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2007年10月31日 (水)

ひとり狼

Img_0005 旅人ものから、もう1作。池広一夫監督の「ひとり狼」です。市川雷蔵扮する「人斬り伊佐」の物語です。凄腕のニヒルな旅人を雷蔵が見事に演じます。雷蔵の魅力的な声での台詞回しのみが、あの気障な台詞をそれ程おかしいものとは思わせません。この映画の見所は、旅人のストイックな生き方と、スピード感のある立ち回りです。雪の中の立ち合いや一瞬の居合い斬り、そして、最後の大立ち回り。あの槍は痛そうでした。

この池広監督は、小気味の良い活劇を作るのに定評があり、代表的な作品として、「座頭市千両首」「座頭市あばれ凧」、「座頭市海を渡る」「眠狂四郎女妖剣」「眠り狂四郎無頼控 魔性の肌」「眠狂四郎 悪女狩り」などがあります。Img_0018 特に市川雷蔵との相性がよく、狂四郎シリーズを盛り上げた立役者であり、シリーズ最後の作品「悪女狩り」も撮っています。この映画は、雷蔵の晩年、病をおして撮った作品で、狂四郎に鬼気迫る雰囲気があります。それに加えて、大映調と言ってよい、セットの繊細さや陰影のある色彩などの格調の高さから、シリーズの中でもっとも贔屓にしている作品です。

さて、前回の話の訂正とお詫びです。十朱幸代のデビュー作は、別の作品とのご指摘をいただきました。「?」との危惧が的中しました。手間を惜しまず、資料を確認しなければなりません。反省しております。今後とも、ご指導お願いします。

2007年10月30日 (火)

関の弥太っぺ

Img_0003 時代劇の中のジャンルに、股旅物があります。いわゆるやくざ渡世の流れ者のお話です。座頭市なども、このジャンルの変型です。このなかで、私が最も愛する映画をご紹介します。山下耕作監督、中村錦之助主演の「関の弥太っぺ」です。(題名の「や」の漢字変換ができませんので、ご容赦ください。)ストーリーは、弥太郎(通称:弥太っぺ)が親を失った少女を肉親のもとに届け、十数年後に、再び成長した少女の危機を救うというものです。何度となく、映画化されていると聞いていますが、山下監督のなんとも言えない絶妙な演出で、名作となりました。なんといっても、ともかく、名台詞「この娑婆にゃあ、悲しいこと、辛いことがたくさんある。だが、忘れるこった。忘れて日が暮れりゃあ、明日になる。~ああ、明日も天気だ。」は忘れられません。ホントにそう思います。しかも、この台詞は、ストーリーの重要な伏線になっているのです。その効果にも感涙です。十朱幸代の初々しさも際立っており、「旅人さあ~ん」という声も耳に残っています。そして、あの垣根の白い花の名は、むくげの花だそうです。「まわりの、まわりの小仏さまは・・・」というあの歌声もそうですが、名場面や心に残る風景がたくさんあります。詳しくは申しません、是非、ご自分の目でご覧ください。忘れていたもの、日本人の心を思い出すような気がします。絶対、損はいたしません。ラストもシャープです。思わず、シェーンの山越えの姿と何故かダブります。(意味は、「シェーンが撃たれていたか、どうか」と「妹の所に行くのが唯一の望みです。」からの連想です。)

この映画もビデオしか出ていません。東映さん、早く、DVDを発売してください。鮮明な画像と音で楽しみたいものです。

2007年10月28日 (日)

子連れ狼 三途の川の乳母車

Img_0001 大映時代劇を支えた三隅研次監督は、大映倒産後、勝プロ製作・東宝配給で、東映の若山富三郎と組んで、大チャンバラ映画を撮っています。当時、人気絶頂でした劇画「子連れ狼」の映画化です。この劇画は、原案の小池一雄、作画小島剛夕の一大叙事詩です。架空の「公儀介錯人」とか、「裏柳生」がからむ、子連れの刺客、つまり殺し屋の物語です。余談ですが、ゴルゴ13と同じ話が出て来るのは、小池一雄が「さいとうたかお」グループの一員(名前が出ていない)で、スト-リーの著作権を持っているということでしょうね。 小池が別で活躍しだしてから、ゴルゴ13は、あんまり面白くなくなりましたなあ。(しかし、それでも未だ続いているのは驚異ですが。)ともかく、小池一雄の原作の面白さと小島剛夕の絵の上手さが光っています。

