無料ブログはココログ

2024年12月11日 (水)

一番くじ/ゴジラ70周年アニバーサリー

 ゴジラ映画が公開されるたびに、一番くじのゴジラシリーズが発売されてきました。一番くじについては、これまでも何度か紹介(2021.7.28当ブログ参照)してきましたので、ここでは説明を省略しますが、今回新作映画の公開がないにもかかわらず、発売されたのは、今年が初代ゴジラ公開から70周年にあたることからのようです。そのため、初代ゴジラ(モノクロバージョン)が一番の当たりであるA賞となっています。商売ではあの手、この手といろいろ考えるものですねえ、感心しました。

 ただ、そのA賞の初代ゴジラの造形は、”国会議事堂襲撃バ―ジョン”ということですが、なんか昔製作していた造形物をそのまんま持ち出してきたかのような印象で、新鮮味が無く、あんまり感心しません。
 さらに、2番目の当たりともいえる”ラストワン賞”は、初代と対を為すように「ゴジラ-1.0」のモノクロ版なのです。まあ、映画もモノクロ版が公開されたことから、そうなのでしょうが、肝心な模型が以前に発売したカラー版のA賞を流用したようで、さすがに安易ですよねえ。

20241210_1510261 20241210_1510541  しかし、今回の一番くじの目玉は、A賞、ラストワン賞にあらず、なんといってもB賞の「呉璽羅」です。呉璽羅とは、いうまでもなく「ゴジラ-1.0」に登場する、原爆に被爆する前の恐竜のような巨大生物であり、「ジュラシック・パーク」のティラノサウルスのような暴虐ぶりを発揮します。あの時、機銃を撃っても再生能力はあるわけですから、殺せるはずもなく、主人公は悪くないのだ(笑)。

 20241210_1512102 ちなみに、呉璽羅の模型は、これまでバンダイから子供向けのソフビトイしか発売されていなかったので、実にありがたい。ただ、B賞ですからサイズは長さ24cm、高さは13cmと小さいのですが、精緻な造形が実に見事で、映画のシーンをよく再現しています。
 この呉璽羅は、オークションで高値で購入した甲斐がありました。一応、A賞もセットで早い時期にゲットしていましたが、最近のオークションでは商品数が多かったのか、やや値崩れしているのが悔しいなあ(笑)。最後に、おまけですが、A賞の初代ゴジラもご覧ください。なんか、モールドが甘い気がしますでしょ。残念でした。

20241210_1513531 20241210_1515572

2024年12月 8日 (日)

プラモ「ミイラの墓場」の製作備忘録

 造形メーカーのエクスプラスが発売している”ユニバーサル・モンスター”シリーズの「ミイラの墓場」のプラ模型を作ってみました。
 映画「ミイラの墓場」というのは、ボリス・カーロス主演の「ミイラ再生」から3作目で、ロン・チャイニーJrが主演したミイラ男です。この俳優は、伝説の怪奇俳優ロン・チャイニー(当ブログ2024.6.27「千の顔を持つ男」参照)の息子で、ミイラ男の他に狼男、ドラキュラ、フランケンシュタインの怪物というユニバーサルの4大モンスターをすべて演じたということで知られています。ただ、モンスターの初主演の「狼男」以外は、元祖の俳優が伝説となっているためか、あまりインパクトはありません。

 ちなみに、エクスプラスでは、これまで「大アマゾンの半魚人」の続編「半魚人の逆襲」、元祖ベラ・ルゴシの「魔人ドラキュラ」のプラモを販売しており、今後、ボリス・カーロフの第2作目「フランケンシュタインの花嫁」の発売が予告されています。多分、透明人間などもラインナップに入っていると推測していますが、「半魚人の逆襲」や「ミイラの墓場」とマニアックな続編の商品化というチョイスの意図がよくわかりません。まあ、多分、監修を行っている怪物屋のマスターの好みなのでしょうねえ、きっと。実際のところ「ミイラの墓場」はDVDを保有しているので観ている筈ですが、ほとんど記憶にありません(笑)。

