無料ブログはココログ

2024年7月13日 (土)

ドラキュラ/デメテル号最後の航海

Img_20240707_00015-2  ブラム・ストーカー原作の小説「吸血鬼ドラキュラ」の中で、これまで一度も映画化されていない章が第7章「デメテル号船長の航海日記」とのことです。まあ、本筋とは無関係のルーマニアからロンドンまでの船旅のエピソードですから、どの映画でも帆船の出発あるいは英国への漂着シーンのワンカットですましているのは当たり前なのですが、今回の映画化では、その航海中に起こった惨劇を初めて描いた、というのが売りのようです。ドラキュラの物語としては、結末が分かっているので、やや物足りない、一種の添え物的な小品になるのですが、”エイリアン”の宇宙船を帆船に置き換えたホラー映画として楽しんでください。
 まあ、ドラキュラの造形は完全なモンスターですからねえ。廉価版のブルーレイに挿入されているメイキングを見ると、監督が”これまでのドラキュラ映画にはなかったユニークな姿”と自負していましたが、どうみても、あのフランシス・フォード・コッポラの超B級映画「ドラキュラ」の蝙蝠形態にそっくりなのですが、いかがでしょう。
 それにしても、この作品では、当時の港町や帆船のセットのリアルさに感心します。メイキングを見ると、全編CG映像かとおもっていたら、マルタ島の巨大ドックに実物大の帆船を造り上げて、迷路のような船内のセットで撮影を行ったそうです。小品とは言えないほど予想以上にお金がかかっている模様です。全く、最近のハリウッド映画の史劇などのリアルな再現度が半端ありません。特に、衣装や食事風景などセットや小物にも当時の不衛生な生活環境が詳細に反映されているほか、港町の広々した風景などでも、セットとCGが見事に融合した映像には本当に脱帽します。どこか嘘くさい、きれいごとの邦画との埋められない差を感じますねえ。

Img_20240707_00014  ところで、ドラキュラ映画は、ご存知クリストファー・リー主演の英国ハマープロのシリーズが気に入りなのですが、1973年公開のジャック・パランス主演の「狂血鬼ドラキュラ」という作品があり、”ブラム・ストーカーの原作に最も忠実なドラキュラ映画と云われている”という宣伝文句に騙されて、安売りDVDを買ってしまいました。結果、いままで観なかったのが正解でした。大失敗です。まったく観る価値はありません。

 Img_20240712_0001 そのため、公開当時は超B級といわれ、正直あんまり感心しなかった記憶があるコッポラの「ドラキュラ」のDVDを見直したところ、内容をほとんど覚えていなかったせいかもしれませんが、これが予想以上に面白かったのです。特に、吸血鬼に堕ちる前の英雄ドラキュラ公の場面は、影絵的な演出なども相まって素晴らしい。アカデミーの衣装デザイン賞、メイクアップ賞、録音効果賞を受賞したのもうなずける絢爛豪華さです。しかも、よく考えると、ドラキュラをゲイリー・オールドマン、ヘルシング教授をアンソニー・ホプキンズ、ヒロインのミナをウィナ・ライダー、ヒロインの婚約者ジョナサンをキアヌ・リーブスが演じているのです。信じられない豪華メンバーです。

 ただ、ストーリーは、”コッポラらしい”と言えばいいのか、原作とは異なり、吸血鬼となったドラキュラ伯爵の悲しみと愛を描いており、ハマープロ作品のような勧善懲悪ではない描き方の一方で、正義のヘルシング教授の変人ぶりなどが強調されている上に、夫と愛人(?)の間をふらつくヒロインのミナには感情移入できず、なんとも混乱します。
 しかし、このコッポラ作品で、デメテル号に搬入された”土の入った箱50個”の謎も解けたような気がして納得です。どうやら、コッポラ作品がベースになっているのは、最近再評価されているせいなのかな? 実際に再見すると、いろいろ突っ込みどころもあるが、豪華な雰囲気でエロティックでもあり、なかなか面白かった(笑)。以上です。

 

2024年7月 8日 (月)