 第1作目「子連れ狼 子貸し腕貸しつかまる」は、子連れ狼の誕生の経緯と刺客稼業の1件のエピソードです。小島劇画の絵作りを元に忠実に再現しています。そして、近衛十四郎がやや衰えた当時、最も殺陣が上手いとされていた若山富三郎が、その実力を遺憾なく発揮します。もっとも、若山は、東映やくざ物で、喜劇風準大物的な役柄も多く、体型もやや恰幅があり過ぎという立場でしたが、本人のたっての希望も強く、劇画イメージとは異なるものの、堂々たる演技と殺陣でした。結局、本人の代表作になったような気がします。1作目の見所は、劇画では小エピソードである「こうもり宿」のお話です。とびっちょの親分(悪役さん・・名前知りません。)の、拝一刀の正体を知る際の驚きぶりが出色の出来です。殺陣も、スピーディーで、血が噴き、手や足、首までが飛び交う絵作りですが、一見して偽物というつくりであり、一種の見立て的に安心して鑑賞できます。あんまりリアルだと正視できませんし、爽快感も失われます。この辺は、三隅監督のさじ加減と私の好みとしか言いようがありません。

 Img 第2作目「子連れ狼 三途の川の乳母車」は、全編、柳生との戦いです。冒頭の殺陣は、見ごたえがあります。柳生一門による集団の剣の殺陣など見事です。そして、明石柳生の腕試しの場面での黒鍬の小頭(ウルトラマンの隊長=ジョンウエインのアテレコ?)の名演技がいい。 また、米国で「将軍のアサシン」として人気を得て、ジョン・カーペンター監督の映画にも影響を与えた「弁天来の3兄弟」が登場します。船の乱闘シーン、砂丘の大立ち回りなど、そのマントをまとった風体と珍奇な武器などは、思い出してもわくわくします。結局、子連れ狼の映画は、6本ありますが、この1作目と2作目が最高傑作です。Img_0002 あえて言えば、第3作目の「子連れ狼 死に風に向かう乳母車」の加藤剛の首を次点に押します。そのほかは、雪山の大立ち回りとか、いろいろ趣向を凝らしておりますが、小道具に頼った007シリーズと同じ過ちを犯したように思います。

 ところでTVシリーズは、萬屋錦之助が演じましたが、若山に主演させたかったと残念でなりません。萬屋は、もう盛りを過ぎて病後の中では、迫力が出るわけもありません。胴太貫の持ち方も変です。若山も悔しかったとおもいますが、その後、現代劇などでいい脇役になりました。

 ところで、正式なDVDが国内ではまだ販売されていません。LDも発売されずしまいで、結局、アメリカ版を購入しました。どうして、東宝(?)は、DVDをもっと早く出さないのでしょう。市場が狭いため?(笑)写真は、VHSです。 

2007年10月22日 (月)

斬る

Img_0017 引き続き、大映時代劇から傑作中の傑作「斬る」です。三隅研次監督の「剣」三部作の1作でもあります。主演は、市川雷蔵、硬質な魅力をみせます。映像も、静かさの中で、日本刀の美しさ、妖しさに満ちています。ストーリーは、3人の女性のエピソードが死のイメージに包まれて、静かにしかし苛烈に綴られます。ここに、私のヒイキの万里昌代が登場します。「情けを知れ」と叫ぶ姿は美しく悲しみに彩られます。こんな美しく悲しいエピソードばかりが繰り返されるのですが、殺陣について、よくよく考えてみれば、とんでもない形ばかりです。シャミセンの構え、縦真二ツ斬り、大根のように多数斬り(敵を全滅)、桜の枝突きなどなど、まあ、よく考えたものです。映像が素晴らしく騙されます。耽美な三隅時代劇を一度ご堪能ください。