 さて、肝心なエクスプラスのプラ模型なのですが、正直、こういうクラシック・モンスターの商品が売れるのかなと思っていましたら、外箱から説明書まですべて英語表記なのです。そうです、この商品は、アメリカ市場向けだったのです。アチラでは、いまでもこれらのユニバーサル・モンスターの人気は根強く、子どもたちも様々な機会でこの古き良き怪物たちに馴染んでいるようです。もう、アメリカの伝統文化なのでしょうね、きっと。

20241027_112805  ここからは、製作過程の備忘録となります。興味のない方は飛ばしてください。
 キットの組み立ては、あいかわらず立体化を意図したパーツであり、特に包帯の細かな分割には感心しました。そして、パーツの組み合わせも見事であり、説明書の図面とにらめっこで悪戦苦闘し、接着剤の流し込みの後は、継ぎ目にパテを塗布して、電動ヤスリで継ぎ目を消します。そして、下塗りのサーフェイサーを塗って組立てが完成です。なお、シンプルな台座を好む私としては、例によって、墓石や燃える篝火などの情景用の付属品は作りません。めんどくさいのだ(笑)。

20241029_232818 20241103_171613  20241116_144810 そして、ここから塗装の工程なのですが、まず、つや消しブラックで全身を真っ黒に塗り潰します。そして、色の源のイエロー、マゼンダの混合塗料に、つや消しホワイトとつや消しクリアーを混ぜて、エアブラシで吹きます。最初は、グレー系で予想以上に色合いが暗くなったので、何度も色の混合率を変えながら塗装を重ね、やっと完成です。すこし黄色がかっていますが、経年で包帯も黄ばむ筈ですから、まあ許容の範囲です。最後に、ブラウン系のスミ入れ塗料を筆塗りして濃淡をつけました。
 完成品はいつもながら、あまり見栄えがしません(笑)。くわえて1/8のサイズでは目の筆塗り塗装が細かすぎて見えないので、勘に任せた結果は大雑把に過ぎましたが、まあ、これが精一杯です。20241117_125330 これでは、とても1/8の「マリリン・モンロー」のプラモの塗装は無理そうです。しかも、ネットの製作教室(怪物屋吉尾の塗装教室:当ブログ2023.10.23参照)の最新の動画(マリリン・モンロー編)を見たら、とても作れそうには思えません。どうやら模型キットは手つかずで死蔵することになりそうです。困りました(笑)。


 

2024年12月 6日 (金)

モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ

 アップルTVで配信された、ハリウッド版ゴジラの全10話のミニシリーズ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」の海外版BDを購入しました。少し高額でしたが、好奇心に負けました(笑)。

Img_20241206_0001  物語は、ベトナム戦争末期、「キングコング:髑髏島の巨神」のジョン・グッドマンが演じる謎の組織モナークの太っちょリーダーが、巨大なカニやクモの闘いに巻き込まれて最後を迎えるシーンから始まります。そして、場面は変わり、東洋人の女科学者と二人の白人男性による原発事故の調査隊の話となると思ったら、何故か、現在(2015年)まで飛んで、真田広之主演のドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」で大人気となったヒロインを演じたアンナ・サワイが亡くなった父親(平岳大)の東京の住所を探して、異母兄に会うというなんとも不可思議なエピソードが始まり、そうした様々な過去と現在のドラマが脈絡もなく交互に映し出され、一体ゴジラはいつ出て来るのだろうか、というような疑問ともどかしさが延々と続きます。

