一部で話題になっているらしい「クローバーフィールド」を観てきました。切符売り場で「特殊な撮影方法なので車酔いのようになるかもしれません。」などと脅かされましたが、まあ大丈夫でした。
この映画は、ネットを活用した宣伝方法で、かなり前評判を呼んだそうです。なにしろ自由の女神の首が吹っ飛ぶという衝撃的な映像が公開された後も、その内容はもちろん題名も明らかにせず、噂が噂を呼ぶ手法だったらしいのです。(ガセネタも流されたようです。)
ストーリーは、ニューヨークに謎の巨大生物が出現し、街を破壊するというものです。いわゆる怪獣映画です。監督が来日したときに、日本のゴジラ文化を見て発想したそうです。こうした類の映画は、古くは「キング・コング」、レイ・ハリーハウゼンも「原子怪獣現わる」、そして「USゴジラ」など、数多く作られています。この映画が話題になったのは、その宣伝方法もさることながら、全編、映画の登場人物が写した家庭用のビデオの記録映像で構成されているという作り方なのです。この方法は、意表をつく斬新なアイディアです。よく、ニュース映画などで災害を記録したビデオ映像が流れますが、まさにあの手ブレの映像なのです。臨場感あふれるリアルさが表現できます。知恵者はいますねえ、誠に上手い手です。もっとも、そのブレまくる映像の連続なので、前述の入場券売り場の警告になるのですが・・・。
しかも、このビデオ映像には、重ね撮りというもう一つの仕掛けがあって、その効果に感心します。また、あくまで、逃げる人間から見た視点での映像ですので、ビルの谷間にチラッと見える怪獣の一部や逃げ惑う群集の声などが、リアルで臨場感に満ち溢れています。無神経にぶれる映像や雑音も実は計算されつくしているような気がします。
さらに、凄いと思ったのが、ホコリの演出です。怪獣が出現(ほとんど見えない)し、ビルが崩壊したと思ったら、物凄いホコリが上がり、主人公たちはすぐにホコリだらけになるのです。この辺の演出は、実際のテロ事件の影響かも知れませんが、物凄くリアルに感じられました。
サブタイトルの「HAKAISHA」が示す怪獣は、ラスト近くにやっと全体像が垣間見えるのですが、これがなんとも気持ち悪いのです。ぬらぬらした灰色の皮膚を持ち、信じられないほど長い異様な腕を持った、尻尾のある海坊主のような人間型なのです。怪獣というより、むしろ巨大な妖怪という雰囲気です。この監督は、日本で「妖怪」を知ったのではないでしょうか。人間型でありながら、顔に真黒い目や風船のような鰓(?)を付けたり、とんでもなく長い手や座ったような足に変型させることによって、人間の形を崩し、不快感が増すようにデザインしています。このへんも計算づくです。また、咬まれると、人間などは全身の穴から血を噴いて死んでしまうという設定のクモのような寄生虫(?)までぞろぞろ出てくるのですから、たまりません。ただ、ブレた映像ながら、特殊撮影等はきっちり行っていますので、ご安心ください。そして、エンドロールの音楽がなんともなつかしい東宝怪獣映画のノリなのです。思わず最後まで聞いてしまいました。
結論として、この映画は、その宣伝方法、映像表現(記録映像)というアイディアで勝利しました。リアルな臨場感を体験させていただきました。お見事でした。もっとも、ライトはともかく、暗視装置までついている家庭用のビデオカメラなんて販売されているのかなあ?ここが疑問です。
ところで、誰か、「クローバーフィールド」という題名の意味を教えてください。映画では、ビデオカメラを回収した国防省の暗号名という設定らしいですが、単なる記号なのでしょうか。そうであれば、これほど題名に意味を与えていない映画も知りません。その意味でも画期的なのかなあ。
最後に、感想を一言で言えば、「面白かった。」でした。
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