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2007年9月29日 (土)

戦略大作戦

長らく続きました戦争物は、「戦略大作戦」をもっていったん終了したいと思います。他にも、「史上最大の作戦」や「大脱走」、「エル・アラメン」、「眼下の敵」など紹介したい作品もありますが、それはまた別の機会にしたいと思います。

 Img_0006 さて、このトリに紹介する「戦略大作戦」は、真面目な(?)戦争物ではなく、戦争のドサクサに乗じてドイツ軍の金塊をごっそりいただこうというとんでもない野郎達の物語です。主演は、マカロニウエスタンで名を馳せたばかりのクリント・イーストウッド。それにテリー・サバラス、ドナルド・サザーランドなど芸達者な役者が集まり、全編、喜劇調で、しかもド派手なアクションシーンがてんこ盛りです。誠に、私好みの娯楽作品に仕上がっています。しかも、こんなふざけた内容なのに、キャタピラがきちんと動くタイガー戦車(あのプライベート・ライアンのキャタピラはCG製)や使用している火薬や爆破されるセット、動員兵士等の物量も凄いのです。まあ、ご覧ください。(何故か、戦車のキャタピラにはこだわります。(笑))

 思い出しても笑えるシーンが続きます。将軍の息子のたよりない上官が、戦場にヨットを持ち込んだり、まるでヒッピーのような戦車とその仲間達、設定自体もおかしい上に、戦闘シーンもふざけたものです。大音量を出して、敵を威嚇したり、爆撃された橋を見ての一言(この台詞のためにあの橋は爆破されたのか、と思わず噴き出します。)、噂を聞きつけた兵士が無数に境界線を突破するのも笑いますし、何も知らない将軍が、その勇気を褒め称えるのもさらに笑います。ラストは、マカロニウエスタン調で決闘シーンを再現するのもうれしくなります。そして敵のタイガー戦車長もいいなあ。何が良いかは、映画をご覧になってください。笑えます。

ともかく、笑えるシーンばかり思い出します。未見の方は、是非一度どうぞ。それにしても、あのタイガー戦車は、本物と似ているように思えますが、いかがでしょうか?詳しい方は教えてください。

2007年9月26日 (水)

ナバロンの要塞

戦争物で面白いのは、タイトルに要塞と付く映画です。大体、鉄壁の難攻不落の要塞を、少人数で侵入し、最後に要塞を吹き飛ばすというものです。最も有名なのが、「ナバロンの要塞」です。Img_0004 飛行機の爆撃も効果が無い厚い岩盤で覆われた絶壁の要塞。その中には、超大型の大砲が二門、海に向けて睨みを利かせているという設定です。連合軍は、制海権を確保するため、登山の専門家のグレゴリー・ペックをリーダーに、爆薬のプロのデビット・ニブン、テロの専門家のアンソニー・クインなどを送り込みます。敵駆逐艦との遭遇、絶壁の登山、村での逮捕、裏切りの発覚、そして、爆薬の点火までの時間差など、見せ場が連続します。また、それぞれの登場人物の裏も描かれ、傑作という名に値します。もっとも、これは、原作のアリステア・マクリーンの力でもあります。ただ、ペックの演技力の性か、当時、その非情さに馴染めなかった記憶もあります。一方、ニブンのユーモアが印象に残っています。ネズミ爆弾が可笑しい。そして、この映画のもう一つの主役は、巨大な2門の大砲の威容です。まさしくモンスターです。架空のもののようですが、その砲撃音に砲手たちが耳カバーをしているのが、リアルで説得力がありました。

同じ原作者の「荒鷲の要塞」という映画もありました。Img_0009 これは、単純なアクションものではなく、侵入の目的など少し捻ったストーリーであり、主演のリチャード・バートンが適役です。マカロニ・ウエスタンでハリウッドに凱旋したばかりのクリント・イーストウッドが無口なアメリカ兵を演じています。(まだまだ扱いが脇役のようです。)この要塞は、山の頂上にあり、ロープ・ウェイでしか登れません。当然、ロープ・ウェイ上でのアクションが展開されます。お勧めです。

ところで、バートンといえば、「ワイルド・ギース」も忘れられません。Img_0010 いわゆる傭兵であり、アフリカ内戦に絡んで、ある作戦を実行するのですが、雇い主に裏切られ、アフリカの大地で決死の逃亡を図るというストーリーです。傭兵の募集や訓練、参謀役のリチャード・ハリスがいかにもという良い味を出しています。ロジャー・ムーアも出ていますが、これは五月蝿いだけでしようがない。ともかく、毒ガスの使用をはじめ、全編に現代の戦争の非情さが出ています。(もっとも、最近の、正視に耐えないような凄まじいアフリカ内戦物とは、全然違います。のどかで痛快です。)

 最後に、第二次大戦物では、タイトルに「橋」がつくと、俄然面白く無くなります。遠いとか、地名とか冠したものは言うまでもなく、名作といわれる「戦場になんとか」もつまらないのですなあ。単なる偶然でしょうが、もし「橋」の付く映画で楽しいものはありますでしょうか?あれば、是非教えてください。

2007年9月23日 (日)