 中盤まで進むと、どうやら”モナーク”という組織の誕生秘話からの現在までの活動を親子孫三代で描いたお話ということがやっと分かります。うん、完全にゴジラや変な怪獣たちは添え物でした。
 ただ、カート・ラッセルが登場してからが面白くなりましたが、ヒロインの父親である平岳大演じる異端の研究者が実は現地妻を持つ重婚男だったというのは、なんとも違和感のある設定です。なお、最初はアジア系の外国人ぽい感じだった女科学者は、日本人役の山本真理さんという女優さんで、ドラマの終盤からどんどん男前になっていくのが面白い。うん、地下の空洞世界のタイムパラドックスまで仕掛けたのは面白いアイディアでした。それに、最後のオチは、思わず笑いました。「怪しい彼女」の倍賞美津子と多部未華子ぐらいに似ていないのだ(笑)。 

 ところで、このゴジラシリーズはヒットしたのでしょうか?ネットではシーズン2の製作が決定したという噂もありますが、少し心配になりました。次回シリーズでは、ゴジラや異形の怪獣をもっと多く出してほしいものです。複雑な不倫じみた人間ドラマではなく、コテコテの怪獣映画を観たいなあ。

2024年12月 4日 (水)

探偵/スルース

 1972年公開のミステリー映画「探偵/スルース」が初めてディスク化されました。この作品は、ローレンス・オリビエとマイケル・ケインが共演する傑作映画なのですが、いままでVHS化したことはあったものの、何故かDVD化されず、長い間円盤化を望んでいました。今回発売していただいた(株)ニューライン様には厚く感謝申し上げます。ありがとございます。次は、SF映画「惑星アルカナル」をお願いします(笑)。

81bqdt5uzl_ac_sx342_  早速、購入したBDで鑑賞しました。VHSが鑑賞できなくなって以来、もう随分たちますので、ありがたいことに細かなところを忘れていますし、それこそ、観始めるとすぐに引き込まれ一気に観てしまいました。
 もともとは、大ヒット舞台劇を映画化したものであり、著名な推理作家に扮したローレンス・オリビエとその妻の不倫相手であるマイケル・ケインが演じるハンサムな美容師との丁々発止の対決なのですが、さすが演技力のある名優同士の対決は実に見ごたえがあります。

 ちなみに、初見の時は、そのドンデン返しに驚愕したものですが、結果を知っていても、二人の名優の演技と舞台となる富豪である推理作家の遊び心満載の豪邸が楽しめます。特に、ゲームが趣味である推理小説家のコレクションは、美容師に言わせると趣味の悪いおもちゃや小道具類ですが、実に怪しげな雰囲気を醸し出しており、ミステリーファンには垂涎ものです。必見は、暖炉の上のエドガー・アラン・ポー賞の受賞記念品(胸像)です。こうした遊び心は実にうまいなあと感心します。

 それにしても、この舞台劇のセリフに散りばめられている、イギリス特有の上流階級と労働者階級という階級社会の対立はなかなか根深いものがあると思うのですが、どうも最近は、わが国でも”上級国民”などという言葉も使われるようになっており、世襲議員の言動などをみていると、今後の日本の将来が少し心配になります(笑)。
 未見の方は、是非ご覧ください。練り上げられた脚本とあっと驚く展開をご堪能ください。ミステリー映画の傑作です。

 

2024年11月22日 (金)

グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声

 リドリー・スコット監督の史劇の傑作「グラディエーター」の続編が「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」です。前作は、「ベン・ハー」や「十戒」などの巨費を投じて作られたスペクタクル史劇をCG技術を駆使して現代に蘇らせたエポックメイキング的な作品でした。主演のラッセル・クロウは、アカデミー賞の主演男優賞をとり、作品賞を含めて5部門を獲得しています。いやあ、クロウ演じる将軍マキシマスのかっこよさをはじめ、円形競技場コロセウムの巨大さと剣闘士の闘いの迫力には驚きました。