三島由紀夫の「潮騒」

Img_20240707_0001  最近のセリフばかりで綴られたネットのラノベ小説ばかり読んでいると、無性に美しい日本語の真っ当な小説(笑)を読んで観たくなります。そこで、書棚に積まれた中から1冊、文章のうまさに定評のある三島由紀夫作品の中で、唯一といってよいほどの通俗的な恋愛小説「潮騒」を選びました。学生時代に読んだだけでしたが、久しぶりに読むと、さすがノーベル文学賞候補と言われた作家の華麗な文章表現に感動します。冒頭の舞台となった”歌島”を説明するくだりはその文章表現の巧みさにやっぱり感動します。皆さん、是非、読み返してください。

 この小説についてはあれこれ説明する必要はないと思いますが、ギリシャ神話をモチーフにした、美しい島での”宮田初江”と”久保新治”の素朴な純愛物語です。ハッピーエンドですので、何の心配もなくこの話に没頭できます。いまの目で見直すと、”婚前交渉はご法度”と言う懐かしい掟に微笑ましくも笑えますし、小さな貧しい集落での人々の純朴な暮らしぶりが、いかに日本人が大事なものを失っていったかを改めて思いますねえ。

 さて、この名作は、これまで何度も映画化されています。やっぱり恋愛ものの決定版ということでしょう、それぞれの時代のアイドルが主演となっています。有名なのが、1964年公開の吉永小百合と浜田光夫コンビ、そして1975年の山口百恵と三浦友和コンビの作品でしょう。この二つの作品は今迄観たこともなかったので、この際、観てみることにしました。丁度、安価なDVD等が見つかりました(笑)。実は、1954年に初めて映画化された谷口千吉監督作品について、主演の青山京子(共演は久保明)を三島由紀夫自身が”初江らしい”と褒めた(多分、宣伝だと思うが・・)というので映像媒体を探しましたが、どうやらDVDの発売や配信もないようで残念でした。

Img_20240707_00012  まず、DVDの入手順で山口百恵版を観ましたが、これは正直きつかったねえ。なにしろ、映像で観る動く”百恵ちゃん”が子供ちゃんなのです。まあ、当時は16~17歳ぐらいなのですから当然なのかもしれませんが、グラビアなどではもっと大人びていたような記憶なのです。いま思うと、”激写”の篠山紀信カメラマンの撮影マジック(あのブレが曲者か?)だったのかもしれません。加えて後年”百恵は菩薩”とまで称されたあの歌声も影響しているのかもしれませんが、いやあこの映画の中の姿や演技と記憶のイメージとの乖離には参りました。
 まあ、その分、共演の友和がふんどし姿で頑張っていました(百恵ちゃんが惚れたのも納得)ので、コンビ物の第2弾としては、それなりにヒットしたのでしょうねえ。でも、石段がベコベコ音を立てるセットはあまりにもお粗末でした(笑)。70年代の日本映画界はそんなものだったのでしょうねえ、きっと。

Img_20240707_00013  次に見たのが吉永小百合版です。これは、撮影が65年頃、小説のモデルとなった神島で長期ロケを敢行したということで、なにより当時の漁村の風景がそのまま記録されているところに価値があります。しかも、カラーだった(笑)。
 また、主演の小百合さんも黒塗りで(原作では日焼けで色黒という設定)頑張っています。若い頃の小百合さんはやっぱり可愛いと再発見しました(笑)。
 しかし、共演の浜田光夫が全然”新治”らしくないですねえ。中盤の見せ場である嵐の中の全裸シーンで、アイドルとしての規制がかかるヒロインはともかく、男らしさを見せるはずの光男がふんどしはもちろん胸まで隠すなんて信じられません。友和さんを見習ってほしいものです。時代が逆ですか(笑)。何故か、007のロジャー・ムーアが後年ベッドシーンで胸を隠した逸話を思い出しました。多分貧弱で写せなかったんでしょうねえ。
 しかも、この作品は長期ロケしたはずなのに、結構原作を改変しています。新司と恋敵のどちらが見所があるかを見極めるための航海中の出来事を島での英雄行動に置き換えたりしており、これはもう原作の意図を踏み外した愚策と言う以外はありませんねえ。

 それにしても、両作品に共通するのは、助演陣の役者たちの達者ぶりです。いやあ、昔の役者は実に味がありました。たまには、こうして古い映画を観るのも面白いですねえ。 

2024年7月 6日 (土)