コマンド戦略

Img_0005 昔は、第二次世界大戦を題材にした娯楽アクション映画が沢山つくられていました。その楽しい記憶の中から1本。「コマンド戦略」です。ストーリーは、特殊部隊を創設するため、訓練をし、実践で成果を上げるというものです。主演は、ウイリアム・ホールデンで、特殊部隊の創設プロジェクトに反対したため、逆にその責任者にされ、苦労するという役です。何か、実際にも、よくあるような話ですが・・・(笑)。ともかくも、整然としたカナダ軍と、もてあまし兵の集まりのアメリカ軍部隊が、砂漠の中のある訓練場に集められ、この二チームが競争・喧嘩しながら、一つの部隊に成長していきます。その訓練のエピソードがこの映画の見所です。この笑いと汗の訓練のあと、実践でも見事な成果を上げてめでたしめでたしとなります。いわば「特攻大作戦」の大人数版で、さらに毒気を抜いた感じでしょうか。典型的なプログラム映画であり、何も考えずに安心して鑑賞できることは太鼓判を押します。残念ながら、まだDVD化されていません。できたら、何かのついでに販売してほしいものです。ということで、写真は、VHS版です。

2007年9月22日 (土)

バルジ大作戦

何故、映画ファンになったのか、よくよく考えて見ますと、中学生のときに友人と映画館に「バルジ大作戦」を見に行ったせいかもしれません。Img もともと幼い頃は怪獣映画やディズニー映画を見ていましたが、前にも書きましたように、看板にトラウマなどありましたので、余り映画が好きではありませんでした。(今でも信じられませんが・・)そんな私が初めて映画館で見た洋画が「バルジ大作戦」でした。字幕物も最初かもしれません。大画面で、邦画とは桁外れにスケールが違う映像が繰り広げられ、非常に面白かった記憶がありました。特に、タイガー戦車が物凄い迫力で、米軍の砲弾など跳ね返す装甲の威力にも圧倒されました。まさしくモンスターの迫力でした。このときから、映画の魅力に取り付かれたのだと思います(多分)。もっとも、当時は全く映画の知識がなく、主演のヘンリー・フォンダについて、何故、こんなさえない年寄りが主演なのか、不思議だったのを今でも覚えています。今では全くの笑い話です。また、ロバート・ショーのドイツ将校の印象は強かったものです。それと再見して、後年クリント・イースドウッド主演の「戦略大作戦」にタイガー戦車長として登場した俳優が、ショーの部下だったのには驚きました。その後、映画雑誌などの映画評価を気にし始めた頃、タイガー戦車が実物に似ていないなどとの評価もあって、この映画とはしばらく遠ざかっていました。今回、DVDで再見したところ、まず、シネスコ版の横の長さに感動します。演出は、確かに凡庸で、「史上最大の作戦」のような緊迫感はありませんが、横長の画面に、無数の戦車が登場し、砲撃を繰りかえすなど、CGを使っていない本物の物量の凄さに改めて素直に感心しました。小手先よりも、こんな大らかな演出もあっても良いのではないか、映画の原点の面白さを感じました。そして記憶が甦り、その当時のことまでも思い出したような気にさえなります。ああ、やっぱり、映画は良いものです。そういう意味で、「バルジ大作戦」は、私に取って特別な存在かもしれません。

ドノバン珊瑚礁

Img_0009 ジョン・フォードの喜劇を紹介します。「ドノバン珊瑚礁」です。太平洋の楽園に住むドノバンとその仲間達のお話です。いかにもフォードらしい、男たちのつきあいを喜劇調に描きます。あの「静かなる男」や「黄色いリボン」などで繰り広げられた、スポーツのような殴り合いは健在です。ストーリーは、第二次大戦直後(?)、ジョン・ウェイン扮するドノバンが住む南の島にその島でドクターをしている上官の娘がボストンから尋ねてくることで、大騒ぎになるという話です。何故かって?ドクターには島の娘の間にできた3人の子ども達がいたのですし、尋ねてきた娘が独身の美人で大金持ちだったからです。しかも、その娘は、雪の降るボストンの上流社会に縛られたがちがちの堅物なのです。ジョン・フォードの映画ですから、この娘は、島に到着早々から、とんでもない目に次々と会います。かわいそうですが、笑います。この女優の体当たりな演技が良い。海に落ちたシーンは最高。足と靴が効果を高めます。そして、またまたジョン・ウェインと対立(?)するのが、以前ご紹介のリー・マービンです。本当に互角に遊んでいます。もっとも、この人は、「リバティ・バランスを撃った男」で、ジョン・ウェインやジェームス・スチュアートの敵役として、そのタイトルの名を持つほどの存在感がありますから、当然かもしれません。もっともこの映画では、仲間同士のふざけあいというものですが・・・。さらに、特筆すべきは、島(フランス領)の総督とその召使です。まあ、ご覧ください。男の楽園、男の願望、男同士の友情などを、コメディタッチで、フォードらしく、好き勝手に描いた映画です。女性ではなく、男性の方なら、一度ご覧ください。この映画は、インディアンをどんどん殺せた映画を作った時代のものかもしれません。今の時代では、絶対に作れないような問題に全く気が付かない(ふりをした?)能天気な映画です。ただ、笑ってください。

2007年9月19日 (水)