Img_20241120_00011  さて、その十数年後の物語という続編で、闘技場で散ったマキシマスの子が主人公ということなのですが、前作では、確か妻とともに処刑されたはず、という記憶があったせいか、ポール・メスカルが演じる主人公の素姓がいまいちわからず、その正体が分かる中盤までは、どうも落ち着きませんでした。ここではネタバレはしませんが、さすが、リドリー・スコット監督ですねえ、後出しのような気がしますが、実にうまく正当な続編の物語を作り上げています。これは感心しました。

 それにしても、冒頭、アフリカの海岸要塞都市に攻め込むローマ帝国のガレー船団の映像は、あの史劇の金字塔である「ベン・ハー」の名シーンをCGでよりリアルに、そしてスケールをパワーアップさせており、素晴らしい迫力でした。ここは文句なし(笑)です。

 その一方、円形競技場での剣闘士の戦いは、前作の”戦車との攻防”や”トラ”を超えようと、マントヒヒや巨大なサイなどを登場させるなど工夫は認めますが、円形競技場の中に海水を入れて人造の海を作り、ガレー船の合戦を再現するのは、いくらなんでもやりすぎです。古代の競技場施設の構造では、2隻の船を浮かべるだけの量の海水を溜めることはあまりに絵空事にすぎるような気がします。その上、生きたサメを何頭も泳がせるなど噴飯ものです。ここのシーンでドン引きして、一気にさめました。・・・残念です。

 それでも、前皇帝の姉役のコニー・ニールセンはあいかわらず美しく、双子の皇帝はその狂気さを熱演しますが、なにより驚いたのが、今作の影の主役ともいうべき存在がデンゼル・ワシントン演じる剣闘士団のオーナーでした。ワシントンの俳優としての格などから、前作のオリバー・リードのような儲け役と思い込んでいましたから、まさか、まさかの展開で、正直、こんな役をワシントンが引き受けたことが信じられませんでした。・・・面白かったけど(笑)。でも、指輪を無意識に回す仕草はイコライザー役が抜けていない(笑)という気もします。

 以上のように、いろいろ突っ込みどころもありますが、総体的にはなかなか面白く出来た、久しぶりの史劇大作でした。史劇ファンの方は、是非大スクリーンでご覧ください。
 なお、この映画は劇場パンフレットが販売されていませんでした。どうも最近パンフを作らない作品が増えている気がするので、パンフレット・コレクターとしては少々心配しています。どうか、映画制作会社におかれましては、少々高くてもいいですから、せめてパンフレットの発売は止めないでください。パンフレットは、ポップコーンと同じように映画とセットの劇場文化(笑)なのです。お願いします。ちなみに掲載写真は2つ折りの宣伝チラシです。

2024年11月20日 (水)

侍タイムスリッパー

 最近、たった1か所の映画館で公開された後、”実に面白い”と評判が評判を呼び、公開される映画館が増えているというSF映画「侍タイムスリッパ―」をやっと見ることができました。地元のTOHOシネマで何の予告もなく突然封切られたのです。まあ、”多分地方では随分先になって2番館あたりで公開されるのだろうなあ”と半分諦めていたのが、うれしい誤算です。ありがとう、TOHOシネマさん(笑)。

Img_20241120_0001 さて、ストーリーは、幕末の侍が現代の時代劇映画撮影所にタイムスリップして、時代劇の斬られ役として活躍していくという、なんともあ然とするような設定なのですが、とにかく時代劇、いや映画づくりに対する愛情が満ち溢れており、映画ファンなら自然に応援したくなるような物語なのです。しかも、大手映画会社の製作ではなく、安田淳一という個人が監督、脚本、撮影、照明、編集などをこなす自主映画というのですから、高校時代に8mm映画を撮っていた者からすれば、もう奇跡のような作品です。

 しかも、”自主映画”という悪い意味の安っぽいイメージは、開巻、お寺の前で侍二人が待ち受ける場面からいきなり吹き飛びます。映像がきれいでしっかり落ち着いています。また、殺陣が始まったとたん鳴り響く太鼓の演奏に驚きました。いかにも”時代劇の始まりでっせ、楽しんでやー”というようなまっすぐな勢いには感動しましたねえ。音楽は誰が担当したのでしょうか、知っている方がいらっしゃれば教えてください。