クワイエット・プレイス DAY1

 傑作SFホラー映画「クワイエット・プレイス」の第3弾「クワイエット・プレイス DAY1」は、恐怖のエイリアンが地球に襲来した第1日目を描く物語です。前2作の主人公の家族とは全く別のお話なのです。しかも、襲撃1日目という設定なら、無数のエイリアン達による惨劇パニックを大規模に描けるというメリットもあります。正直、こういう続編もありなのかと感心しました。

Img_20240706_0001   映画は、猫を飼っている黒人女性のニューヨークでの生活描写から始まりますが、なんと彼女はホスピスで終末期医療を受けている余命いくばくもない患者で、絶望の中でマンハッタンにある思い出の店のピザを食べに行くこと以外は、全てをあきらめています。これでは、エイリアンの襲撃から逃れても、彼女は絶対に助からないのです。なんという救いのない、無情な設定なのでしょうか、冒頭から混乱します。

 そして、彼女がマンハッタンに行って、マリオネット劇の観覧中にエイリアンの襲撃が始まります。物凄く頑丈で素早いエイリアン達のアタックで、ビルは倒壊、車が横転、ヘリコプターまで墜落します。もっとも、大半は視界を遮る大量のホコリで全く周囲が見えず、しかも、主人公達を埃だらけの真っ白な姿に換えてしまいます。エイリアンには白人も黒人もないというイメージでしょうか、3.11の事件以降のリアル表現の真骨頂なのでしょうねえ。役者さんも大変です(笑)。

 一方、エイリアンが泳げないことを早々(あまりに早すぎるのでは?疑問が生じますが)に突き止めた政府は、マンハッタンに通じるすべての橋を破壊し、エリアンを隔離したうえで、残った人々に船着き場へ逃げるように誘導します。ただ、主人公は、それらの流れに逆らうように、ハーレムのピザ店を一人目指すのです。その途中で、法律の勉強に渡米したイギリス人の白人青年と遭遇し、猫の導き(?)で行動をともにするようになるのですが、この白人青年の性格が実はよくわかりません。パニックを起こす臆病で幼児のように依存性の高い性格なのに、意外に勇敢な行動もして、二人はエイリアンから逃れ続けます。

 さてさて、この話のオチは一体どうなるのかという観客の疑問の中で、最後は、主人公はついにこれまでの人生を振り返り、音を失った世界で、最も大切だったことを思い出して、意義ある人生の末期を迎えるのです。”ドスン”という衝撃音が印象的ですねえ。うん、この作品は、SFホラーを装った、ホスピスの映画でした。いやあ、こんな作品もあるのですねえ。
 それにしても、劇場パンフレットが販売されておらず、配給元はあんまりヒットを期待していない模様です。これは残念でした。

2024年6月30日 (日)

ケムール人、再び。

 1966年に放映された「ウルトラQ」の最高傑作と評される「2020年の挑戦」 に登場するケムール人の人気が衰えません。丁度いま、怪獣フィギュアメーカーの雄”エクスプラス”の子会社で通販専門「少年リック」から、ケムール人の復刻フィギュアが発売(予約)されました。
 この商品は、「MONSTER MAKER 28」という造型メーカーから発売されていたレジンモデルキットの原型をもとにした、ソフビ版だそうです。少年リックの宣伝文句によると、原型師丹羽秀介氏による傑作キットらしいのです。商品写真では、今時のモデルらしく、発光するようになっています。
 また、かつて「オリエントヒーローシリーズ」の怪獣キットで一世を風靡した造型メーカーの”ボークス”も、最近の小森陽一氏の活動に触発されたのか、突然、以前の復刻怪獣キットの発売をはじめ、その第2弾がケムール人だったので、偶然にしろ、同時期に密かな”ケムール人”ブームが起こったような気さえしました(笑)。
 
 ちなみに、以前このブログでも取り上げた(2018.12.08参照)ように、私もこのケムール人のユニークなデザインが大好きなのです。デザイン担当の成田亨氏自身も、エジプト絵画独特の平面性を取り入れた会心の作だと言っているようです。確か、幼いころ愛読した怪獣書籍の中で、このエジプト画の手法の話(横顔に目が2つのイメージ?)は読んだ覚えがあります。彫刻家でもある成田は、どの角度から見ても同じに見えるシンクロナイゼーション手法で人間の顔を四方から描いたということですが、・・・まあ、芸術家の言うことはあまりよくわかりません(笑)。しかし、その頭の提灯に三つの目玉は、なんとも圧倒的な存在感があり、当時から私のお気に入りの造型なのです。大人になっても、何度見ても、傑作デザインです。さすが、成田亨氏です。なお、頭と手足の造型は名匠高山良策氏です。ボディスーツはなんかの流用で成田氏が青く塗ったという証言があります。余談ですが、このケムール人はモノクロ映画でカラー写真が存在していないので、実際の色は不明なのですが、前述の証言から青系で塗装するのが定番になっているそうです。