 参考までに、同名の「斬る」という岡本喜八監督の時代劇があります。主演は、仲代達矢。元武士のやくざ者が百姓あがりの浪人とともに、たまたま通りすがりの藩のトラブルに巻き込まれて・・という話です。これは、西部劇調のアクション時代劇という感じです。 仲代のコメディタッチの軽い演技や馬鹿力の高橋悦史が面白いですよ。思えば、この映画で、最初に仲代達矢という俳優を知ったものでした。

Img_0014 しかし、喜八の時代劇といえば、やはり「戦国野郎」につきます。加山雄三主演であり、「オチ キッタン」という名前からして笑ってしまいます。しかも、馬借隊などという西部劇そのままの舞台です。まさに喜八ワールドです。相棒の「ドーマ ハリマ」を演じた中谷一郎も儲け役です。女を抱きしめて「どうなってしまうのだろう」などと呟く姿は腹を抱えます。常連の佐藤充も「キノシタ トウキチロー」で大活躍です。また、ヒロインが星由里子ですので、いわば「若大将」です。未見の方は、騙されたとおもって、喜八ワールドに浸かってください。楽しいですよ。

2007年10月21日 (日)

座頭市シリーズ

時代劇といえば、「座頭市」シリーズを外すわけにはまいりません。子供の頃、父親に頼んで映画館に連れて行ってもらった映画の併映が、今思えば「座頭市兇状旅」でした。Img_0008 シリーズ4作目です。幸いなことに、勝新の持ち味のユーモアも滲みだした頃のシリーズ屈指の作品です。野獣のような敵役の浪人者が忘れられません。(対決シーンは怪獣映画のノリです。笑)冒頭の相撲のおかしさやラストの殺陣の壮絶さも子供心に残っていました。

しかし、このシリーズの最高傑作は、やはり第1作の「座頭市物語」でしょう。Img_0009 モノクロで、しかもストーリーは結構地味ですが、何しろ、盲目のダーティヒーローを創出したのです。目にもとまらぬ居合い斬りを映像化した勝新の努力も評価されるべきです。また、天知茂扮する平手造酒が一生一代の名演といったら大げさでしょうか?市との交流、壮絶な殺陣、そして最後の台詞、泣かせます。それに、可憐な万里昌代がヒイキです。前述の「兇状旅」にも再登場します。そして、なんといっても、三隅研次監督の手腕をもっと評価すべきです。この監督は、大映の職人監督というレッテルのためか、きどった評論家からは、あまり評価されていませんが、もっと再評価すべき監督です。大映時代劇のカラー、雰囲気を作り上げた名匠です。大映時代の時代劇だけでも、「斬る」、「新選組始末記」、「剣鬼」、「座頭市血笑旅」、「座頭市地獄旅」、「眠り狂四郎炎情剣」、「座頭市血煙り街道」、「座頭市喧嘩旅」などがあります。大映倒産後も優れた娯楽作品を作り上げた、三隅時代劇の魅力は、これからも折りに触れ、お伝えしていきたいと思います。

Img_0006 Img_0007 この2作品のほかに、絶対見るべき作品は、「座頭市千両箱」・・勝新と実兄の若山富三郎との西部劇のような決闘が白眉。「座頭市海を渡る」・・・安田道代が若く可憐です。個人的には、この映画と「兇状旅」が一番です。それに続いて、「座頭市血煙り街道」がひいきです。なにしろ、その当時、最も殺陣が上手いと評判の剣豪近衛十四郎をゲストに迎えての大立ち回りです。手順を決めずに行ったという伝説があります。ほんとに手に汗を握ります。この映画は、アメリカで「ブラインド・フューリー」という映画に翻案されています。もちろん、監督は、三隅研次です。Img_0004 Img_0011 大映倒産後では、「座頭市あばれ火祭り」も豪華で好きです。仲代達矢、森雅之を悪役に迎えての文字通りのお祭り映画です。風呂場の殺陣や川原のシーンが記憶に残ります。さらに、三船敏郎をゲストに迎えた岡本喜八監督の「座頭市と用心棒」、異色作としては、香港から片腕ドラゴンを呼んだ「新座頭市、破れ唐人剣」なども面白いですよ。最後は、「座頭市」ですが、面白く、集大成という名に恥じない出来ですが、悲惨な事故を除いても、やや、殺陣や人物描写にもやりすぎがあります。私自身は、初期のころの座頭市が好きです。Img_0010 Img_0026