 その後、タイムスリップした侍の目を通して、時代劇をつくる京都撮影所の現場や切られ役たちの生きざまをコミカルに描いていきます。主演の山口馬木也さんと撮影所長役の井上肇さん以外の役者さんはよく知りませんでしたが、考えれば、自主映画という少ない予算で、少なくても数人の名の知れた役者さんを雇い、本物の東映時代劇撮影所で撮影していること自体も奇跡かもしれません。こうした無名の役者さんたちを含めた出演者の熱演やスタッフ達の目に見えない努力により、観客の期待を超えた、笑いと人情あふれる映画作りにまつわるドラマが完成したのだと思います。ちなみに、竹光に真剣の重さをもたせる演技などは、昔から言われていることなのですが、映像にすると、殺陣の深みや面白さが良くわかります。なんといっても、日本人なら誰も時代劇が好きなのですから、多分(笑)。

 映画のラストは、真剣による決闘の撮影という事態になって、「椿三十郎」なみの長いにらみ合いが始まるのですが、そういえば、山口馬木也は仲代達矢に似ているなあなどと頭の片隅で思ったりしながら眺めていると、”あっと驚く為五郎(我ながらさすがに古いフレーズとは思いますが、なんともぴったりなオチ表現なのです)”的な決着で実に感心しました。うん、伝説の「カメラを止めるな」現象を一寸彷彿させる、見事な脚本です。若侍役の加山雄三ではないですが、おもわず”お見事”と言いたくなりました。

 とにかく、時代劇への思いや映画作りの現場の楽しさをストレートに描いた心温まる映画でした。映画ファンならぜひ見てください。

 それにしても、当地の劇場での取り扱いが無く、やむなくオークションで買い求めた劇場パンフレットによると、安田淳一監督という人は、1967年生まれで、大学卒業後、ブライダルやイベントのビデオ撮影業に携わり、商業映画として2014年「拳銃と目玉焼き」2017年「ごはん」を監督したそうです。そして、2023年家業のコメ農家を継いだものの赤字経営で、当映画の完成時には手持ち金が数千円だったことがネットで話題になっていました。いやあ、経歴からも凄い人ですよねえ、大したものです。撮影裏話のほうも面白そうですねえ。ちなみに、この映画の脚本の良さのせいか、東映のプロデューサーが格安で便宜を図ってくれて、撮影所が暇な夏場にセットの使用や関係スタッフの支援が可能になったという話はうれしいエピソードです。このプロデューサーの心意気によって、映画の中でもふれている過去に時代劇映画を捨て去ったという”東映”を少しは見直した(笑)というのはやっぱり言いすぎかな。とにかく、こうした関係者の協力を取り付けながら見事な作品を完成させた安田監督さんには心から敬意を表します。これからも頑張ってください。

 

2024年11月13日 (水)

十一人の賊軍

 映画「十一人の賊軍」は、かつて東映が時代劇黄金期の末期に「十三人の刺客」をはじめとする「十一人の侍」や「十七人の忍者」などの集団抗争時代劇を製作していた頃、後に「仁義なき戦い」で名を成す脚本家笠原和夫氏が書いた脚本のプロット16ページを基に製作されたそうです。ネットによると、脚本自体は、当時の東映プロデューサーからボツを喰らったため、本人が破り捨てたそうで残っていないとのことです。そして、この幻の作品を映画化しようとしたのが、東映のやくざ映画の実録路線「仁義なき戦い」を承継したような「孤狼の血」等で評価の高い白石和▢監督であり、脚本も同作のコンビである池上純哉氏です。

 正直、東映の集団抗争時代劇は、「十三人の刺客」は別格(オリジナル作品のことです。)としても、その他の作品は話にあまりにも救いがなくて、現在の年令からは少しきついかなあ(ちなみに「弧狼の血」も未見です。)と思っておりましたが、前作「碁盤斬り」が丁寧な”時代劇”になっていましたので、劇場に足を運びました。

