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シリーズ物は、安心して劇場に足を運ぶことが出来ますが、期待以上の感動を得ることはなかなか難しいものです。製作側はマンネリ化を避けるためにいろいろ工夫し、挙句の果ては、絵空事になってしまいます。我が座頭市が良い例で、第1作では蝋燭を1本、居合い斬りで真っ二つにして観客の喝采を浴びたものですが、回を重ねるたびに、曲芸斬りの度合いは増して、映画のシリーズ終盤の方では、大樽を中から四角に斬って出てきたのには、思わず失笑しました。
さて、この「ダイ・ハード ラスト・デイ」は、1988年の第1作から始まったシリーズが、25年経って、やっと第5作目になりました。
久々に製作された前作では、サイバーテロを題材に、主人公の娘を登場させ、デジタルに弱いアナログの親父が大活躍するというストーリーで感心しました。また、戦闘機と高速道路を使った度派手な大アクションは、CG技術をもって初めて可能になった場面であり、リアル感の限界に挑戦したような気がします。まあ結果、ぎりぎりOKですか、普通死にます(笑)。
柳の下にドジョウはいるのでしょうか、今回は、娘に加えて、息子の登場です。しかも、長らく音信不通だった息子は、ロシアで犯罪者として収監されているとのこと。そのため、マクレーンは身元引き受けのため、ロシアまで行って、大陰謀に巻き込まれるという話なのですが、事情のわからないマクレーンの登場で、作戦は失敗、事態は大混乱というデ出しは、ストーリー的にあんまり感心しません。見ている客の気持ちがスッキリしないのです。
もっとも、命をねらわれた要人には、ウラの事情が絡んでどんでん返しが用意されており、ラストには、結果オーライになるのですが、なんとも無理があってやっぱり納得できません(笑)。
まあ、装甲車や攻撃ヘリコプターまで繰り出す壮絶な攻撃アクションを、気楽に楽しむことをお勧めします。でも、やっぱり過激すぎて、無敵の超人が活躍するSF映画の絵空事のようです。生身の人間なら、何回死んでいることでしょう。
それにしても、悪人の最後は、第1作へのオマージュとしてか、高いビルから落下するのですが、今回は、それにさらに捻りを加えているのですが、その効果のほどはどうでしょうか?。賛否が分かれそうです。(私は好きです。)
もうひとつ、文句を言えば、放射能の中和剤が登場しますが、ハリウッド映画界がインディ・ジョーンズやダークナイトなどの例のごとく、どうも放射能被害を過小評価しているのが、少し不快です。
おまけでもうひとつ、息子役の俳優さんがトム・クル-ズの「アウトロー」の敵役のスナイパーに出演した新人というのは、案外ハリウッドの芸能界は狭いせいなのでしょうか。「ルーパー」の時も「ダークナイト」に出演した新人を使ったり、同時期によく同じ若手の俳優を何度も見ます。アバターとタイタンの逆襲もそうでした。なんか、人気の出そうな新人を集中的に使うシステムがあるのかな?。キャスティングが適材適所なら良いのですが、今回の場合は、容貌が悪人顔(ごめんなさい)のロシア人のようで、マクレーンの息子とは思えないほど似ていないのにどうしても違和感が拭えません(笑)。
もう随分前のことですが、故淀川長治さんが映画雑誌に紹介した記事を見てから気になっていた映画「暁の出撃」が、このたびTUTAYAからオンデマンドDVDとして発売されました。
主演は、ジュリー・アンドリュースとロック・ハドソン、監督は、アンドリュースの旦那で喜劇映画に抜群の才能を示したブレイク・エドワーズです。
お話は、第1次世界大戦中、有名な歌姫であり、その実ドイツのスパイであるリリ-役のジュリー・アンドリュースと、新鋭の航空隊隊長役の色男ロック・ハドソンの恋の物語です。
映画は、何とも大らかな時代背景を反映してか、あるいは、ハリウッド黄金時代の製作風土のせいか、なかなか悠々とした進め方です。冒頭の暗闇の中の歌だけのシーンなどは、もう延々と信じられないほど長く、ビデオの故障かとも思いました。
しかし、そのセットなどの豪華なことや本物の複葉機による空中戦などの物量の凄さなどは、本物だけがもつ圧倒的な迫力がありますが、それを喜劇的なテンポでさらりと描いていることには、壮大な無駄?、いやいや、やはり当時のハリウッドの底力を感じます。
主演のアンドリュースに対しては、監督が下手惚れ(?)の旦那の故か、もうカメラ目線はなめるように密着し、彼女のヒット作の「メリー・ポピンズ」や「サウンド・オブ・ミュージック」へのオマージュがてんこ盛りです。とりわけ、彼女が、ハドソンの前の彼女であるダンサーに対抗心を燃やし、舞台でメリーポピンズ風の衣装を脱ぎ捨てていくシーンは、彼女自身が自分の固定的なイメージから脱皮しようとした意欲の顕れというのは穿ちすぎでしょうか。
大根役者の定評があるロック・ハドソンも頑張ります。寝室での彼女の含み笑い作戦に怒る姿は笑えます。この辺の男女の艶笑漫才は、ハリウッドの十八番です。また、その他の脇役も、飲んだくれの航空隊の面々やフランス情報部の凸凹コンビも良い味を出しています。なんか、昔の映画の登場人物はみんな人が良いなあ、現在の目線で見ると驚きです。