ミスター・ロバーツ

もう一作、戦争喜劇を紹介します。しかし、単なる喜劇の枠を超え、色々なことを考えさせられます。本来、私が見たくないタイプ(?)の映画なのですが、余りに面白い語り口のため、全く気になりません。「ロバーツ」という名の副官が乗る輸送船の中での物語、その名もズバリ「ミスター・ロバーツ」です。Img_0003 尊敬をこめたタイトルです。この主人公をヘンリー・フォンダが演じます。たたき上げで名誉欲・支配欲が強い小さな船の支配者である艦長をジェームス・キャグニーが憎憎しげに演じます。また、若きジャック・レモンが未熟な士官を演じて、ドタバタを一手に引き受けます。しかしそれ以上に熱く演じたのが、この輸送船で働く船員達です。この船員達のために上司と戦う副官なのですが、艦長とのある取引のために、船員達から誤解を受けて辛い立場になるのですが・・・。というような中間管理職の立場、馬鹿で嫌味な上司、能天気な部下との関係等々、人生のことなどいろいろと考えてしまいます。しかし、そうしたシリアスさ、人情話を差し引いても、船員達の羽目を外した乱痴気騒ぎ、しかも、それを直接的でなく描き出しており、喜劇としてより効果が上がっています。実は、監督は、西部劇の神様のジョン・フォードですから、当然かもしれません。もっとも、体調を崩してもう一人の監督との合作となりました。

 一度、ご覧ください。「椰子の実」勲章などは、本当に考えさせられます。ラストも少し重いですが、それを最後の最後でジャック・レモンが口直ししてくれます。キャグニーの顔も忘れられません。

2007年9月18日 (火)

ペティコート作戦

ところで一口に戦争映画といっても様々あります。今回ご紹介するのは、「ペティコート作戦」です。タイトルのままお色気戦争喜劇です。Img_0001 私のごひいきのケリー・グラントが生真面目な潜水艦艦長に扮し、喜劇も得意な二枚目トニー・カーティスが物資調達の名人の将校を演じます。「大脱走」などをはじめとして軍隊映画では、しばしば闇で物資を調達する達人が登場しますが、カーティスがとんでもない調達方法を嬉々として披露します。この辺は本当に笑います。そして、この潜水艦が南の島で5人の看護婦を拾ったところから、この看護婦をめぐって楽しいドタバタが繰り広げられます。タイトルの意味は見てのお楽しみです。堅物の機関長が儲け役です。喜劇が得意なブレイク・エドワード監督の真骨頂ともいえますが、この映画の見所は、まさに抱腹絶倒の潜水艦の登場です。最初に見たときは、ホントに信じられないほど馬鹿げた光景です。大真面目にこんな映画をつくったことに感心します。さすがに「グレートレース」で、さまざまな珍奇な乗り物を登場させ、次々とぶっ壊した監督です。笑いのスケールが大きいです。是非、一度ご覧ください。絶対、笑います。なにしろ、CGではないのですから・・。なお、この映画は、まだDVD化されていません。写真はVHSです。一日も早くDVDを出してほしいなあ。また、余談ですが、この映画は、あのバロン吉元の漫画「どん亀野郎」の一話にも引用されているのではないかと睨んでいます。

2007年9月17日 (月)

特攻大作戦

「めぐり逢えたら」の映画の中で話題となっていました戦争映画「特攻大作戦」です。最近、第二次世界大戦を題材にした戦争娯楽アクション映画はめっきり少なくなっています。この忘れられたジャンルの中の傑作です。敵役のドイツ軍をやっつけるという単純明快なアクション物は、大層面白く、また私を映画の道に引きずり込んだものだけに、こうした状態は寂しいものです。そういえば、インディアンをバタバタと倒す単純な西部劇も、いまや絶滅しました。「たかが映画じゃないか」と言いたいのですが、世の中は難しい時代になったものです。

Img さて、この映画は、十二人の精鋭が、ドイツ軍の難攻不落の基地に侵入し、壊滅させるというお話ですが、「七人の侍」や「ナバロンの要塞」と決定的に違うのは、「ザ・ダーティ・ダズン」という原題のとおり、軍刑務所の悪を引き連れて作戦を遂行するという、誠に男心をそそる設定なのです。特に、作戦リーダーと反発する囚人達とのかけ引きややり取りは見ものです。監督は、男くさいアクション映画の雄ロバート・アルドリッチです。この監督の作品には、西部劇から戦争ものなど、数々のごひいきがあります。一例を挙げると「ヴェラクルス」「飛べ、フェニックス」「北国の帝王」「カルフォルニア・ドールズ」等ですが、これはまた別の機会で紹介します。

さて、出演者も豪華です。作戦リーダーがリー・マービン。「プロフェッショナル」でもリーダー役を演じ、いかにもという役柄です。ジョン・ウエイン(ドノバン珊瑚礁)や三船敏郎(太平洋の地獄)とも互する実力を遺憾なく発揮します。それに対する囚人役には、ジム・ブラウン、ドナルド・サザーランド、チャールズ・ブロンソン、テリー・サバラス、ジョン・カサヴェテスなど、説明の必要も無い曲者俳優がこれでもかと配されています。さらに、軍隊物には欠かせない、アーネスト・ボーグナインやロバート・ライアンも顔をみせます。

 囚人達の集合から、訓練、作戦決行という中で、囚人達との掛け合いや壮絶なアクション、ユーモアを散りばめながらの骨太の演出が光ります。CGなど全く無い時代です。爆発、スタント、セットなどの物量に驚いてください。娯楽映画の王道です。是非、一度ご覧ください。

