用心棒
「椿三十郎」の次は、やはり、「用心棒」を抜かすわけにはまいりません。黒澤明が娯楽時代劇と割り切って撮った作品です。黒澤プロダクションの2作目ということもあり、なんとしてもヒットさせたかったと思いますが、この作品とその続編「椿三十郎」で、日本の時代劇が大きく変わりました。
まず、それまでのチャンチャンばらばらの殺陣を一新しました。本当に斬るか斬られるか、という迫真的な形のリアルな殺陣になりました。そして、映画史上、初めて人を斬る音を入れたのです。鶏肉に割り箸を刺したものを切った音ということです。なお、この映画でも、斬ったときに、血が噴出する演出が使われたのですが、夜間の暗い場面で、量も少なかったので、あまり評判にはなっていません。ヘモグロビンの噴出は、次の「椿三十郎」で花を開くのです。
そして、三船敏郎演じる素浪人の創造です。頭が切れて、腕も立つ、自由な男という新たなヒーロー像を時代劇の世界に生み出したのです。黒澤は言います、「人を斬るのが面白いのじゃない、三十郎が面白いのだ」と。この主人公は、三船とともに、「座頭市と用心棒」で座頭市と対決したり、TV番組で変な役もやっていました。(笑)ちなみに、この「用心棒」では、桑畑を眺めて、「桑畑三十郎」と称します。
さらに、喜劇といっても可笑しくないほど、笑いとユーモアに満ち溢れています。ハードな雰囲気の中での緊張と笑い、このブレンドの妙が活劇の魅力なのです。第一、「馬ノ目の宿」の名前からして笑います。手首をくわえた野良犬、飲み屋の隣の棺桶屋、用心棒代の銭勘定、昼逃げの用心棒、火の見やぐらの見物、チョット足りない猪ノ吉(名優加東大介が好演)の片棒担ぎ、などなど。笑いの起こる場面は数知れません。
一方で、望遠を用いた圧倒的な映像美も凄いものです。酒屋の大樽には参りました。風も、ホコリも、劇的な効果を高めています。
そして、なにより盛り上げるのが、強烈なライバルの登場です。仲代達矢が演じた「卯之助」です。バーバリのような粋なマフラー(あのマフラーは何製でしょうか?)を首に巻き、懐手から短銃(S&W)をぶっ放す、抜け目の無いやくざ者です。三船の描いた絵を書き換えながら、唯一窮地に追い込むのです。蛇のように現れたり、着物の裾を掴んで走り去る姿は、悪の魅力に惚れ惚れします。(この映画から黒澤組に仲代が入ります。七人の侍の端役以来、二人ともあまり良い感情を持っていなかったそうな・・)
スト-リーも相変わらず見事なものです。蔵の牢からの脱出方法、短銃の阻止方法など感心します。台詞も「面白かったぜ」「生きてるようには見えないぜ」とか、印象的なものも沢山あります。
この映画は、ご存知のように、マカロニウエスタンの生まれるきっかけとなりましたし、映画の写真を集めた文庫本やノベライズ本まで出版されています。もちろん、フュギュアも作られました。
是非、未見の方はご覧ください。これが本物の娯楽作品です。
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はじめまして。用心棒のロケ地をブログに載せました。昨年の12月25日以前の日記になります。よろしかったらご覧下さい。
投稿: 五十朗 | 2008年1月 3日 (木) 23時29分