ただ、このシリーズは、お盆と正月興行に向けて製作されていましたが、どうやら、冬より、夏の方が面白い。三隅監督も「血煙り街道」を除けば、夏の方が良い。単なる好みかもしれません(笑)し、どの作品も勝新のユーモアで笑えるシーンがあり、殺し合いの話でも安堵します。テレビシリーズは、正直、勝新がえらくなってしまい、真冬のような印象です。ほとんど記憶がありません。やはり、映画の大迫力にはかなわないということでしょうか。

切腹

三島由紀夫の話がでましたので、巨匠小林正樹監督の「切腹」になりました。この小林監督は、黒澤、木下、市川監督らと四騎の会を作っていたほどの名監督です。作品も「人間の條件」「怪談」「上意討ち」などの名作揃いです。Img_0012 この「切腹」の話は、伊達藩に、仲代達矢扮する食いつめ浪人が門前での切腹を申し出たことから始まります。その浪人との応対に出たのが、三国連太郎扮する家老。ことを諭し、先例の話などをするのですが・・・・。ストーリーは意外な展開をするのです。脚本は、橋本忍です。緻密な構成は観客を引き込みます。また、出演者もそうそうたる者ですが、特に、芸達者の三国はさすがです、扇子の使い方が揺れ動く感情を見事に表して絶妙です。また、仲代の髭面の凄みのある老け役も立派です。丹波哲郎との決闘は、嵐模様の空、不気味な石塔(?)が立つ原っぱの中で、刀の重さまでも感じられる、本当に手に汗を握るような真剣勝負を演じます。これが名匠の演出力というものでしょうか?凡百のチャンバラ映画とは、まるっきり異なる次元です。話自体はすこし重たいのですが、未見の方は、一度はご覧ください。

Img_0019  ついでながら、もう一本ご紹介します。「上意討ち」です。これは、ある藩で、剣の達人ながら養子身分の三船敏郎扮する藩士の長男の嫁に、殿様のオメカケが下賜され、子が生まれやっと幸せな生活が実現した後、再び、召し上げられるという理不尽な扱いの中、主人公達が藩命に逆らい、上意討ちに遭うという内容です。そして、三船の友で、国境の警護役として仲代達矢が出演です。当然、二人の息詰まる決闘が用意されています。殺陣も見所ですが、もともと友達同士という設定から、戦い前の二人のやり取り、特に三船の台詞に対する仲代のなんとも言えない表情にご注目ください。この場面だけでもご覧ください。

 おまけに、小林監督作品で忘れられない作品をもう1本。「いのちぼうにふろう」です。読みにくい題名ですが、漢字交じりにすれば「命、棒に振ろう」です。有名な「深川安楽亭」が原作です。これも仲代扮する「知らずの定吉」が素晴らしい。寡黙で不気味な雰囲気を漂わし、懐手からの短刀さばきなどの仕草は絶品です。ニ枚目から悪役まで幅広く、格好良くこなせる俳優は他にいませんねえ。ところで、勝新も出演しているのですが、この人は助っ人出演のときは、いつも、なんにも活躍しません。折角出演するなら大暴れを期待していますのに・・。ところで、この映画は、衛星放送での放映はありました(もちろん、録画は持ってマス)ものの、まだ、ビデオ、DVDとも発売されておりません。一日も早い発売を望みます。

2007年10月20日 (土)

人斬り

さて、時代劇といっても、何からご紹介しようかと悩みました。「椿三十郎」につづいて「用心棒」などの黒澤明時代劇かとも思いましたが、それはまた別の話ということで、まずは、五社英雄監督の「人斬り」です。Img_0001 主演は、勝新太郎で、幕末の土佐勤皇党の刺客岡田以蔵の役です。人斬り=テロリストで、座頭市とは違う迫力です。また、共演の仲代達矢の冷徹な武市半平太像は一見の価値があります。そして坂本竜馬に石原裕次郎、作家の三島由紀夫もゲスト出演し、切腹を見事に演じました。このおかげで、しばらくビデオなどの映像化が出来ませんでした。もっとも、DVD化はまだです。さて、この映画の魅力は、凄まじいといってよいほどの殺陣です。幕末のテロの嵐の迫力が凝縮している感じです。