2007年9月16日 (日)

めぐり逢えたら

Img 往年の名画に「めぐり逢い」という映画があります。お話は、ヨーロッパからニューヨークに向かう豪華客船で男と女が出会い、恋に落ちて、エンパイアステートビルの屋上での再会を約束して別れるという典型的な恋物語です。これまで何度か映画化されていますが、ケリー・グラントとデボラ・カーが共演する映画(写真のDVD)が私は一番だと思います。(なにしろ、その前と後の映画は見ていないのですから(笑))この映画もそうですが、摩天楼の中でもエンパイアステートビルは、アメリカ人にとっては象徴的な建物らしいです。キングコングも登りましたし、恋人と待ちあう場所なのかな?日本人は東京タワーかな?

 というのが前振りで、この映画をモチーフにした「めぐり逢えたら」という映画が実に良いのです。Img_0004 芸達者なトム・ハンクスとラブコメの女王メグ・ライアンが共演した映画です。現代的な恋愛映画の白眉といっても良いのではないでしょうか。子供を持つハンクスがラジオの人生相談番組に登場したところから、たまたま視聴したライアンの心が揺れはじめます。既に同棲的なパートナーもいるし、様々な悩みを相談する友人もあり、そのやりとりなど、今時のリアルな日常生活をユーモアを交えながら、丁寧に描き、積み重ね、ラジオ番組の放送から生まれた恋という嘘っぽい設定を一気に力技で見せ切った(笑)演出は見事です。遠くから見つめるシーン、エンパイアステートビルの場面など、古き良きドラマを懐かしく思い出させ、心が安らぎます。メグ・ライアンが最も旬の時の映画です。

また、それ以上に、アメリカ人は、歴史が新しいせいでしょうか、映画を文化として誇りにしていることがよく感じられました。友人同士で、古い映画の話に興じるシーンは本当に共感しました。女たちが前段の「めぐり逢い」の名シーンを、そして男たちは、なんと「特攻大作戦」を話題にしているのです。私もこの戦争娯楽映画はごヒイキであり、思わず会話に参加したかったものです。その会話の中で、アメフトの花形選手だったジム・ブラウンは依然として人気が高かったことがわかりました。日本では、ファン同士でも、まず「特攻大作戦」は出てきません。文芸大作や芸術作品ではない、純粋な娯楽映画をもっともっと評価しましょう。

2007年9月15日 (土)

カサブランカ

イングリッド・バーグマンの話が出ましたら、「カサブランカ」を避けて通ることはできません。Img_00121 この誰もが知っている名作は、プログラム映画を作る職人監督が創ったものです。その演出の一つ一つは、例えば、雨で手紙のインクが滲む場面や「昨日ことは・・明日のこと・・」などのキザとも思える台詞などに代表されるように、舞台劇のごとく、過剰で、陳腐で定番なのです。セットもチャチです。しかし、映画全体としては、なぜか非常に面白く、魅力的なのです。いくつかの奇跡のような偶然がこの作品を名作にしたのだと思えます。まずは、なんといってもイングリッド・バーグマンの登場です。まだ、若く最も美しく時期です。銀幕で文字通り光輝いて見えます。「真の美人」という意味を実感してください。一方、ボガードは、男の美学とか言われますが、あの容貌など好みによりますので、まあよくわかりません。私は気障な男には辛口なのです(笑)。ただ、透明人間で有名な、名脇役のクロード・レインズが演じた警察署長が人間くさくて圧倒的に良い。「風はビシーから吹いています。」などの名文句が忘れられません。そしてあの名曲「時の過ぎ行くまま」が耳について離れません。撮影裏話を読むと、この映画は、シナリオがかなり遅れていたようで、同時並行的に撮影が行われ、バーグマンなども最後にどちらの男を選ぶのか、筋書きの先が判からなかったそうです。これが良かったのかもしれません(笑)。また、モノクロ映画の良さが出ていました。一度、LDで発売されていましたカラー化した「カサブランカ」を見ましたが、ホントに後悔しました。粘土製のようなバーグマンなど観たくもありません。モノクロは、セットのあら等が見えなくなります。例えば、ラストの飛行場における霧と二人の男など、絵に描いたような人工のセット物ですが、芸術性すら感じます。そうしたことが、この映画にあっては、すべてが結果オーライで、魅力的に見えます。チャチなセットすらも、名画へ昇華して見えたのです。・・・やはりこれは奇跡の映画です。なにしろ、バーグマンがあんなに背が高かったとも思いませんでしたもの・・・(笑)

2007年9月12日 (水)

潮風のいたずら

クラシックな作品ばかりでしたので、最近の作品「潮風のいたずら」をご紹介します。Img 実は、「あなただけ今晩は」の働くシーンから連想しての登場です。そのシーンは、ネタばらしになるので、映画を見て探してください。(もっとも、私だけの感覚かもしれませんが・・。)この作品は、ゴールディ・ホーンとカート・ラッセルの喜劇です。話は、高慢な金持ち夫人のホーンが、豪華ヨットで立ち寄った場所で、ラッセル扮する4人の子持ちでやもめの大工に出会うところから始まります。そして、突然起こった潮風によるトラブルにより、ホーンが記憶喪失となったため、大工が自分の妻だと騙し、育児や家事に召使のようにこき使うのです。その貧乏生活の体験から、女は生まれ変わり、だらしない男も徐々に影響されて、いつしか二人の間に恋が・・という現実味の全く無い(笑)、しかしどことなく心惹かれる話なのです。

