大映時代劇
ホラーな時代劇を見せられたおかげで、格調の高い、正調時代劇を見たくなりました。それには、やはり大映時代劇です。決して、東映時代劇ではありません。もっとも、東映の中にも、「関の彌太っぺ」など屈指の作品もありますが、ほぼ例外です。しかし、大映は、いろいろな職人監督が撮っても、大映調ともいえる一貫した雰囲気があります。どんな駄作でも、磨き上げた美術、暗く陰影のある映像美などは、素晴らしいものです。とりわけ、私の好きな監督は、三隅研次、そして、池広一夫です。
何故か、市川雷蔵の眠狂四郎シリーズを見たくなりました。個人的には円月殺法を多重露光で撮った以降の後半の作品が好きです。特に、雷蔵がガンをおして出演した最後の作品となった池広監督の「悪女狩り」が何故かお気に入りです。その後に亡くなったせいか、雷蔵の演技がなんとも気になります。また、この映画の美術が素晴らしい。大奥の廊下の照り返しのセットの見事さ、夜の通りに立つ狂四郎の上に、トンでもない形の三日月の美しさ、天井に突き刺した刀を振り子に屋根に飛び上がるシーン、嘘を美しい形で様式美まで高めています。こうした細かな美術が、横長の画面に良く映えます。少々のストーリーのいびつさなど全く気になりません。これが大映時代劇の魅力です。
ところで、今回、同じ池広監督の「眠狂四郎無頼控 魔性の肌」を再見して、これまた、その美術に感動しました。ゲストの鰐淵晴子が夜、武家屋敷の通りに佇むシーンの妖しさは特筆ものです。壁にあたる照明や美術の見事さはただならぬものがあります。いやあ、横長画面では、いろいろ発見があります。今宵も、また時代劇を見ましょうか。
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