Img_20241113_0001  さて、前置きはこのぐらいにして、映画は、冒頭の主演の山田孝之のやくざ者が町中を疾走するシーンから一気に引き込まれます。この辺は、白石監督の確かな手腕なのでしょう。そして、あれよあれよと物語が進み、官軍と奥州同盟軍の板挟みになった”新発田藩”の苦境が描かれるのですが、史事をふまえたフィクションの中で、”小芝居的”な策略をめぐらすのが、阿部サダオ演じる、腹の読めない家老ですねえ。まあ、バカな若殿を守るため、藩を守るため、という彼なりの正義のためには、10人の囚人や流り病にり患し隔離した百姓たちの命や口約束などは全く顧みないというまさに”政治”の非情さを告発するメッセージにも見えます。まあ、現在の政治の現状から実感が伴います(笑)。

 それにしても、一本のつり橋の要所である砦を守る決死隊は、侍殺し、強盗殺人、辻斬りなどの粗暴犯に加え、密航や姦通、さらには火付けの女囚人まで加わった10人の囚人と、藩から密命を受けた藩士3名と藩士が通う道場主の面々です。しかし、「七人の侍」と違って面白いのは、主人公の行動ですねえ。とことん自分勝手に砦から脱走を試み、その都度、思いもよらぬ事態となって、大アクションが始まります。しかも、最後までなかなか改心(?)せずに主人公らしからぬ行動を続けるのが笑えます。なお、彼を実の兄と思いこむ頭の弱い花火師の予想外の活躍が見ものです。

 そして、ドラマが進むにつれ、次第にもう一人の主演というべき存在が明らかになります。仲野太賀が演じる道場主です。まあ、最初から2人の主演という形だったのでしょうが、若い俳優さんはあまり知りませんでしたので、最後にやっと気が付きました(笑)。彼は、殺陣も頑張っており、儲け役ですよねえ。最後のセリフも泣かせます。宣伝文句は”本物”ということらしく、要は、殺陣にワイヤーアクションなど使わず、「切腹」や「上意討ち」を目指したとのこと(パンフレットによる)で、心意気はしっかり感じました。

 一方、少々気になったことが一つ。ドラマの要となる砦のオープンセットのことです。つり橋は祖谷のかずら橋をモデルに実際に作ったそうですが、その他の建物などが昔の東映時代劇の安っぽいセットのように見えて残念でした。どうにも、本物感、生活感が無いのですよねえ。地面が平坦過ぎるのかな? しかも、周囲の草木の緑がなまなましく、全体的に安っぽい映像に見えます。これは、照明や撮影の問題なのでしょうか、とても残念でした。

 しかし、作品全体としては、なかなか面白く出来ていますし、最後も”全滅”ではなくてなんかほっとしました。是非、未見の方はご覧ください。

 

2024年10月29日 (火)

八犬伝

 先日公開の映画「八犬伝」の原作があの”忍法帖シリーズ”作家の山田風太郎とは知りませんでした。風太郎忍法帖は結構好きでほとんど読んでいるのですが、晩年の作品にはあまり関心がなかったのです。
 それにしても、戯作者”曲亭馬琴”と挿絵も描いた天才浮世絵師”葛飾北斎”との交流を描きながら、完成までに28年もかかった全98巻、106冊の大長編戯作「南総里見八犬伝」のストーリーを交互に描く、虚実を交えた物語とは、さずが娯楽小説の巨匠”山田風太郎”ですねえ。その天才ぶりに改めて感心します。今度、原作も読んでみようかな?