 まず、見所は、ゴールディ・ホーンのとんでもないハイレグ・ファッションです。チビでギョロ目のコメディアンというイメージがあったのですが、意外なことにスタイルは素晴らしく、美尻を惜しげもなく出しているのです。実は、このハイレグ・ファッションは、単なる客サービスではなく、ストーリーの展開上どうしても必要な伏線だったことがわかります。しかし、欧米の上流階級という人種は、あんなものかもしれないとつくづく思います。まあ、それだけ、ホーンの演技が達者ということかもしれません。また、記憶喪失になった後のラッセルと4人の子ども達との生活のドタバタは、いつもの喜劇的な才能をいかんなく発揮します。何度と無く、見ても厭きません。気楽にご覧ください。

それにしても、「サボテンの花」で、イングリット・バーグマンやウォルター・マッソーと共演していた頃とは、やはり貫禄が違います。Img_0011

この映画は、バーグマン扮する、サボテンに例えられるオールドミスの看護婦と、マッソー扮する独身主義の歯科医のラブ・コメディです。愛人役のホーンには損な役回りでした。なにしろ、観客は、あの「カサブランカ」のヒロインのバーグマンの味方でしたから。もっとも、その頃は、やや容貌も衰えており、しかも、あんなに背が高くて、こんな田舎者だったのか、という印象も正直持ったのですが、多分、それは、バーグマンの演技力の賜物だったのでしょう。背の高さ以外は、そんなはずは無いのですから。(きっぱり)この映画も小品ながら、面白いですよ。機会があればご覧ください。

2007年9月11日 (火)

あなただけ今晩は

ビリー・ワイルダー監督の作品には、これまでにご紹介したほか、戦争物や社会派もののシリアスなものをはじめ、かの有名なマリリン・モンロー主演の「七年目の浮気」「お熱いのがお好き」など、数多くの傑作があります。Img

「七年目の浮気」のモンローのスカート抑えの有名なシーンです。この場面は、確か「大アマゾンの半魚人」の映画を見た帰りだったと思います。(それだけです(笑)が、確か、「半魚人がかわいそう」という台詞がありました・・・。)モンローは、肉体派女優というより稀代のコメディアンヌと言う評価はうなずけます。

Img_0002 「お熱いのがお好き」。これが、ワイルダー喜劇の最高傑作だと言われています。ギャングから追われるジャック・レモンとトニー・カーティスが女装して逃げる途中に、マリリン・モンローがからみ、さらに年を食ったプレイボーイが男と知らずジャック・レモンに惚れてしまい・・・、最後の最後で有名な台詞で幕を閉めるというストーリーです。モンロー・ウォークと賞されたばね仕掛けで動くような足と腰の運びをご覧ください。かかとの高さの違う靴を履いていたとか・・・という裏話もあります。この時代にもかかわず、けっこう際どい台詞や意味深な行動があります。

しかし、それ以上に、私が好きな映画が「あなただけ今晩は」です。Img_0001 艶笑喜劇であり、ロマンティック・コメディでもあります。ストーリーは、シャーりー・マクレーン扮する可愛い娼婦に、堅物の新米警察官ジャック・レモンが出会い、そしてとんでもないことが起こって・・・というもので、ビリー・ワイルダー話術の名人芸に酔ってください。とにかく脇役の酒場の親父が実に良い。博識強記風で怪しげな経歴を自称し、その「これはまた別の話」という決め台詞が忘れられません。この言葉は和田誠も著書で推奨されています。ところが、写真のDVDでは、この有名な台詞を「余談」と訳しているのです。全く、字幕翻訳家のバカヤロウと言いたいです。あの有名なカサブランカの「君の目に乾杯」をNHKが「わが命」と訳して以来の無神経ぶりです。

 まあ、それはともかくとして、一度ご覧ください。カラーのせいか、モノクロの傑作群と比較して、ほんの少し甘さもあるかもしれませんが、硬いことを言わずにごゆっくりご鑑賞ください。

最後に、おまけで、もう1本。最近やっとDVD化されました。Img_0003 ネッシーやクリストファー・リーが出演する「シャーロック・ホームズの冒険」です。封切り当時、淀川長冶が絶賛していたのを記憶しています。それほどとは思いませんが、やっと再見しましたので、それを記念にご紹介です。

まだまだ紹介したいアガサクリスティ原作の作品などもありますが、これはまた別の話で。

2007年9月10日 (月)

麗しのサブリナ

Img_0006 そもそも、何故、オードリー・ヘップバーンのファンなのか。私の若い頃から、映画雑誌などの人気投票で、常に人気第一位を誇っていたのですが、その写真をみても四角い顔のせいか、さほど美人とは思っていませんでしたし、どうして人気が高いのか、不思議でなりませんでした。・・・そう、「ローマの休日」を名画座で見るまでは・・・。映画自体の完成度の高さに加え、その銀幕の姿に一目ボレです。以来、ウン十年ファンを続けています。(一筋ではないですが・・・(笑)。)「ローマの休日」については、「スカートの中の靴」、「彫刻と配管パイプ」、「手すりと酔っ払い」など話したいことがたくさんありますが、いずれ登場するであろうウイリアム・ワイラー監督の機会に譲るとしたいと思います。