20240630_0843351  さて、自宅の廊下のコーナーに飾ってある(写真)のは、もう随分前に発売されていた”メディコムトイズ”の30cmクラス(モノクロ版)と”エクスプラス”の20cmクラス(カラー版)のフィギュアです。そのほか、ビリケン商会のソフビキットの完成品もありますが、今回、ケムール人ブームおかげ(笑)か、前述のとおり、エクスプラスがフィギュアの復刻原型に使用するほど絶賛していた丹羽俊介氏のケムール人のレジンキットの完成品がオークションに出品されたのです。正直どうしようかと迷いましたが、ソフビではなくレジン製であること、そして完成した出来に感心したこと。特に、グリーン系の塗装が気に入ったので、清水の舞台から飛び降りました。その写真をどうぞ。ともあれ、これで”ケムール人”ネタは打ち止めです(笑)。

20240603_1336561 20240603_1336041 20240603_1335261

2024年6月29日 (土)

SISU(シス) 不死身の男

 昨年10月ごろでしょうか、YOUTUBEで、物凄く面白い戦争映画として話題になっていたフィンランド映画「SISU(シス) 不死身の男」という作品がありました。一部の劇場で公開されたようですが、私の住む地方では公開されておらず、しかも、公開終了後は、私が契約していない配信での放映となったので、トム・ハンクスの駆逐艦映画「グレイハウンド」のように、多分もう観ることはないとあきらめていたのですが、今年の2月にブルーレイが6月に発売されることが発表されて、早々に予約して首を長くして待っていた映画です。

71o9kzy2wpl_ac_sl1222_  内容は、第二次世界大戦末期のフィンランドで、”シス”と呼ばれた老兵の物語です。この”シス”という意味は、フィンランド語で”絶対諦めない不屈の魂”というようなニュアンスで、正確には翻訳できない言葉だということです。

 一人の老兵がラップランドの荒野で金塊を掘り当て愛犬とともに移動中に、撤退途中のナチス・ドイツの小隊と遭遇するところから物語が始まります。このドイツ軍は戦車一台にトラック2~3台という構成ながら、慰安用の女性数名を捕虜にして連行しているというなんとも悪逆非道な連中なのです。
 当然、彼らは、一人の年老いたフィンランド人を見逃すはずもなく、後続の兵士が殺そうとするのですが、あっという間に返り討ちです。いやあ、一瞬のナイフさばきは”ランボー”並です。ここからが怒涛のアクションシーンの連続です。
 しかも、偶然、老人が金塊を持ってることを知ったナチスは、目の色を変えて老人を追いかけます。いやあ、地雷原での攻防や水中戦など、老人のゲリラ戦は見事です。

 また、老人が落とした認識票を調べて、相手が妻子を殺された復讐のために、ソ連軍の兵士を300人殺したという元特殊部隊の伝説の兵士だということが分かっても、敗戦後の優雅な生活を夢見てドイツ軍の将校は諦めません。部下のゲスな軍曹たちを使って、あの手この手で追い詰めます。そして、老兵の愛犬を罠に使って、ついに彼をつかまえるのです。そして、彼が不死身かどうか確かめるため、わざわざ縛り首にして看板に吊るすのです。いかにも性悪のくせ者将校という描き方がうまいですねえ。敵役が悪い奴程おもしろいのだ。
 さて、ここはネタバレになりますが、どうしてもふれなくてはなりません。なんと一晩経って老兵は息を吹き返します。”いくらなんでもそれはないだろう”とは一瞬思ったのですが、縛り首刑のように床が割れて落下させる(首の骨が折れるようです)場合は別ですが、普通の縛り首ではあとから息を吹き返す実例もあったそうですので、全くの絵空事ではないようです。
 しかも、今回は、気を失う寸前、足を古釘に突き刺し、体重の軽減を図っています。さすが伝説の特殊部隊の兵士です。しかも、戦闘の度に身体中に傷を負い、しかもその傷を自分で縫ったり、焼いたりする痛々しい場面を繰りかえすので、不死身ぶりもリアルに感じるのです。まあ、ここは”丈夫な体よねえ”と感心して、皆さん大きな気持ちで受け入れましょう(笑)。メイキングを見ると、この主演俳優さんは、60歳を超えているようで、このオファーを受けるのには相当決心がいったとのことです。頑張りましたねえ。最後は、飛行機まで墜落するのですから(笑)。