Img_20241029_0001 さて、その小説を映画化した今作では、”実”の世界の曲亭馬琴に役所広司、葛飾北斎に内野聖洋が扮しています。さすが、”いかにも天才同士の友情とはこんな感じか”と思えるような見事な演技です。特に、内野の演技は、テレビドラマ「仁」の”坂本龍馬”以来の適役ではないでしょうか。実際、葛飾北斎とはこんな人だったのかと思ってしまいます。
 そして、この映画の一番の見せ場は、何といっても、中盤の歌舞伎小屋の舞台の”奈落”での、東海道四谷怪談を書いた”鶴屋南北”との戯作談義です。”虚”と”実”のとらえ方を通じた「勧善懲悪」の否定であり、戯作への批判です。いやあ、ここは戦慄します。とりわけ、逆さにぶら下がった”南北”の異様な姿が不気味です。
 実は、南総里見八犬伝は江戸時代では大ヒット作品であり、原稿料で食えた最初の著述家と言われていますが、明治に入って”近代文学”という名のもとにその価値が否定され、日本の小説は、目に見える範囲の現実的な純文学が上で、荒唐無稽な娯楽小説は下かのような扱いとなってしまいました。
 まあ、最近になって、エンターティメント小説という形で、SFやら、時代小説やら、様々な分野が評価され始めたのはうれしいことです。まあ、実際は、純文学作品が売れなくなっているせいかもしれませんが、推理小説の作家が”文豪”と言われ始めた気もしますので、個人的にはうれしいことです。
 話がそれましたが、この場面は、小説であれ、映画であれ、大衆向けの娯楽作品を創造する者たちの本音かもしれません。いやあ、大変気に入りました。このシーンだけで観る価値がありましたねえ。最後に、”渡辺崋山”のダメ押しの名セリフがありますが、それは是非映画でご覧ください。

 一方、”虚”である南総里見八犬伝の方は、剣士が8人も居るので正直だれがだれだか分かりません。いずれも私が名前を知らない若い男前の俳優さんが演じています。そして、当然ながらCG映像がてんこ盛りですが、犬の”八房”の造形がもう全くイケませんねえ。日本のCG技術レベルを再確認識させられてがっかりです。白組に頼んでほしかった(笑)。
 そのほか、ラスボスの”玉梓”役は、栗山千明がそれなりに頑張っていましたが、実写の”玉梓”といえば、新解釈版という小説「新・里見八犬伝」を原作にして、1983年に映画化した深作欣二監督の「里見八犬伝」での、夏木マリが”体を張った”妖艶な姿が圧倒的ですので、さすがにこれには及ばなかったのはしかたがありませんねえ。しかも手下の”船虫”などは大ムカデに変身しますぞ(笑)。まあ、せっかくのCGは、ありきたりな”炎の顔”ではなく、こういう奇想天外なアイディアに使ってほしかった。ちなみに、ヒロイン役(静姫)は若かりし頃の薬師丸ひろ子でしたが、当時は実に可愛かったなあ(笑)。確かこの作品のDVDはどこかにあるはずですので、今度、捜して再見してみましょう。
 以上のように、”虚”の映像にはやや不満がありましたが、”実”と”虚”を交互につなぐ構成は、予想外に違和感が無くスムーズに場面が展開していくので、その辺は曽利文彦監督さんの手腕を感じました。お見事です。未見の方は是非ご覧ください。 

2024年10月20日 (日)

ケムール人、三たび。

 「これで”ケムール人”ネタは打ち止め」と、前回当ブログ「ケムール人、再び。(2024.6.30)」で表明したにもかかわらず、本当に節操もなく、今回、ケムール人の30cmフィギュアをご紹介することになりました。
 そのフィギュアとは、前回のブログでも書いているのですが、エクスプラスが過去の名作フィギュアをソフビ版で復刻発売したもので、実は、オークションにリーズナブルな価格で出品されていたのです。いやあ、定価より”安い”という思いから、ついポチっと入札して、何故か、そのままゲットしてしまったのです。なんと競争相手がいなかったのだ!おかしいなあ、人気の筈ですが・・・(笑)。いやあ、それにしても、”3つ子の魂100”までとはよくいったもので、本当に”幼いころの刷り込み”とは恐ろしいものです。実際置き場所にも困っています(笑)。 

