カムイ外伝
「カムイ外伝」は、21世紀の新しい痛快娯楽時代劇の幕を開けたといって良いほどの傑作です。これまでに見たことのない、CG技術と肉体演技が融合した独創的な殺陣と、これまで無かったこと自体が不思議な気がする、海と空と砂浜を生かした舞台設定など、意表をついた、ユニークな作品です。私のような時代劇ファンは、CG技術が飛躍的に進展する中、このような、純粋な時代劇が生まれることをどれだけ待ち望んだことでしょうか。(「どろろ」はファンタジーでした。)たけしの市やICHIを経て、やっと目にすることができました。
冒頭のカムイ子役の戦いシーンこそ、「少しワイヤーで役者が高く飛びすぎだなあ」などと批判的に観たりしていました。が、そのすぐ後、成人したカムイが抜け忍となり、追忍達と森の中で戦うシーンでは、その壮絶な戦闘と映像に舌を巻きました。久しぶりに映像に魅入られていました。生身の演技をCGによって補正し、誰も見たことのないような殺陣を創造しております。これまでも、同じように樹木の間を飛んだり、登ったり映画は、千葉・真田某などのアクショングループなどにより様々製作されていますが、全く次元が違います。ひとえに演出力の差なのでしょう。ともかく、原作の漫画に出て来るカムイの必殺技「飯綱落とし」や「変移抜刀霞斬り」などを見事に映像化しています。スローモーションによる手裏剣の飛来と見切り、枝から枝への超スピードの飛燕の跳躍、高度な撮影技術の粋が注ぎ込まれています。最近よくある彩度を落とした撮影方法ではない、総天然色の映像の美しさも特筆です。
また、海の映像も凄い。沖縄でロケしたことが江戸時代という過去の空気のリアル感を生み、波をCGで創造したことが、浮世絵のような江戸の海や波を作り出したような気がします。ともかく、その風景だけでも一見の価値があります。鮫もおるでよ。
そして、やはり、主演の松山ケンイチが良い。この人、本当にカメレオン俳優です。見事にハードなアクションを演じています。小雪もいいねえ。最近、この背の高い女優さんのファンになっています。 顔の造作などは私の好みではないのに不思議なものです。伊藤英明は、絶対悪役が似合っています。なかなかの存在感でした。
最後に、この作品で、監督の崔洋一を見直しました。この監督さんは、テレビなどで顔と名を売っていますが、なんか難しそうな作品が多く、恥ずかしながら、私は一度も見ていません。これからは、もっと理屈なしの痛快な娯楽作品をどんどん作って欲しいものです。
ともかく、「カムイ外伝」は、独創的で美しくも壮絶な新しい時代劇映画です。皆さん、是非ご覧ください。
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