 それにしても、フィンランドの荒野(ラップランド)の風景が凄まじいですねえ。極限の自然の荒々しさには感動します。メイキングでも、その強風や寒さは尋常ではなかったようです。撮影隊の皆さんもご苦労様でした。

 最後に、捕虜の女たちのリベンジもスカッとしました。是非、未見の方はご覧ください。荒唐無稽で楽しい異色の戦争映画でした。

 

2024年6月27日 (木)

千の顔を持つ男

 どうやら今月は劇場で一本も映画を観ない月になりそうです。映画愛好家の友人が”評価する”という、新作「マッドマックス」については、前作「怒りのデス・ロード」の前日譚であり、再び”あの悪夢のような砂漠の世界へ戻る”という気力がどうにも湧かなくて、劇場に足を運びませんでした。ちなみに、決して主演がシャーリーズ・セロンではないからという理由ではありません(笑)。

81tog3vnjpl_ac_sy445_  もちろん、自宅ではあいもかわらず配信や市販のDVDなどでB級SF作品を中心にいろいろと眺めているのですが、予想外に面白かったのが、復刻シネマライブラリーで発売されていたDVD「千の顔を持つ男」でした。
 この作品は、無声映画時代、自ら施したメーキャップで様々な怪人を演じて、”千の顔を持つ男”と一世を風靡した怪奇俳優ロン・チャイニーの伝記映画でした。彼が演じた”オペラ座の怪人”や”ノートルダムのせむし男”などは、そのメークキャップが語り草となっており、その伝説的なデザインは、今なおフィギュアとして発売されるなど、クラシック・モンスターの定番となっています。

 しかし、”ロン・チャイニー”という役者については、ほとんど何も知らず、逆に、息子が”ロン・チャイニー・ジュニア”として、フランケンシュタインの怪物、ドラキュラ、狼男というユニバーサル・スタジオの3大モンスターをすべて演じたという話の方が有名なほどです。もっとも、今回は知らない分、稀代の俳優の人生を垣間見ることができるドラマとして楽しめました。なにしろ、気の短くなった私が、自宅で倍速モードにもせずに、最後まで一気に鑑賞したのですから、大したものです。

 それにしても、ロン・チャイニーが聾唖者の両親のもとに生まれた”コーダ”であり、そのことを知らなかった妊娠した妻と不仲となっていく場面などは、差別の問題をしっかり描いており、とても1957年製作の作品とは思えない内容でした。
 そして、子どもの頃からいわれのない差別と闘ってきた主人公は、その経験と才能がハリウッドでの成功を導いたものの、性格はますます頑なになってしまい、観てる方も”もう少し冷静になって”と言いたくなるのですが、実際”本当の役者”というのはあんな”自己中”なのかもしれませんし、第一演じるのが個性派俳優のジェームズ・キャグニーなのですから、しかたがないとも思ってしまいます(笑)。ただ、個人的には、やっぱりあの母親は好きになれません。息子よ、しっかりせいよ(笑)。それにしても後妻さんが良い人で良かったですねえ。懐かしい典型的なハリウッド映画でしたし、なにより、名作「オペラ座の怪人」などの撮影風景をドラマの中で再現するのがうれしかったなあ。

2024年5月30日 (木)

エクスプラス ガメラ(1999)プラスチックモデルキットの組立・塗装

20240408_1402291 20240421_1610311 20240421_1843211 20240504_2029531 20240530_0819021 20240530_0819081 20240530_0819331 20240530_0820331  エクスプラス発売のガメラ(1999)のプラスチックモデルキットの組立・塗装をやっと完成させました。塗装方法は、このブログで以前紹介(2023.10.23参照)したyoutubeの「怪物屋吉尾の塗装教室(第1回)」の内容にできるだけ沿って行いました。ただ、本編では塗装は2時間で完成するのですが、そこはプロフェッショナルの名人とは違って、かなり時間がかかりましたねえ。4月8日に化粧箱を開封して、塗装が完成したのが5月13日ですから、一体なにをしていたのでしょう、我ながら呆れます。ただ、言えることは、寄る年波で精神統一が難しくなっているのだ(笑)

