ロックアウト
「ロックアウト」は、凶悪犯500人を冷凍冬眠させた宇宙衛星刑務所を舞台に、暴動に巻き込まれた大統領の娘を救出するという、設定だけ聞けば、どこかであったようなお話ながら、血肉沸くような痛快作品になる筈でした。
しかし、残念ながら、冒頭の地上でのシーンから興ざめな場面の連続です。まず、主人公の魅力がまったくわかりません。尋問で殴られても、平気の平左というタフぶりという設定も全く板についていません。苦しいときこそ、魅力的な007的(?)なジョークも、ただのへらず口で感心しません。しかも、地上でのオートバイのような乗り物でのアクションシーンなどは、CGの金が足りないのでしょうねえ、筆で絵をなぞったような、ぼやけた映像の連続です。大画面で見る観客に失礼というものです。まったく愛想が尽きました。
その後も、とても凄腕とは思えない主人公を、単身、敵中に潜入させるなど、理屈に合わない展開です。もっとも、この人選については、ある布石があったことが最後に明かされますので、それは納得しますが、この主人公の人物設定がなにより中途半端です。口の悪さと鈍感さが武器なのでしょうか。
また、500人の凶悪犯の暴動も、実質は、十数人の幹部(いつのまに?)が応対するだけで、ほとんどの囚人が広場でおとなしく?歓談をしているのです。あらゆる凶悪犯がそれぞれ度派手に暴れて欲しかった、というのは私だけでしょうか。しかも、ジョージ・クルーニー似のリーダー役と、デビュー当時のロバート・デ・ニーロ風の頭のおかしい弟のコンビは、もう、フロム・ダスク・ティルドーンそっくりです。結局、最後はいかれた弟の行動で自滅しますし、シークレットサービスの黒人の大男は、ただただ事態を悪化させるだけであり、主人公も、いきなり出会い頭で大統領の娘に殴り倒されるなど、もう次々と馬鹿げた展開が続きます。こういった映画の定番のヒーローと勝気なヒロインとのやりとりも、昔のハリウッド映画を参考にして、もう少し気の利いた台詞がほしいものです。
もう手に汗を握ることもなく、あまりの消化不良なアクションに唖然となって、宇宙衛星でのお話は終わります。それにしても、いくらなんでも宇宙服で大気圏突入を突破したのは、二の句が告げませんゾ。まあ、唯一の救いは、高慢な大統領の娘が金髪を切られてザンギリの黒い短髪となって、やっと可愛く見える、という演出でしょうか。「96時間」の娘役の女優さんとは思いませんでした。
「ニューヨーク1997」を彷彿させるような、私の好みの設定に免じて、パンフレットを購入しました。思えば、NY1997も、片目のスネークの格好だけで、潜入後は、ぜんぜん活躍しなかったような気もします。期待が大きかったせいかもしれませんが、やや辛口になりました。あまり期待をせずに、ベッソン製作の新人監督の作品を気楽にご覧ください。
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