最初の殺陣の場面は、雨中での数人がかりの戦いです。白刃のかみ合う音や斬るというより首に当てた刃で力任せに押し切るという斬新な殺陣です。土砂降りの中で、赤いものが霧状に舞ったと思っているうちに、どば~と血が噴出する演出は度肝を抜かれるぐらい見事なものでした。もっとも、大画面で無いと、どうやらあの首の上部辺りの赤い霧は見えません。少なくても、私の家のテレビ画面では未確認です。(公開当時の錯覚ではありません。)また、京都の狭い路地での天誅シーンは、勝新が見事な殺陣を見せます。座頭市とは全く違う技ですが、画面いっぱいに格子ごと斜めに切り上げた絵の美しさにはうなりました。また某宿屋の大人数での襲撃場面も、障子や建具が破壊され、まったく戦場といって良い雰囲気です。

 五社監督にとって、テレビ映画の「三匹の侍」や、仲代達矢・中村錦之助・丹波哲郎の「御用金」に続く劇場用映画です。前作の「御用金」の雪の中の手裏剣との決闘(仲代ー丹波・・・この二人の対決組み合わせの映画は実に多く、いずれも見応えがあります。)なども迫力がありましたが、この映画の出来が最高です。血糊の噴出や擬音も、しつこさややりすぎもなく絶品です。後年、「雲霧仁左衛門」なども撮影しましたが、やはり、この映画が五社時代劇のなかで最高傑作と思います。カツシンのふんどしを巻くシーンなど笑える場面もふんだんです。現在、ビデオとLDしか発売(絶版?)されておりませんが、是非一度ご覧ください。必ずや殺陣の魅力にとり付かれます。

2007年10月15日 (月)

椿三十郎

Dscn6215  現在、黒澤明の娯楽時代劇「椿三十郎」のリメイクが作られています。主演は、踊る大捜査線の男優です。話だけで一抹の不安を感じていましたが、先日、三十郎の姿が公開されました。前髪を垂らした髪型で、青島刑事の笑った顔がありました。うーん、随分イメージが違います。

 Dscn6216 「用心棒」と「椿三十郎」の三十郎シリーズ2部作は、黒澤がめずらしく徹底的に娯楽に徹して作った作品です。もっとも、この2つの映画で、当時の時代劇の姿を一変させたほどのインパクトがありました。人を斬る音や血糊の噴出も元祖なのです。望遠を多用した殺陣もそれまでには決してなかったものです。さらに、そうした殺陣以上に、三船敏郎の演じる「三十郎」の人物像が魅力的なのです。「三十郎、もうそろ四十郎だが・・」、こんな台詞とともに、蚤の居るような体のゆすり方、歩き方、すべてが完璧です。しかも、仲代達矢の敵役も素晴らしいのです。Dscn6212

こんな完璧な映画のリメイクに何故挑戦するのでしょうか。しかも、同じ脚本を使用してのお話だそうです。邦画のバブルとも言われているのも頷けるほど、全く愚かなこととしか思えません。せめてリメイクなら、最新の「キングコング」ぐらい、スト-リーの細部を徹底して創り込んでほしいものです。

Dscn6213 今の時代で、唯一、淡い期待をしているのは、殺陣です。どうせなら、CGを使って、徹底してリアルに作ってほしいものです。カツシンの座頭市をCG殺陣とタップダンスでリメイクした北野武監督に学ぶべきです。それが一縷の望みです。なお、写真は、「椿三十郎」のフュギュアです。

 ということで、次回から、しばらく、時代劇のお話をしたいと思います。Dscn6214

2007年10月14日 (日)