 なお、今回のキットは1/700で、組み立てても高さ12cmぐらいの小型の模型です。しかし、このキットはさすがエクスプラス社の新商品だけあって、なかなか良く出来てます。なにしろ部品のパーツ同士が小気味よくパチパチとハマるのです。特に、甲羅はいくつもの小さな甲羅のパーツを一個一個組み合せて組み立てると、映画に登場したガメラ3の勇姿を見事に再現します。

 そて、塗装は、吉尾名人の指導どおり、まずは黒く塗って、油絵のグリザイユ手法を用いて、エナメル塗料で”高速ブラッシング”でモノクロの濃淡の下地をつくり、その上に、透明色の3色を混合して、肌はブルー系、背中の甲羅はグリーン系、腹部はブラウン系に、エアブラシする手順なので、私としてはできるだけ真似しました。でも、結果はやっぱり”鵜の真似をする烏”でした。

 まあ、色鉛筆や練り消し(マスキング)などの名人芸はパスしたものの、人形の命である目の塗装にサイズが小さい(言訳)せいか、やっぱり失敗しました。いや、それよりも、最初の黒く塗る下地作業を黒いサーフェイサーのままにして、ラッカー塗料の塗装をしなかった手抜きが大きく影響しているようにも思えます。なんとなく色が微妙に載っていません。やっぱり手抜きは駄目でしたねえ。これも当たり前か(笑)。
 
 それでは、写真で作業の手順だけご覧ください。まあ、こんなものでしょう。
 それにしても、これから発売される予定のエクスプラスのプラスティックモデルキットのシリーズは、マリリン・モンローなどいくつか予約注文しているのですが、もっとも簡単な作業の筈の”ガメラ3”でこれだけ手こずったのですから、どうにもこれからの模型製作は前途多難なようです。詰んどくキットになりそうですなあ(笑)。

 

2024年5月25日 (土)

碁盤斬り

 時代劇「基盤斬り」はなかなか面白かった。落語「柳田格之進」を元ネタにしているせいか、昔の日本人の気質をよく描いていると感じました。もっとも、金品の紛失を問われただけで疑義を掛けられたと切腹しようとするのは、その昔でもやや行き過ぎと思われて、それゆえに落語のネタにまでされてしまったのでしょう。おかげで”格”とつく名前は、曲がったことが大嫌いというイメージを抱いてしまいましたねえ。水戸黄門の”格さん”のせいかもしれませんが(笑)

Img_20240524_0002  白石和彌監督の初めての時代劇だそうですが、なかなかうまく撮れています。よくあるような江戸の街のセットもなかなかリアルに見えるような角度から撮影し、彩度を落とした落ち着いた色調も好感が持てます。最近の日本映画もやっとセットや衣装などに写実性を求めるようになりましたねえ。本当に良いことですねえ。

 そして、なにより、出演者がみな実にうまい演技を披露しているのが見処になっています。
 まず、主演の草彅剛が良い。やっとジャニーズの呪縛が消えたせいか、最近は演技賞も取っているようでなかなか頑張っています。もともとテレビドラマでも演技がうまかったので、この作品も安心して観ることができました。曲がったことが大嫌いで、やや行き過ぎ感のある性格の主人公を地(笑)で演じているように見えます。

 また、個人的には、その娘役の清原果耶が断然気に入りました。もういまや絶対に存在しない”親孝行の娘”を演じています。親への不当な疑惑を晴らすために廓に身を売るというあり得ないような落語ネタ話を現実味をもって表現できたのは、彼女のもつ凛とした佇まいのせいでしょうねえ。いやあ、頼りない手代でなくても惚れてしまいます(笑)。でもまあ、最後が落語の結末じゃなくてハッピーエンドで本当に良かった。廓の小泉今日子女将に感謝です(笑)。
 その他、國村隼がやっぱりうまい。最初の因業親父から落語の人格者の店主に変化する姿を流れるように無理なく演じています。なお、碁会の親分、市村正親も貫禄十分でした。

