVDとして発売されました。
主演は、ジュリー・アンドリュースとロック・ハドソン、監督は、アンドリュースの旦那で喜劇映画に抜群の才能を示したブレイク・エドワーズです。
お話は、第1次世界大戦中、有名な歌姫であり、その実ドイツのスパイであるリリ-役のジュリー・アンドリュースと、新鋭の航空隊隊長役の色男ロック・ハドソンの恋の物語です。
映画は、何とも大らかな時代背景を反映してか、あるいは、ハリウッド黄金時代の製作風土のせいか、なかなか悠々とした進め方です。冒頭の暗闇の中の歌だけのシーンなどは、もう延々と信じられないほど長く、ビデオの故障かとも思いました。
しかし、そのセットなどの豪華なことや本物の複葉機による空中戦などの物量の凄さなどは、本物だけがもつ圧倒的な迫力がありますが、それを喜劇的なテンポでさらりと描いていることには、壮大な無駄?、いやいや、やはり当時のハリウッドの底力を感じます。
主演のアンドリュースに対しては、監督が下手惚れ(?)の旦那の故か、もうカメラ目線はなめるように密着し、彼女のヒット作の「メリー・ポピンズ」や「サウンド・オブ・ミュージック」へのオマージュがてんこ盛りです。とりわけ、彼女が、ハドソンの前の彼女であるダンサーに対抗心を燃やし、舞台でメリーポピンズ風の衣装を脱ぎ捨てていくシーンは、彼女自身が自分の固定的なイメージから脱皮しようとした意欲の顕れというのは穿ちすぎでしょうか。
大根役者の定評があるロック・ハドソンも頑張ります。寝室での彼女の含み笑い作戦に怒る姿は笑えます。この辺の男女の艶笑漫才は、ハリウッドの十八番です。また、その他の脇役も、飲んだくれの航空隊の面々やフランス情報部の凸凹コンビも良い味を出しています。なんか、昔の映画の登場人物はみんな人が良いなあ、現在の目線で見ると驚きです。
話の展開も後半一体どうなるのか、と心配になりますが、まあ、そこはハリウッド映画ですから、そしてブレイク・エドワードの喜劇映画ですから、きちんとハッピーエンドに強引に納めます。めでたし、めでたし。142分、十分楽しみました。こんな時代だからこそ、こんなお伽話の映画があってもよいし、もっともっと古典を発掘しましょう。
なお、ブレイク・エドワーズ監督作品のお勧めは、思いつくのが「ペチコート作戦」これまだDVD化されてません。そして珍妙な乗り物が登場する「グレートレース」です。よく考えると、この監督さんは、喜劇のギャグのために、いつも桁外れの物量を消費している感がします。一度、ご覧ください。抱腹絶倒間違いないですゾ。
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