 今回は、お約束どおり「麗しのサブリナ」のお話です。Img_0003 前回ご紹介しましたように共演者も凄いですが、やはり、ビリー・ワイルダーの演出が光ります。ストーリーはお伽話風にいうと「あるお金持ちの車庫の上にお抱え運転手の娘が住んでいました。そして、ご主人の次男(ウイリアム・ホールデン)に身分違いの片思いの恋をしていました。ところが、パリ留学から見違えるほど洗練されて帰国した娘に、今度は次男が夢中になってしまいました。それを知った御主人様や堅物の長男(ハンフリー・ボガード)が邪魔をするのですが、ミイラ取りがミイラになって・・・。」という一種のシンデレラ物語です。現在の目から見れば、製作された時代も時代ですので、身分制度や階級意識などやや古臭いのが難点ですが、ワイルダーの磨きぬかれた脚本と軽妙洒脱な語り口によってロマンティック・コメディの傑作となりました。少し前、リメイクもされましたので、向こうでも評価は高いと思います。ただ、公開直後は、オードリー主演の二作目として期待が高かったのか、余り評判は芳しくなかったですが、あの三島由紀夫が「ハンフリー・ボガードが学生服(?)を着た表情など、面白いぢぁないか。」などと高く評価した逸話もあったそうです。やはり大作家の目は高いですなあ。ともかく、この映画も見所は、小道具の使い方の見事さです。コップとお尻とハンモック・・・映画をご覧ください。信じられないほどの馬鹿話ですが、笑います。ヘプバーンの衣装も、「サブリナ・パンツ」として流行しました。そして、やはり、なんといっても、ハンフリー・ボガードが儲け役です。三島由紀夫の褒めた場面は思わずふき出します。

それにしても、「ワイルダーならどうする?」という評論も出されている名匠ビリー・ワイルダー監督の作品は、どれも練りに練った脚本と名人芸の語り口に魅了されます。私のお気に入りの監督の一人です。次回は、その作品の中から、喜劇を中心にいくつかの作品をご紹介しましょう。マリリンかな?

2007年9月 9日 (日)

昼下りの情事

オードリー・ヘップバーンの代表作といえば、やはり本格デビュー作であって、アカデミー主演女優賞を得た、巨匠ウイリアム・ワイラー監督の「ローマの休日」です。この映画は、日本では、未だに人気投票の上位に位置してほどの名作です。当時、オードリーの登場は、女性の憧れのスタイルを「痩せ型」へと一変させましたし、ビリー・ワイルダー監督は、「胸のふくらみの魅力が無くなるだろう。」とまで、のたまったそうです。幸いなことに、この予想は、外れましたが・・・(笑)この誰でも知っている映画は、別の機会に回しまして、今回は、「昼下りの情事」です。Img_0005

喜劇の名匠ビリー・ワイルダーの監督の艶笑喜劇の傑作です。この題名に変な誤解を抱く向きもあろうと思いますが、要は「夜までには帰る恋」という意味です。恋の都パリの紹介から始まるこの映画には、小粋で緻密に計算された笑いが、様々な小道具とともに、散りばめられています。ストーリーは、オードリー扮するAという頭文字の少女が、探偵業を営む父親のデータを駆使して、クーパー扮する世界的なプレーボーイの富豪を相手に、恋の駆け引きを行うというもの。文書でかけば味気ないのですが、名人落語のような、名匠の演出の語り口に身を任せてください。計算されつくされた脚本と、演出の妙にため息が出ます。ともかく、小道具の使い方が素晴らしい。隣室の飼い犬、チェロ、録音機、ジプシー楽団、酒のワゴン、胸ポケットの花、サウナ風呂・・・書き出したら切りがありません。脇役もいいです。モーリス・シュバリエ扮する父親が良い。彼の最後の表情が堅物のうるさい批判を消したらしい。そして、ジプシー楽団のバイオリンとラストの・・・・・(これは映画を見てのお楽しみ)、おっと浮気された夫も捨てがたい。そして、「ファンシネーション(魅惑のワルツ)」のメロディ-をご堪能ください。ともかくも、名作中の名作です。なお、最後のファッションは、「アリアーヌ巻き」というそうで、公開当時、世界中の女性が真似したそうです。

 唯一難を言えば、オードリーが若く、売り出し中の頃ですので、共演のクーパーとの年の差が気になりますが、筋書き的にも良くある話ですし、当時は興行的にも大スターとの共演が宿命でした。最初が、グレゴリー・ペック、次が凄いのですが「麗しのサブリナ」でウィリアム・ホールデンとハンフリー・ボガード。その次がヘンリーフォンダ、さらに「パリの恋人」でフレッド・アステアと踊り回り、そしてこの映画でクーパーとなります。まあ、親父殺しのようなものですが、クーパーは余りの年の差に機嫌は良くなかったとか。(わかるような気がします。・・笑)

ついでに「麗しのサブリナ」の話もしたくなりました。これは、次回に続きます。すみません、「オードリー・ヘップバーン」のファンなもので、長くなります。(笑)