 そんな中で、斎藤工が演じる、主人公を藩からの追放に追いやった元上司(?)なのですが、実はこの人物像が良くわかりません。どうやら主人公の正直すぎて、固すぎる人柄の故に、”水清ければ魚棲まず”の例えのように人間関係がぎくしゃくしていたのが理由だったようです。女関係は付け足しのような気がします。どちらにしても、主人公が部下たちの賄賂授受を殿に直訴した後の影響を暴きたてるも、結局、本人は何も手助けをしていないので、まあ、自分勝手なわがまま野郎だということなのでしょう。うん、斉藤工が喜々として演じそうな役柄です(笑)。

 しかし、この映画のオチは、なんとなくしっくりしません。犯罪と刑が見合っていないという藩の処置を内部通報者が自ら節を曲げてまで被るというのは納得できませんね。あれは盗品売買という立派な犯罪です。

 最後に、この作品の根幹と言うべき碁打ちの各場面は、全然ルールが分からない私でもなかなか迫力ある演出でした。さすが白石監督の手腕と感心しました。でも、タイトルにあったとしても、あの一品と評価される高価な碁盤を真っ二つにするのは実にもったいないなあ(笑)。

 以上、久しぶりの時代劇は残念ながら殺陣は少なかったですが、人情ものの佳作として楽しめました。未見の方は是非、劇場に足をお運びください。

2024年5月24日 (金)

猿の惑星/キングダム

 猿の惑星シリーズの最新作「猿の惑星/キングダム」が前3部作「創世記、新世紀、聖戦記」の完全なる続編とは知りませんでした。そのため、冒頭「猿の惑星/聖戦記」の主人公シーザーが死んだところから始まるのには驚き、期待もしたのですが、その後すぐ、”数世紀(300年らしい)が経て・・”というナレーション(字幕?)がでて、全く違うお話になったのが拍子抜けでしたねえ。できたら、あの少女ノヴァの成長した姿を見たかった(笑)。私は、前シリーズでは特に”聖戦記”が気に入っていたので・・・。

Img_20240524_0001  それにしても、モーション・キャプチャーの技術の進歩はとどまるところを知りません。もう本物の猿ですし、演じる俳優の欠片も感じられません。第一、パンフレットにも演じる役者の顔写真もないのですから、演者としては悲しいですねえ。どうやら「アバター」の技術開発のおかげらしいのですが、映画はやっぱり映像だけでなく”物語”なのだとつくづく痛感しました。
 というのも、前半、知恵がつき、鷹匠ともいえるチンパンジーたちの集落での暮らしぶりの描写が延々と続くのですが、観客の私はいったい何を見せられているのかと退屈になるほどです。観終わって振り返っても、あれほど長く描く必要性があんまり感じられません。鷹を自在に操れることだけ描けばよく、リアルなチンパンジーの”幼友達”というのは全くもって萌えません(笑)。だって男女も老若も見かけも見わけも付かないのですから。

 中盤になってやっと、前シリーズで知性を失った筈の人間のメスが登場です。さらに、そのメスを追いかけるゴリラ軍団の襲撃です。これでやっと面白くなると思ったのですが、なかなか話が前に進みません。それに、細かな設定でいろいろ引っかかるのです。
 まず、人間のメスが汚れ姿ながら服を着ているのです。まあ、これはラストへの伏線になるのですが、一方で、野生(?)の人類も群れで登場しますが、何故か、第1作に登場するような衣装(?)を身にまとっています。とても衣服を着るという知恵があるとは思えないのです。一方で、知恵のある猿たちは腰巻もなく全裸です(笑)。まあ、セリフで”人は寒さに弱い”といっていますので、”毛のある猿は服を着ると暑い”のでしょう。そう理解しましょう(笑)。当然、オスもメスも性器の描写はありません(笑)。こんな些細なことが気になって作品に集中できませんでしたねえ。映像がリアルになる分、設定はち密にしてほしいものです。

 後半は、人間の知恵を活用したゴリラ”プロキシマス・シーザー”の登場です。大げさな名前の皇帝なのですが、副題の”キングダム”の規模がなんともしょぼいのです。堤防に守られた海辺の難民キャンプですねえ。完全なタイトル負けです。しかも、やっていることは、奴隷たちの人(猿)力で、人類の旧要塞の扉を開けようとしているのです。名前の所以にしても要塞の攻略にしても、そのシーザーの行動の陰には、意外な奴が介在しているのですが、これは是非映画をご覧ください。しかし、津波でもないのにあんなに水位が上がるかな・・いや、独り言です(笑)。