20240919_103916 20240919_1040401 20240903_190935  ちなみに、この未来人の造形には、オリジナルのレジン製よりもソフトビニール製の方が、ぬめぬめした質感が似合っていると思いますねえ。ただ、立つためにはサポートスタンドが必要なのが少し残念でしたし、最近流行の発光するギミックを体験したのですが、思ったほどの効果はないのが意外でした。
 興味ある方だけご覧ください(笑)。

2024年10月12日 (土)

千円ガチャ:いきもの大図鑑/恐竜

 いま、カプセルトイが大人気です。以前、当ブログ(2023.1.24)でも「千円ガチャ」として紹介しましたように、バンダイから「いきもの大図鑑」として、本物としか思えないような精巧な甲殻類や昆虫などの様々な生き物シリーズが展開されています。

 そんななかで、今回紹介したいのは”恐竜”シリーズです。こうした恐竜のミニフィギュアで有名なのは、味覚糖の食玩「チョコラザウルス」です。この商品は「チョコエッグ」で食玩ブームを巻き起こした海洋堂が製作したもので、2001年6月から158円で発売され、結構シリーズ化されました。プラスティック製でパチパチとパーツがハマるのが、チョコエッグと同じく実に快感でした(笑)。当時としては、かなり精巧な造りであり、しかも誰も知らないようなマイナーな恐竜種まで数多く生産されましたので、恐竜ファンの私としてすっかりはまってしまい、ブーム当時のものはほとんどコンプリートした記憶があります。もっとも、いまや、そのコレクションは、一部を除いてどこにあるのやらわからなくなっています。はてさて、あの熱量は一体どこに行ったのでしょうねえ(笑)。

 さて、今回の恐竜ガチャポンに話を戻しますと、原型師がSHINZEN造型所代表で、著書に「粘土で作る!いきもの造形」や「粘土で作る!いきもの造形 恐竜編」がある”竹内しんぜん”氏で、ワニや恐竜のガレージキットに定評のある方です。
 すでに、このバンダイの恐竜シリーズは、第2弾まで全8種が発売されており、10月からオンラインストアで第3弾全4種の1月発送分の予約販売が開始されたところです。オンラインストアというのは、通常の店舗のガチャマシンを回すのではなく、インターネット上でガシャポンを回して購入するもので、本体をカプセルに入れる必要がないことから、小さくするためにパーツに分割してないのです。つまり、ガチャポンの欠点でもある”分割線”がない、画期的な商品となります。いやあ、思わずネットで回しました(笑)。4回、回してダブリが1種、しかたがないのでマシンを変えてもう1回。いやあ、1回千円であり、送料もかかりますので大きな賭け(笑)でビビりましたが、おかげさまで無事に4種コンプリートできました。ちなみに、今回の恐竜03は、アロサウルス、ステゴサウルス、プテラノドン、シティパティ(羽毛恐竜)です。なお、第1弾は、ティラノサウルス(老体)、トリケラサウルス、スピノサウルス(新学説による復元)、モササウルス、第2弾が、ヴェロキラプトル、ティラノサウルス、スティコラサウルス、エラスモサウルスです。
20241010_101124_20241012103601 20241010_101300 20241010_101409 20241010_100946 20241010_102315 20241010_10204220241010_10210020241010_101637  せっかくの機会ですので、第1弾と第2弾のコレクションを紹介します。いずれも、しんぜん流の見事な造形であり、個人的には、モササウルス(蒼竜)とエラスモサウルス(首長竜)が特に気に入っています。それにしても、これが手の平サイズとはホントに信じられませんねえ。造形技術の進歩に感心します。第3弾のプテラノドンも期待していますゾ(笑)。

 

 

«洋上のゴジラ2023(その2)

2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31