シャレード

ミュージカル映画などの名手スタンリー・ドーネン監督がヒッチコックの向こうを張って作った、おしゃれで楽しいサスペンス映画を紹介します。Img_0002 オードリー・ヘップバーンとケイリー・グラント主演の「シャレード」です。オードリー主演のラブ・ロマンス物というイメージのせいか、少し評価や扱いが低いような気がしますが、どうしてどうして、立派な本格的なミステリー・サスペンス映画です。脇の出演者も凄い顔ぶれです。ウォルター・マッソー、ジョージ・ケネディ、ジェームス・コバーンなどそうそうたるものです。

ストーリーは、冒頭ヘップバーンの夫が殺され、その葬式に次々と不審な人物が現れ、夫の秘密が暴かる中で再び殺人事件が起こります。頼みにしていたグラントまでが・・・。という異常な設定なのですが、そこはヘップバーンものであり、軽妙洒脱な台詞やユーモア満載の徹底した娯楽作品ですので、安心してご覧ください。一方で、推理小説の定石はきっちりと抑えており、その見事な筋書きに感心します。ミスディレクションの教科書のような物語です。結末は言わないようにお願いします(笑)。そして、お約束の主演二人のラブ・ロマンスです。グラント独特の何を考えているかわからない表情がサスペンス物には良く似合って、それが逆にヘップバーンとの上品で小粋な掛け合いにはより意表をついて効果的になります。しかし、グラントが演じた服を着たままのシャワーシーンや気の利いた台詞回しには脱帽です。グラントの印象が強く一人勝ちです。思えば、この映画は、ヘップバーン物ではなく、どうやらグラントの映画と言っても良いようです。ということで、次回は、オードリー・ヘップバーンのファンとして、死してなお日本で一番人気がある女優オードリーの主演映画から、私のお気に入りを推薦します。

泥棒成金

忘れないうちに、ヒッチコック作品からもう1作だけご紹介します。ヒッチがご執心だったクール・ビューティのグレース・ケリー、そしてケイリー・グラントが共演した映画です。なんか、この主演者の名前は、良く似ています。ひっくり返すと同じような感じです。(余談です。)Img_0001

ストーリーは、もと宝石泥棒だが戦争の英雄となったことから高級避暑地で悠々自適の生活を送るグラントが、宝石盗難事件の容疑を掛けられたことから、被害にあったアメリカの大富豪の一家と一緒に真犯人を探すというものです。この映画は、ヒッチ渾身の作品というより、ヒッチコックがお気に入りの俳優とお気に入りの避暑地で贅沢な撮影バカンスを楽しんだようなものです。サスペンスそのものよりも、随所に遊び心が散りばめられています。何も考えずに、主演二人を楽しんでください。特に、大富豪の一人娘役のグレース・ケリーの美しいこと。冷たく、ホットなこと。絶頂期といっても過言ではありません。突然のキス、奇抜な水着姿、「腿がいい?胸がいい?」という意味深な台詞。ヒッチが夢中になるのもわかります。それに対し、ケイリー・グラントも余裕の演技絶好調です。お得意の表情もユーモアと小粋で、男なら惚れ惚れします。昨今の下品な「チョイ悪オヤジ」などは、爪の垢でも飲んでほしいものです。特に、ラストのラストの一瞬の表情にご注目を。

さらに、グレースケリーの母親役が素晴らしく良い。石油を当てて大富豪に成り上がった者の幸と不幸を上手く出しています。ヒッチ自身も自分が嫌いな卵に対しての仕返しをこの母親役にさせるほど、設定が気に入っているのではないでしょうか。

ともかくも、ヒッチコック作品の中では、エポックメーキングな内容ではないですが、ゴージャスで、最もユーモアと遊び心に満ちた楽しい作品です。写真のようにDVDも発売されています。一度、是非、ご覧ください。

 もっとも、グレース・ケリーがヒッチ映画に出演する最後の作品となり、その後まもなく映画界を去った(ホントの女王に玉の輿)のですから、ヒッチコックにとっては、記念すべき作品になってしまったのかもしれません。なにしろ、その後、金髪の主演女優を何人も迎えるのですが、どうも、上手くいかなかったようです。女優の中には、随分ヒッチを嫌った人もいたようです。まあ、無理もありません。(笑) しかし、こうした創造現場の奥の深さ(バタバタ?)こそが作品そのものに厚みを与えるような気がします。実は、私は、撮影メイキングが大好きで、昔は本や雑誌でしたが、最近は、DVDのオマケを見るのが、楽しみです。それにしても、DVDスペシャル版は少し高くないでしょうか。とってつけたようなフィギュアなどくだらないオマケは入りませんゾ。もっとメイキングの内容を充実してほしいものです。

2007年9月 8日 (土)

大アマゾンの半魚人(その4)

再び「大アマゾンの半魚人」です。第4弾です。今年の5月(2007.5.6ブログ)以来、「半魚人」にはご無沙汰していましたが、今回、ある方から半魚人の頭部キットを頂きました。早速、オーソドックスな色合いで塗装してみました。正面顔の写真がピンボケになってしまいましたが、どうぞご覧ください。Dscn77761 Dscn77771Dscn77681

最近、気が付いたのですが、ホライゾン社のモデルキットの箱絵の色使いも心そそられます。緑系ではなく、薄茶系なのです。次の機会に是非挑戦したいと思います。

私信(?)になりますが、貴重なキットをありがとうございました。再び、ギルマン熱に火がつきました。(笑)HPもいつも楽しく拝見させていただいています。この場を借りて御礼申し上げます。今後ともよろしくお願いします。