話の展開も後半一体どうなるのか、と心配になりますが、まあ、そこはハリウッド映画ですから、そしてブレイク・エドワードの喜劇映画ですから、きちんとハッピーエンドに強引に納めます。めでたし、めでたし。142分、十分楽しみました。こんな時代だからこそ、こんなお伽話の映画があってもよいし、もっともっと古典を発掘しましょう。
なお、ブレイク・エドワーズ監督作品のお勧めは、思いつくのが「ペチコート作戦」これまだDVD化されてません。そして珍妙な乗り物が登場する「グレートレース」です。よく考えると、この監督さんは、喜劇のギャグのために、いつも桁外れの物量を消費している感がします。一度、ご覧ください。抱腹絶倒間違いないですゾ。
「アウトロー」は、予告編で受けた印象との落差の大きさに驚かされました。まず、トム・クルーズ主演ですから、最新作の「ミッション・インポシブル」などのように、度派手なアクション映画と勝手に思い込み、リュック・ベッション印の「96時間2」とか「コロンビアーナ」風に、無差別殺人てんこ盛りのような銃撃戦の映画をイメージしていたのです。
ところが、冒頭にこそ、5人の狙撃事件が発生したものの、結局、その真犯人探しの本格的な探偵小説のお話だったのです。映画自体も、さほど金も時間もかけていないような印象です。少なくても、大作ではありません。
無軌道ぶりの噂ばかりが際立った主人公、元陸軍の敏腕捜査員「ジャック・リーチャー」も驚くほど地味であり、しかも、真っ当で正義の味方なのです。まったく、予告編というものは困ったものです。
加えて、ヒロインの女検事さんのおばさん風(失礼!)地味さ加減にも失望です。この女優さんのいつも驚いているような容貌、どっかで見たと思ったら、「タイタンの逆襲(2作目)」の2代目の女王ですな。確か、このときも、1作目の女優さんの肩を持ちました。要は、好みの問題ですが・・(笑)。
それにしても、この事件自体、大掛かりな陰謀に見えて、その実、ちんけな殺人請負個人業者の犯行になってしまい、まさに、竜頭蛇尾に終わってしまいます。第一、いまどき、ABC殺人をメイントリックに使うとは驚きです。それも、冒頭から手の内を明かしてしまうのですから、観客は謎ときの醍醐味も味わえません。
唯一、もうけものは、ロバート・デュヴァル演じる元海軍の射撃場の老支配人です。この老人が主人公の応援に応じたのは良いのですが、提供したのは、銃ではなくて、ナイフ一本。これでは、リーチャーでなくても驚きます。しかも、もう年で目が霞む狙撃手を援護に、敵の自動小銃相手にナイフ一本で戦うはめになるのです。これは、ひょっとすれば、リュック・ベッソン流アクション映画に対するクルーズなりの心意気なのでしょうか?・・・深読みですよね。
最後に、大先輩の忠告を忘れていました。それは、映画の前に、原作を読むようにというものでした。どうやら、原作は、かなり面白いらしい。映画は全部忘れて、これから読みます。
おまけに、邦題に一言。クリント.イーストウッドの傑作西部劇のタイトルと同じものを使うなど、原題は、「ジャック・リーチャー」でしたので、配給会社の見識を問いたいと思っていたら、実は、シリーズ第9作目にあたる原作の「ワン・ショット」を「アウトロー」との邦題をつけていたのが翻訳出版社だったそうです。(上記パンフ受け売り。)ちなみに、西部劇の原題は、確か「アウトロー ジョゼイ・ウェルズ(主人公名)」ですから、ここは敬意を表して「アウトロー ジャック・リーチャー」とすればよかったのだ!!
「モンター大図鑑」というこども向けの絵本のようなタイトルの分厚い図鑑が出版されました。
しかし、このタイトルに惑わされないように願います。その内容は、サイレント時代から最新作までの様々なファンタジー映画について分類ごとに様々な角度から解説しているものです。しかも、カラー刷りでシャープな絵柄の、大変珍しい写真を各ページに本当にふんだんに掲載しているのです。この貴重な写真を見るだけでも価値はあります。「メトロポリス」のロボットのマリアの首から素顔を出している一枚とか、半魚人のデザイナーのスナップ写真など、初めて見る写真も多く、久しぶりに感動しました。
著者は、あの、「狼男アメリカン」などを演出した映画監督のジョン・ランディスです。この監督さんの作品のテンポには違和感があり、あんまり好きではないのですが、映画より著作のほうに、その才能が発揮されているような気がします。
作品の整理と解説、それにまつわる一枚の写真の配置が実にうまく、とりわけ、私の小膝を小叩くような(笑)、作品の選出などは見事な演出です。しかも、大げさに言えば、映画史上重要な作品は、しっかりとそのツボを抑えています。それも、某秘宝雑誌のような悪趣味ではなく、品良く、まとめられているところは、誠に感心します。ぜひ、皆さんも手にとってご覧ください。
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