リオ・ブラボー

Img_0001 Imgアメリカ本場の西部劇からもう一本(?)紹介です。ジョン・フォードではなく、どんなジャンルでも名作を作ったハワード・ホークスの作品です。この監督は、男の話も上手いですが、コメディも類まれな力をはっきするオールマイティな巨匠です。個人的には、もっとも好きな監督の一人です。今回紹介するのは、みんなが知っているジョン・ウェイン主演の「リオ・ブラボー」。喜劇俳優ジュリー・ルイスの相方だったディーン・マーティンの演技が評価された作品です。主人公が、アル中の保安官(マーティン)を助け、口が悪く足が不自由な年寄りの保安官助手と、早撃ちの若者を伴って、逮捕者の奪還を図る無法者の集団に、保安官事務所に立てこもり、孤軍奮闘するというストーリーです。一説によると、あの「真昼の決闘」の軟弱な保安官像に対抗して製作したとも言われています。「皆殺しの歌」やダイナマイトを使ったメリハリのある活劇、ウェインの服装スタイルなどもこの映画で確立しました。そのあとに、「エル・ドラド」、「リオ・ロボ」が製作され、ホークス西部劇3部作と言われています。しかし、この言い方にはやや疑問があります。3作目は少し作品の質が違いますし、西部劇なら、もう1本「赤い河」の傑作があります。ジョン・ウェインの老け役が凄い迫力です。これも見逃せませんが、これはまた別の話です。続編的な「エル・ドラド」も傑作です。私の好みから言えば、より娯楽的で喜劇的な要素の強いこちらの方が好みかもしれません。なにしろ、主人公の背には、昔の古傷(弾)で、時々、しかも肝心な時に、右手右足が痺れて動けないなどという設定は笑わせます。さらに、変な帽子を被ったナイフの達人も全く銃器が使えない、そしてお約束のアル中保安官は、ロバート・ミッチャムです。敵側の黒尽くめの用心棒(この辺はシェーン?)も、なかなか迫力があります。いやあ、書いているうちにまた見たくなりました。なお、最終作は、遺作となり、しかも設定も前作と全く異なりあまり印象がありません。お勧めは、初期の喜劇作品も良いですし、「ハタリ」も迫力満点です。ジュラシック・パーク2の恐竜狩りは、この映画のパクリ(?)です。あと一度テレビで見た「男性の好きなスポーツ」を早くDVD化をしてもらいたいものです。

2007年10月 8日 (月)

ドラゴンハート(その2)

以前、このブログ(2006.10.24)で、「ドラゴンハート」のドラゴンのソフビ・キットを眺めているということをお話しました。このキットは、モノグラム社から発売され、既に絶版であるところから、相当なプレミアとなっています。今回、別途中古品(箱なし、説明書なし)を多少お安く購入しましたので、意を決して組み立てと塗装に挑戦しました。Dscn78921 Dscn79021 Dscn78961 その結果は、ご覧のとおりですが、正直惨憺たる出来あがりです。ドラゴンの皮膚感、特に、装甲の棘やうろこをリアルに表現したかったのですが、基本の色がなんとも濃すぎました。もっと全体に黄土色ですか?ともかく生まれ出し者は、濃茶のドラコでした。本来、もう少し薄い色合いで、装甲の色の区別を鮮明にすべきでした。ただ、硬い装甲の雰囲気がなんとなく感じられますので、一応良しとしました。しかし、歯や爪の後処理をする元気がありません。おまけの騎士も省略です。とりあえず、概成ということでお披露目です。まあ、映画とは種類の違うオリジナルなドラゴンですなあ。ただ、作ってみて再確認したのは、このドラゴンは頭でっかちの不細工な竜であり、羽も折りたたむと空を飛ぶ力を感じさせない飾り物のような造型です。顔は、ショーン・コネリー(竜の声)を髣髴させます。

 伝説のドラゴンの姿に、映画史上で最も近いのが「ドラゴンスレイヤー」のドラゴンです。そのキットが販売された噂があり、是非、見てみたいものです。

ところで、現在、製作途中のキット「プリス」、「メドューサ」、「闇のプリンス」、「ファントム」などがそのまま放置されています。特に、プリスは、髪の処理に初めて自作のウイッグを使用したりして試行錯誤が続いています。「もはや、これまでか」という試合放棄直前まで、事態は煮詰まっています。 オマケに一点ご紹介です。Dscn78821  ご存知、ブレードランナーのレプリカント「プリス」です。髪と目Dscn78861_2 Dscn78911_2 Dscn7888の周りとタイツの処理に難儀中です。中古キットは衝動で買うものではありません。己の能力の範囲内で考えるべきでしょうネ。反省です。