北北西に進路を取れ

ケイリー・グラントの話となれば、まずは、アルフレッド・ヒッチコックの傑作「北北西に進路を取れ」が浮かびます。Img_0007 一市民がスパイ戦争に巻き込まれ、様々なトラブルに会うというストーリーで、サスペンスとアクションとユーモアとラブロマンスが絶妙なさじ加減でブレンドされた、ヒッチコック監督の絶頂期の作品です。

グラント独特の、何を考えているかわからないような表情をしたまま、とうもろこし畑で複葉機に襲われたり、ラシュモア山の上で格闘する場面などは忘れられません。サスペンス・アクション映画の古典です。また、最後のトンネルのシーンは、意味深な場面として、ファンの間に長く語り伝えられてきています。ところで、題名の意味はなんなのでしょう。北西ではなく、北よりの北西?よくわかりません。一説によると、意味の無い言葉を意味ありげに使う映画の内容を象徴したものとか。本当でしょうか?一度、古き良きサスペンス映画をお楽しみください。

ところで、ヒッチコック映画には、ケイリー・グラントが良く使われています。というのも、ヒッチコック監督は、主演は美男美女が前提。特に、女性は金髪が絶対条件です。一度、オードリー・ヘップバーンを起用しようとして、とんでもない設定を考えたとか、まったく、煮ても焼いても食えないオジサンであります。伝記などを読むと、お気に入りのクールビューティが映画界を去ったときは、相当に見苦しい有様だったようです。芸術を生み出す作家の心の中には、常に魔物が棲んでいるとか、まあ、一般常識人では、良い作品を作り出すことなどはできませんが、相当にへそ曲がりだったようです。 その現場の逸話、作品の質など、どれをとっても、サスペンス映画作りのモンスターと言えます。(笑)。この機会に、ヒッチコックの映画を見ませんか?なにしろ、サスペンスを中心とした一連の映画群は、演出のテクニックなど、いまなお、教科書となっていますし、様々な評論等で伝説となっています。

 私のお勧めしたい映画は、まず、①「海外特派員」・・・ゲイリー・クーパーが主演を断って、完成後非常に悔やんだという一品。②「断崖」・・・グラントが手に持ったコップの光るミルクが必見。③「見知らぬ乗客」・・・テニスの試合を見ない視線の恐怖。④「裏窓」・・・グレース・ケリーをご覧ください。⑤「泥棒成金」・・・グラントのユーモア演技絶好調。⑥「めまい」・・・演出テクニックに酔ってください。⑦「サイコ」・・・シャワーシーンの演出には、シャワーの穴まで特製です。⑧「鳥」・・・カラスが怖い。 こんなところですか。まあ、好みです。しかし、「めまい」、「北北西」「サイコ」「鳥」と製作していた時期が、ヒッチ監督の黄金期であったことが良くわかります。

最後に、ヒッチコックの有名な言葉をお送りします。演技に悩むイングリッド・バーグマンに言った「たかが、映画じゃないか。」です。映画づくりに心血を傾けたヒッチコック監督が言ったことに千金の重みがあります。

2007年9月 6日 (木)

毒薬と老嬢

最近、ブログが低迷しています。どうやら、SF・ファンタジー映画に限定していたのが、その原因だと気がつきました。このブログには、私自身が少しでも気に入った映画を紹介したいという思いもあったのですが、最近のSF関係映画に触手も動きません。また、若い方があまりにも古典を知らなすぎることにも気がつきました。そこで、9月からは、ジャンルにこだわらず、古典に返りながら、私のお気に入りの映画をご紹介していきたいと思います。といっても、芸術作品や文芸作品ではありません。あくまでも娯楽作品です(笑)。

その第1号が、1944製作の「毒薬と老嬢」です。いきなり、フランク・キャプラ監督の異色作です。フランク・キャプラといっても若い方は知らないと思いますが、古き良きハリウッドの巨匠です。理想主義的な作風の中で、この映画は、ブラックユーモア・コメディの傑作です。もともとは、大ヒット舞台劇の映画化ということで、最近でも幾度と無く再演されています。Img

ストーリーは、天使のような人の良い二人の老女が、実は身寄りのないお年寄りを相手のためになると信じて次々と毒殺しているという奇想天外な物語です。といっても、最近の出来事を考えると、笑い飛ばせない気もしますが・・・。ともかく、全編、気の利いたギャグがちりばめられています。そして特筆するのは、なんといっても主人公のケリー・グラントです。この粋な二枚目俳優は、独特なユーモアをかもし出す雰囲気が持ち味で、私のお気に入りの一人です。ともかく、その一挙一動が笑いを誘うのです。目をむく表情や困ったような顔は絶品です。

 さらに、「ボリス・カーロフ」が怪物の代名詞という時代の産物なのでしょうか、その実名がギャグに使われています。舞台では、怪物のような殺人狂をボリス・カーロフ自身が演じたそうす。見てみたかったものです。映画では、別人が演じていますが、一度是非ご覧ください。ルーズベルト大統領とパナマ運河を見に行きたくなります。(笑)

ジャンルを外した筈なのに、やっぱり、怪物がでてきます。(笑)

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