 なお、この映画のミソは、チキンとした服を着ていた人間のメスだったのです。彼女の秘密が途中で突然明かされ、主人公のチンパンジーと途中仲間となった知恵のあるオランウータンがあ然とする姿が必見です。まさに顎が外れた感をCGで見事に表現しています。漫画的ともいえる誇張した表現方法に感心しました(笑)。

 しかし、この人間のメスの行動は、まさしく”人間”らしく、目的のためには手段を択ばないというもので、”エイプはエイプを殺さない”という猿たちには衝撃の展開を見せるのです。そして、彼女の本当の目的が分かった時には、”知恵のある”オランウータンが薀蓄として語った前シリーズのテーマ”猿と人間の共生”については、単なる幻想に過ぎず、前シリーズの主人公”シーザー”の生きざまへの大いなる疑問が呈されるのです。まあ、これだけ現実社会で、民族間、人種間の戦争が起こっていたら、理想論など共感が得られないのかもしれません。服を着た人間の登場は、このシリーズ自体、おおきく変質していくような気がして、不安になりました。次回作があるとすれば、猿たちの運命が気の毒になります。”民族虐殺映画”などはあんまり見たくありませんねえ。 

2024年4月28日 (日)

ゴジラ✕コング 新たなる帝国

 ハリウッド版ゴジラの最新作「ゴジラ✕コング 新たなる帝国」ですが、あの「ゴジラ-1.0」を観た後ではなんとも微妙ですねえ。まず、最初に気になったのは、このタイトルの”X”の読み方です。日本語では単に”と”か、あるいは”バツ”や”かける”なのか?英語読みだと”タイムズ”ですが、まあ、”エックス”ぐらいがが妥当かなと思ったら、ネットでみると、”ゴジラ、コング”と読んで”X”は発音しないそうです。

Img_20240426_0001  内容は、もう昭和の怪獣映画黄金時代の末期、ゴジラシリーズが完全にお子様相手になった頃の作品を彷彿させます。ただ、ハリウッドらしく巨額の資金を投入したVFXの凄さには感心します。冒頭のコングの迫力はやっぱり大したものです。単純に驚きます。
 地球の空洞世界でのコングが巨大なヘビのような怪獣などと次々と戦う姿は、初代”キングコング”へのリスペクトが感じられ、好感が持てます。まあ、”コングの息子”にも目配りしたようなストーリー自体、完全にキングコングの物語です。前作もそうでしたから、結局は”ゴジラ”は添え物ですねえ。

 それにしても、コングが虫歯になるなどそもそも”怪獣”いや”タイタン”とは何かと、はなはだ疑問になりました。やはり日本人とアメリカ人との感性には相当な違いがありますねえ。もはや、完全な子供だましのキャラクターになっています。ゴジラが軽快に走り回り、岬のてっぺんから豪快な飛び込みまで披露するのですから、とても恐怖の対象のゴジラではありません。完全な怪獣ヒーローですねえ。モスラの仲裁などにもあきれますが、なによりそのデザインが酷いです。なんとも救いようがありません。

 しかも、敵役がしょぼいのです。頭の禿げた赤毛の手長オランウータンでは役不足ですし、飼育している冷凍怪獣(冷凍は流行かな?)も本来はもっと凶暴でなければなりません。ほかにもいろいろ”怪獣”らしき巨大生物が登場しますが、やっぱりデザインがイマイチですねえ。思えば、黄金時代の日本の”怪獣”のデザインがなんと素晴らしかったのかと、改めてそう感じました。

 以上、なんとも印象のうすい怪獣映画でした。ただ、私のお気に入りのジャンルの作品なので、できれば世界中でヒットして、続編ができることをお祈りしております。
 それにしても、劇場パンフレットの1,100円は高すぎます。赤と紫のエンボス仕様のカバー付きであることも値段が高い要因かもしれませんが、まず、パンフレットは、中身の記事で勝負してほしいものです。本編と一緒で内容が薄かったのが、本当に残念でした。

«アメリカ映画の文化副読本

2024年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31