ウェスタン

マカロニ・ウェスタンに関連してもう一話。セルジオ・レオーネ監督は、その後、本場アメリカで西部劇を製作しています。しかも、チャールズ・ブロンソンを主演に据え、なんとヘンリー・フォンダを冷血非道の悪役に迎えているのです。Img_0007 題名は「ウェスタン」。原題は「昔々、西部で」というのは、いかにも欧米風の題名でもっとおしゃれな感じですなあ。冒頭の延々と続く待ち伏せ(やぶにらみの脇役イーライ・ウォラックがうれしい。・・さしずめ切られ役福本某のよう。)、決闘の長い間合い、極端なクローズアップとロング、マカロニ独特の構図が決まっています。そして、ロングコートを羽織った敵役フォンダの登場です。その冷酷非道ぶりが板についてます。

もっとも、フォンダといえば、アメリカの名優です。Img_0008 西部劇も名作「荒野の決闘」 の素朴なワイアット・アープ。この映画は名画です。ともかくフォンダがめちゃくちゃ良い。「イッツ、ミー」や「私はクレメンタインという名が好きです。」の台詞、そしてあの足長おじさんのような迷ダンス。青い空(すみません、モノクロですが(笑))と白い雲、西部という雰囲気が良く出ています。あの懐かしい音楽もピッタリです。最後にクレメンタインにキスをしたかどうかという先輩方の論争は今は昔の話です。VHSやDVDで簡単に結論が出ます。もっとも違うバージョンが存在すれば別の話になりますが・・。(なお、結論は、しっかりキスしています。笑)私は、「駅馬車」よりずっと好みです。一度ご覧ください。

Img_0011  そのほかにも、「胸に輝く星」の正義の保安官役や、現代劇でも「十二人の怒れる男たち」の誠実な男・・・Img_0012 これは、三谷幸喜の十二人の優しい日本人」の翻案喜劇も傑作。「ジンジャエール」の台詞が忘れられない。未見の方は是非ご覧ください。・・・などを演じてきました。 

 一方で、敵役としても、鮮烈な印象を持つ映画があります。「ワーロック」です。Img_0009 西部の小さな町を牛耳る早撃ちの保安官です。銀の柄の二丁拳銃。「オ~、ボーイ」と首を左右に振って、撃ち殺すシーンなど悪の魅力が満ち溢れています。淀川長冶氏による(著書)と、「本人もこの役は満更でもなかったようです。」ちなみに、まだ、DVDは発売されていません。写真は、VHSです。

話を元に戻しますと、「ウエスタン」でも、フォンダは、このワーロックの再現で、早撃ちや冷血非道振りなど名演を見せてくれます。一方、主演のブロンソンは、やたら思わせぶりで損な役回りでしたが、俳優の格ということもあるので、やむを得ませんでしょうね。

2007年10月 6日 (土)

続夕陽のガンマン

先日、スキヤキ・ウェスタンなる映画を見てきました。マカロニ・ウェスタンの日本版なのでしょうが、何故、こんな映画を製作したのでしょう。私の具体的な評価は差し控えますが、上映途中で隣の老夫婦が席を立って出て行ったのには共感しました。もともと、マカロニ・ウエスタンは、イタリアの監督セルジオ・レオーネが、アメリカの売れない俳優クリント・イーストウッドを使って、我が黒澤明監督の「用心棒」を盗作し、「荒野の用心棒」を製作したところ、全世界で大ヒットしたことからブームになったのです。アメリカでは、こうしたイタリア西部劇を「スパゲッティ・ウエスタン」と呼んだのですが、我が国では、かの淀川長治氏が語呂が悪いと「マカロニ・ウエスタン」と呼称したのです。まさに慧眼です。

Img_0002 ともあれ、この「荒野の用心棒」は元祖には及びませんが、どうしてなかなかの傑作です。誠に上手く黒澤時代劇を翻案しております。ラストの鉄板は、出刃包丁にも匹敵するアイディアです。それから四半世紀も後のことになりますが、「バック・トゥ・ザ・フーチャー3」でイーストウッドの名前とこのオチが引用されており、ややさげすまれていたアメリカ本国でも、やっとマカロニ・ウェスタンが定着したかと、封切り当時、感慨深かったような記憶があります。もっとも、大スターとなったクリント・イーストウッドの映画だったせいかもしれません。(多分そうなのでしょう。実は、私も、この背の高い俳優の主演のマカロニ映画しか見ていませんから。(笑))

 Img_0004 そのイーストウッド主演2作目が、「夕陽のガンマン」です。何故、「続荒野の用心棒」ではなかったのか。そうです、他の映画で既に邦名を使われていたのです。原題を「ジャンゴ」。Img_0005 スキヤキの元ネタの一つです。ぬかるみの荒野の中、棺桶を引きずったフランコ・ネロは大スターになりました。この棺桶も抜群のアイディアです。ただ、この映画で残酷描写は一気に加速化します。(といっても、吐き気の出るような変態的な嫌悪感まではありません。)「夕陽のガンマン」の方も快調です。ポンチョや銃器なども道具立ても揃い、映像も、足のアップから遠くに相手が立っている独特の構図など、マカロニ・ウェスタンのスタイルが形作られています。

Img_0003 そして、「続夕陽のガンマン」です。これは、オリジナル脚本で、マカロニウエスタンの歴史の中で私の一番のお薦め作品です。南軍が北軍に変わるシーンなど意表をつくアイディアと先の読めないストーリー展開。私、何故か、旅先の観光地倉敷の映画館で見た記憶があります。イタリア映画にしてはなかなか物量も大きく、迫力もあります。DVDのメイキングを見ると、スペインロケで、軍隊の協力もあったようですが、なかなか撮影現場は大変だったようです。苦労が絵に反映されています。(笑)

先ほどもお話したように、このセルジオ・レオーネ監督作品以外のマカロニ映画は、実は余りみていません。何故かというと、当時軽業芸で人気のあった俳優の映画などは、銃の時代考証があまりにもめちゃくちゃという批判が多く、当時それがひどく気になったのです。

とはいうものの、何かの併映で見たのですが、婆さんから子供まで家族全員で悪漢達と撃ち合う映画がありました。年でよいよいのような婆さんが、突然、開き戸に仕込んでいた複数のライフルを取り出し、凄く元気に撃ち回るという場面のみを鮮明に覚えています。それ以外、題名も出演者も筋書きも全く覚えていません。どのたか、なんと言う題名の映画だったか、ご存知ありませんでしょうか。(ちなみに、「アウトロー」ではありません。)最近、何故か、気になって仕方ないのです。

2007年10月 5日 (金)

静かなる男

Img_0003 骨太のユーモアを持つ男くさい映画を取らせたら第一人者なのが、西部劇の神様ジョン・フォード監督でしょう。黒澤明なども、尊敬していたようですので、まず、間違いは無いでしょう。作品は、芸術性が高くシリアスなものもありますが、やはり、喜劇調の娯楽作品が私は好きです。もっとも、一番好きな映画は「荒野の決闘」ですが、この西部劇の話は、次の機会にしまして、今回は、「静かなる男」。フォード監督が故国アイルランドに限りない愛情を込めて作った映画です。アイルランドの独特の文化とフォードらしい雰囲気が融合した傑作喜劇です。いつもながら、ジョン・ウェインが主演で、移住したアメリカから故郷に帰ってきたボクサーの役です。この映画で最も有名なのが、延々と続くスポーツのような殴り合いの喧嘩シーンです。これは見ものです。野を越え、山越と(笑)・・ホントにフォード監督は、男同士の殴り合いが好きです。拳の会話というのでしょうか?でも、あんなのは、肉体も神経も頑丈な白人種ならでは、という感じです。その中でもモンスター級ですか。(笑)

 そのほか、気の強い赤毛の女優モーリン・オハラが良いですねえ。本当に綺麗です。飲ん兵衛の爺さんも良い味です。カトリックとプロテスタントの双方の牧師がそれぞれ良い。突然起き出す病人も良い等々、良かった点を挙げだしたら限がありません。さすがにジョン・フォードです。一味違います。それにしても、アイルランドの美しい景色とのどかな文化が宝物のようです。古き良き時代を映画の中だけでも楽しみましょう。

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